第4話 アルビノクナシリアオダイショウ
再びやって来ました『儚夢』です。
今回はオール亀子目線です!
「ぜぇっ……はぁっ……!」
初めは全速力で愛しのアオダイショウを追いかけていた私だったが、人間というものは成長しても『体力』というものは無限ではなくて。
「待って……私の……アオダイショウゥゥゥゥゥ!!!」
――――でも、好きなものの為なら私は……頑張れる!
「はぁっはぁっ……!捕まえたぁぁぁぁぁ!!!!」
私は距離も大分縮まったところで、アオダイショウの首元目掛けて潰れたりしないようにダイブした。
やはり、動物でも体力というものは存在する……それに気付いた私の完全勝利。いわば作戦勝ちというものだよ、ワト○ン君。
そんな馬鹿な私の足首に小さい体ながらもシュルリと巻き付こうとする蛇の尾を警戒しながら、苦しくないように優しく首を握る。
「はぁぁぁ……疲れた……」
そうすると、一気に疲れが押し寄せて来て何とも言えない達成感と倦怠感に襲われた。
「……って、ここどこぉ……」
私は一体、どれくらい走り続けていたのだろう? 顔を上げるとそこは、全く見たことの無い世界が広がっていた。道を歩く人の顔は初めて見る顔ばかりで、お店も知らない名前ばかり。
「えぇぇ……」
胸の中が辺に疼く……不安な気持ちが私を駆り立てて前に進ませようとしなかった。
ここはどこだろう? そんな疑問ばかりが頭を埋める。まるで別世界に居るような気持ちになって、さらに不安が不安を呼ぶ。でも、そんなことよりも――――!
「可愛ぃ~♥」
私にはこのアオダイショウさえ居れば! そう思えてしまう。
私にして見れば、アオダイショウというのは誤解されている。よく有毒有毒と騒がれているが、本当は無毒。皆がそう言っているのはヤマカガシという有毒の蛇。
この子の最大の魅力はやっぱり色彩のバリエーション。日本に主に分布するアオダイショウは、地域によって色彩や柄に差があると言われていて、関東近郊で見かけるアオダイショウは深緑の体色が多い。
特に北海道や東北産のアオダイショウは美しい青色をしている。
私のオススメはアルビノクナシリアオダイショウ。この子は俗に「幸福をもたらす白蛇」と言われている。……もしかして、蛇礼先輩がくれた抜け殻もアルちゃんの抜け殻かも!
…………………………って、どうせ抜け殻だからなぁ……。あぁもう!どうして先輩は本物をくれなかったの!
「……でもアルちゃんの抜け殻……貴重かも……」
だらしない笑みを引っ提げた私は、とりあえずアオダイショウを持って立ち上がった。このまま何もしない訳にはいかない。
「とは言っても……どうしよう……」
キョロキョロと辺りを見回しても、何も分からない。
「だっ誰か……ここは、ど……」
声を絞り出そうとしても、怖くて続かない。
「ぅっ……」
急に目頭が熱くなった。不安で不安で、どうしようもない。
「ぅぇ……」
視界が滲んで来た私に――――、
「君?どうしたの?」
――――後ろから、温かい声が。
振り向くとそこには、眼鏡をかけて心配そうにこちらを見る、一人の男性が。
「私っ、道に迷って……」
涙が溢れて来る目を制服の袖で擦って、事情を説明した。学校からの帰り道、アオダイショウを見かけて追って来たら迷ったと。
「そっか……。俺さ、この先の店で働いてるんだ。良かったら少し休んで行かないかい?お母さんに連絡して迎えに来てもらおう?」
「……はい」
知らない人について行くのは嫌だったけど、この人は悪そうな人じゃない。お店のであろうエプロンもしているし……。
「俺は香枝夜亀男っていうんだ。君は?」
「私は…………亀子です」
香枝夜さんのお店までの道中での会話。苗字を言おうかどうかは迷ったけど、からかわれるのは嫌だった。
「亀子ちゃんか。いい名前だね。……それにしても……ははっ! 君は随分と活発な女の子なんだね!」
「え?え?」
自己紹介を終えると、香枝夜さんは急にお腹を抱えて笑い出した。当然私は驚くことに。
「普通だったらアオダイショウなんて見つけたら逃げるよっ。いくら幼蛇だからって捕まえたりしないさ」
そう言って香枝夜さんは私が大事そうに抱えているアオダイショウを見た。
「だ、だって可愛かったから……」
「うん、そうだね。アオダイショウは俺も好きだよ。可愛いよな」
「はっはい」
この人……楽しいかも。
「おっ着いた。ここが俺の職場!」
立ち止まり顔を上げ、そこに在ったのは――――、
――――ペットショップだった。
アルビノクナシリアオダイショウ【無】
幸福をもたらすとされる白蛇。
幼体はオレンジの発色をしているが、成長すると不透明な白と、レモンイエローの発色になる。




