変化?
GW2日目。俺は昨日と同じ休みと言うことだったので、ゆっくりと寝ていることにした。しかし、そんな俺の計画は儚く散った。
「遼ーー、朝だよーー!!」
空がバン!と音を立てて、ドアを開け、入ってくる。
「そうだな」
「起きてよーー。ご飯もできてるよ!」
「俺は寝てる」
「そんなこと言わないで、起きてよ!!」
うるさいな。俺は寝てたいんだ。
「今日もどこかに行こうよーー」
「嫌だ。お父さんだって休みたいんです」
「遼のどこがお父さんなの?」
「働いているところ」
「そんなんじゃ世の中お父さんだらけじゃん」
「そうだな」
なんか、デジャヴを感じるな。当たり前なんだが。
「ん?」
あれ、今こいつなんて言った?
「お前、今なんて言った?」
「えっと、そんなんじゃ世の中お父さんだらけじゃん」
「ちがう。その前」
「遼のどこがお父さんなの?じゃないっけ?」
「もっと前だ」
なんだ、俺はこいつの何に引っかかってるんだ。
「もっと前?えーーっと、なんだっけ?」
思い出せ、俺。
「……今日もどこかに行こうよ。とかじゃないっけ?」
「すまん、もう一回ゆっくり言ってくれないか」
「え、う、うん。今日もどこかに行こうよ」
「今日……も……?」
俺はベッドから勢いよく起き上がった。
「今、今日もって言ったんだよな!?」
「え、たぶん」
今日『も』だと?
「お前、昨日の記憶があるのか?」
一日にしか記憶が持たない空は、普通は昨日のことをきれいさっぱり忘れてしまっている。そのため、普通こういう時は「今日『は』」と言うはずだ。
「え、昨日の記憶?」
空は思い出そうとしている。
「……どうだ?」
「……ごめん、覚えていない」
「そうか」
「ごめんね」
「いや、謝る必要なんかないさ」
もしかしたら、意識して思い出そうとするから思い出せないのかもしれない。さっきは無意識だったからこそあのような発言をしたのかもしれない。
「あ、ご飯出来てるんだよな」
「うん、できてるよ」
「じゃあ、とっとと食おうぜ。そして、出かけるか」
「出かけるの?」
「ああ」
「わかった!!」
空は俺の部屋を飛び出していき、下へと向かっていった。
「現金な奴だな」
俺はため息を吐いた後、着替えるのであった。
朝食を食べている途中、
「どこか行きたいところはあるか?」
「うーーん。遼は無いの?」
「俺か……俺は秋葉とかアニメイトとかかな?」
「バカ」
「バカとはなんだ」
ひどい言い草だな。
「普通、女の子とデートでそんなところ行かないでしょ」
「デート?」
「うん」
「すまん、何言ってるかわからん」
「ちょ!?遼!!」
まったく、いちいちメンドくさい人だ。
「で、どこ行くんだ?」
「私ね、水族館か動物園がいい」
「……じゃあ、ペットショップでいいか?」
「なんで!?」
「だって、動物も魚もいるじゃん」
「そういう問題じゃないでしょ」
わかってるよ。
「んじゃあ、このGW中に両方行くか」
「え?」
「イヤか?」
「ううん。ありがとう!」
空は満面の笑みを俺にくれた。その笑顔に俺は不覚にもドキっとしてしまった。
「遼?どうしたの?」
「いや、なんでもない。で、どっち行きたいんだ?」
「えっと……水族館がいいな」
「じゃあ、水族館な」
「わかった。準備してくるね」
空は自分の部屋に向かった。
「空、嬉しそうだったな」
俺はソファーに身を預けて、そうつぶやいたのであった。