水着
服を買った後モールで飯を食っていた。ラーメンだったな。俺も空も普通の醤油ラーメンを頼み食っていた。
「この後も何か買うのか?」
「水着買うよー」
「やっぱ、買うのか……」
「当たり前じゃん」
「ってか、水着ってもう売ってるのか?」
「大体GWごろには売っているところが多いよ」
「へぇ~」
今まで水着とか買った覚えなんてほとんどない。まあ、施設育ちだったからかも知れないが。
「そういえば遼の服買ってなかったね」
「いらねぇよ」
「ダメ。買うの」
「はいはい、じゃあ、頼みます」
「頼まれます」
空はエヘンとばかりに胸を張った。
「……胸無いんだからそういうことはやめなさい」
「なんか今日異様に胸について言うね」
「気のせいだ」
もちろん気のせいではないのだが。
昼飯を食い終わり、男物の洋服売り場に来た。水着よりこっちを優先したのは少し意外だった。
「私はこれとか似合うと思うけど」
「ん、そうだな」
「でもこっちもいいよね」
「ん、そうだな」
「ちょっと、自分のことなんだからちゃんと考えてよね」
「悪い。ちょっとカワイイ子いたから気を取られてた」
「カワイイ子なら近くにもいるのに……」
小さい声だったけどしっかり聞き取れた。
「胸の小さい子の間違いじゃないか」
「気になってんだからそんなに連呼しないでよ」
「悪かったって」
俺は空のおすすめの服2着を取り、会計に向かった。空は気づいてなかったようだったが。
次に行ったのは、……大体予想ついているだろうが水着売り場だ。空のテンションがMAXになっている。これで攻撃されたらラスボスも一撃だな。
「ねぇ、遼。どんなのが似合うと思う?」
「知らん。お前の体型ならスク水とかがお似合いなんじゃねえの」
「え、遼ってスク水萌え?」
「断じてちがう」
周りは当たり前だが女物の水着ばっかりだ。こう、なんだろう、見る場所に困るな。一点をジーッと見ているとおかしいし、キョロキョロしても挙動不審で余計怪しく見える。ここでもいままでと同じくカップルがけっこういた。男は困っているようだな。
「やっぱり私っておとなしめの方がいいよね」
「知らん。別に胸が小さいのを目立たせないためにも派手なのもいいんじゃね?」
「……そんなに私の胸気になるの?」
「気にならねえよ」
大してでかくねえ奴の胸を見て何が楽しいんだ。
「これがいいかな?でもこっちも……」
などとブツブツ呟いている。本音を言うと早く決めてもらい、早く帰りたい。
「ねえ、どっちがいいと思う?」
「…………」
空は面積が少ないビキニを二着見せてきた。
「もう、もうちょっと反応してよ。つまらないの」
「つまらなくてけっこう」
こんなのに付き合ってられるか。
「じゃあ、ちょっと試着してくるねー」
空は本当の候補と思われる二着の水着を持って試着室へ消えていった。
「……困るな」
場所が場所のためウロウロできない。かといってボーッとしているのもなんか嫌だ。
「なにしてっかなー」
早く出てこないかな。あぁー、さっき聞かれたときに適当に答えればよかったのかな?
「携帯でもイジってるか」
着信ナシ、メールもなし。悲しいなこれ。そしてしばらくの間携帯をイジていたら
ブーー、ブーー
とバイブがなった。メールだったので即開いてみると
『遼はどっちいいと思う?悩んでおいて。私今着替えてるから覗いちゃ駄目だよ♡』
と書かれたメールが空から届いた。そして中で撮ったと思われる水着を着た写メが二つ届いた。
「どっちいいかって、知るか」
とか文句を言いながら悩んでいる俺もいる。
しばらくメールを見ていると
「おまたせ~。で、どっちいいと思う?」
と言いながら出てきた。
「上の写真のものでいいんじゃねえの」
「やっぱりそう思う?じゃあ、そっちに決定~~」
空は「じゃあ、買ってくるね~」と言い、水着を一つ置きに行った後、会計を済ませに行った。俺はエスカレータの所で待っていることになっていた。これまたしばらくすると
「待った~?」
と俺の所に来た。
空は当たり前のように俺に水着が入っていると思われる荷物を渡し、エスカレータに乗って下の階に降りて行った。
「少しは待とうと思う気持ちはないのか」
俺は空を追いかけるようにエスカレータに乗った。