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爬虫類系女子  作者: 傘影 儚
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最終話 前編

 モモ次郎と『合体』してしまった私は、もう目の前にいる蛇陀さんにしか頼れないことを悟る。

 どんなにキツい目で睨まれても、モモ次郎を助ける為にやらなくちゃいけないんだ……! そう決心して、私はもう一度ありったけの力で、声で叫ぶ。

「蛇陀さん、お願いッ!」


――・――・――


「はぁっはぁっ……くっそノロ子……! あんたっ、覚えてっなさい……!」

 ――あれから、私の必死の説得の甲斐もあり、蛇陀さんは渋々嫌々仕方なくと言った様子で「あぁもう分かったわよ!」と、協力の意を表してくれた。

 何だか後が怖いけど……今はモモ次郎の為なんだ! また一緒にお話する為なんだ……!

「蛇陀さん! 日暮れまでに八神先輩を探して!」

「はぁっ……! 日暮れ!? しかもっ、八神先輩って……あぁもうっ!」

 八神先輩は学校でも(いろいろな意味で)有名だから、蛇陀さんも分からないというようなことは無いだろう。


 お願い八神先輩……どうか、どうか私達を助けて……!


――・――・――


「はぁっ! あぁぁ! どこにいんのよ!? あんたっ! 心当たり、とかっ無い、訳!?」

 私の家からもう何十分も走り続けていた蛇陀さんの体力は、もう限界に到達しようとしている。やばいよ……どうしよう……! 日暮れまで後三十分も無いよ……!!

「蛇陀さんっ……!」

 私は八神先輩の行き先に心当たりなんて無い。だってそもそも接触した機会なんて、あの『恩返し』とか言われて蛇の抜け殻を渡された時くらいなんだから。

 八神先輩と言えば……えっと……何かあったような――。

「――あっそうだ! 図書室!! 学校の図書室だよ!!!」

 うん……! 確か前に廊下を歩く女子達が「八神先輩の図書室テリトリー怖いよね~」なんて話していたのを聞いた気がする!

「学校!? ――ったく!!」

 私の返答を聞いた蛇陀さんは、ビシッと九十度で体を方向転換させ、左の道へと入る。私が遅刻しそうな時によく使う道だ……。って言うことは……学校はもう近い!

 八神先輩……お願いします……!!!


――・――・――


「はぁっ!!」


 ――ガララッ!


 学校に着いて靴を履き替えた蛇陀さんは、休まずに階段を二段飛ばしで駆け上ってくれた。きっと今にもその場に座り込んでしまいたいだろう――でも、私達の為に最後まで走ってくれたんだ。

 勢いもそのままに開いた図書室の扉。まだ鍵がかかっていないってことは……いる可能性が高い。


「はぁっはぁっ……! い――」


 ――いた。いてくれた……!


 図書室の一番目立たない、生徒からは「特等席」と謳われている席で一人静かに本を読んでいた。凄く大きな音を立てて開いた扉には無反応を貫き、こちらを見ようともしない。

 こっこれが八神先輩テリトリー……?

「ね、八神先、輩っ……! コイツ、の話をっ……!」

 蛇陀さんが最後の力を振り絞って八神先輩に近寄り、手に乗っていた私を先輩の前に突き出した。

「何の――ってあんた! 何して――」


――蛇礼様! 私と亀子ちゃんを助けて!!


 蛇陀さんの手の掌に乗っているモモ次郎を見た八神先輩が目を丸くする。突然のことに状況の把握が追いついていないみたい。

「八神先輩! 私とモモ次郎がっ――」

 そうして私はポカンとしている八神に今の状況をなるべく分かり易く伝えた。

 モモ次郎と合体してしまったこと、日暮れまでに元に戻らなくてはいけないこと、そして――モモ次郎が八神先輩を頼ってと言ったこと。

「………………あんた、本当に亀亀子なの?」

 しかし、それでも八神先輩は恐る恐ると言った様子で私にそう訊いて来る。


――冗談なんて言ってる場合じゃないよ! このままじゃ……このままじゃ亀子ちゃんが!!


 私の代わりにモモ次郎がそう叫ぶと、八神先輩は何だか怒った顔をしているような気がした。

「あんた……だから言ったじゃない……!」

 キッとモモ次郎の体を睨み、すぐにその体を持ち上げる先輩。ふわっと宙に浮くような感覚を味わい、変な気分になる。段々と上下の視界が狭くなっているような気が……え? も、もしかしてこれって……


 ……弱ってるの?


 体力が……削られてる? ――私も?

「チッ……! 動くんじゃないわよ……!」

 眩む視界に映ったのは、何やら難しそうな言葉を並べる八神先輩で。遠のいて行く意識を感じながら最後に聞こえたのは――


――蛇礼様、お願いだよう!


 必死に叫ぶ、モモ次郎の声だった――。


――・――・――


「っ…………」

 ――頭がクラクラする……何これ?

 ――私どうしたんだっけ……? 確か……モモ次郎と体が……合体…………――


「――モモ次郎ッ!!」


 勢いよく跳ね上がると、そこは見慣れた学校の図書室で。私の意識が途切れた時と変わっていなかった。――けれど、一つだけ確かに変わったこと。


 私は、上体を起こせた。


 つまりは――

「元に……戻っ……た……?」

 床に座ったままの状態で自分の姿を確認すれば、そこにはいつも通りの私の体が。手をグーパーさせてみたり、足をパタパタさせてみたり。

 大丈夫、異変は無い。


「あんた……」


 声のした方に顔を向ければ、そこには驚いたような蛇陀さんの顔がある。――ってそうだ!

「蛇陀さん! 本当にありがとう!!」

 私とモモ次郎の為に何十分も走り続けてくれた彼女に、ずっとお礼を言いたかった。けれど、私からのお礼を聞いた蛇陀さんは酷く寂しそうな顔をしている。

「…………………………」

 そして、何も言わない。少しばかりの沈黙が続き、やっと口を開いたのは――


「――ごめんなさい」


 八神先輩。



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