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GW

 働き始めて一か月とちょっとのことを話そうか。このときは俺も空もまだまだはしゃいでいたな。あ、話すのはGWの時のことな。




 今日からGW。つまりゴールデンウィークだ。学生の頃も休みは楽しみだったが、社会人になるとよけい休みが待ち遠しくなる。世の中のお父さん方の大変さを思い知った時でもあった。

「……休みだぁー」

 今はソファーでダーラダーラとしている。久しぶりな気がするなこんなにゆっくりするのも。土日も普通に休んでいるけどな。

「ゴールデンウィークだぁー」

 空も俺の隣でダラダラしている。

「お前は毎日休みだろ」

「そうらしいねー」

 こいつは毎日休んでいる。飯を作ってもらってる分いいんだけどさ。余談だが、空の飯はかなりうまい。贔屓ではないと思う。

「……今日はなにしてるのー?」

「んー、ダラダラ」

「えー、どっか行こうよー」

「お父さんだって休みたいんです」

「遼のどこがお父さんなの?」

「働いているところ」

「そんなんじゃ世の中お父さんだらけじゃん」

「そうだな」

 話している間も俺はボーッとしている。ゲームもする気にならない。こういう時は寝るのが一番じゃないのだろうか?

「よし、決めた」

「却下」

「え!?まだ、なにも言ってないけど」

 言うことは大体わかる。どうせ「出かけよう」とか言い出すのだ。

「じゃあ、言ってみろよ」

「えっと、ショッピング行こう!」

「いってらー」

「ちょっ!」

 ショッピングなんて面倒くさい。服とか買いに行くんだろ?そんなん面倒くさくてやってられない。一人で行くならナンパとかできるのかも知れないが、空もいるからな。

「服とかいらないの?」

「いざというときはジャージあるから」

 家でジャージなんて信じられないとか言うやつもたまにいるが、俺は全然OKだ。

「買おうよー。遼のも選んであげるから」

「自分で選べるわ」

 俺はぶっきらぼうに答えた後、目を瞑った。もちろん寝るためだ。

「夏に着る水着も買おうと思ってるのになー」

「ふーん。買ったら」

「おまけにビキニ」

「で?」

「……興味無いの?」

「お前の裸なんて興味無いし、見たとしても別に興奮しねーよ」

「…………」

 よし、黙った。俺はこれでゆっくり眠れるぞ。

「遼……ね……」

「んあ?」

 目を開けると目の前に空が立っていた。うわー、殺気がメラメラと感じられるぜ。

「ふざけるな!」

 空は俺の口を右手で塞ぎ、左手で俺の首を絞めた。

 俺はもがきながらも首を絞めていた手と口を塞いでいた手をどかした。

「行くから、とっとと準備しろ」

「え、行ってくれるの?」

「何回も言わせるな。行ってやるから準備しろ」

「ありがとう!」

 空は俺に抱き着いた。俺は座っていたため、空の胸がちょうど俺の顔の位置だった。

「じゃあ、準備してくる」

 空は自分の部屋に向かおうとした。

「あ、空」

「ん?」

 空は振り向く。

「お前、胸大して大きくないんだから自分の胸を相手の顔に押し付けるのやめろ」

 空はだんだん顔が赤くなる。

「……これでも一応Cカップあるもん!」

「嘘つけ。どっからどう見てもBだ」

「う、うるさい!!」

 空は自分の部屋に走って行った。

 ……空をからかうのおもしろいな。


 今はすでにショッピングモールにいる。空は出かける前はあんなにツンツンしていたのに今は俺と腕をくみ、ベッタリと俺にしがみついている。

「お前、もうちょい離れろ」

「いいじゃん。なんかカップルみたいだし」

「ああ、そうかい」

 もう答えるのがダルくなっていた。……てか、本当にコイツ胸無いな。まな板ってほどではないが、やっとBいきましたって感じだ。

「家にいる時も言ったが、絶対Bだろ」

「Cあるもん……」

「大丈夫だ、空。女は胸の大きさなんかで決まらないから」

「わかってるけど……」

「まあ、大きくて損は無いけどな」

「もう、遼!」

「冗談、冗談」

 本当のことだけどな。

「で、まず、何から買うんだ?」

「お洋服!」

「あいよ」

 俺は空に連れて行かれる感じでお目当ての場所に向かった。


 空はカワイイ服を見つけ、ガキのように走って行った。空と腕をくんでいたので、俺も一緒に行くハメになったのだが。

 周りを見てみると、カップルみたいなのが大勢いた。大体の男は少し疲れているような顔をしていた。荷物を何個も持っているところから長い間このモールにいるらしい。俺もしばらくしたらあんな感じになるんだろうな。

「ねぇ、どっちがいいと思う?」

 空が俺に聞いてきた。

「知らん」

「即答しないで少しは見て考えてよ」

 俺は仕方なく空の持っている二着の服を見る。

「……どっちでもいいだろ。自分で決めるのが一番だ」

「自分で決められたら聞かないよ」

 それもそうなんだが……。

「どっちもお前に似合うよ」

 無難、というか適当にごまかせる言い方をした。もちろん、こんなもんでごまかせるわけはないんだが。

「え、本当!?」

 あっさりとごまかされてくれた。

「まずは試着でもしたらどうだ?」

「そうだね」

 空は二着の服を持って、試着室に入って行った。

「……さて、何をしてるか」

 正直やることがない。この店じゃ見る物もないしな。と、思っていると携帯が鳴った。会社の女同僚からだ。同い年のな。

 店の中だとマナー違反か?……まあ、いいか。

 俺は通話ボタンを押した。

「へーい」

『あ、遼君?今、何してる?』

「特になにもしてねぇよ。てか、なんの用だ」

『あ、仕事のことなんだけど」

「休みなのにご苦労だな」

 俺たちの仕事は建築の設計とかなので休みにも働かないといけないやつがいる。

「ねぇ、遼いる?」

 タイミングの悪い奴だ。

『今近くに誰かいるの?』

「まあな。んじゃあな」

 仕事の相談とかダルいので一方的に切ろうとする。

『ちょっと待ってよ』

「んあ?今度はなんだ」

『仕事で聞きたいって言ったでしょ』

「仕事関係ならキングさんかクイーンさんにでも聞いてくれ。プライベートの相談ならいくらでも聞いてやるから」

 キングさんとクイーンさんとは同じ部署(?)で働いている俺たちの男ボスと女ボスみたいな存在の人だ。

『それもそうだね』

「そうだ。じゃあな」

『じゃあね』

 俺は電話を切った。

「遼?」

「ああ、すまん」

「電話?」

「ああ、同僚から。で、どうした?」

「うん、こんな感じなんだけどどうかな?」

 俺の目から見ると、普通にカワイイと思う。

「似合ってると思うぞ」

「本当に?じゃあ、こっちにする」

「もう一つはいいのか」

「着てみたけど私には少し似合わなかった」

「そうか」

 俺は別に似合うと思うのだが、本人はそう言っているから、俺は特に口を出さないでおこう。

 その後、その服を含め3着ほど買い、その服が入っている袋は俺が持つことになったのは言うまでもないだろう。

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