散歩
「ねえ、遼!」
「断る」
「まだ何にも言ってないんだけど」
どうせこういう時は暇だから何か買ってこいとかどこかへ連れていけだの言いだすのだ。
「……言ってみろ」
「お散歩行かない?」
ほら、言っただろ。こいつがこういう時に言うことなんて決まっているのだ。しかし、まあ、入院生活と言うのも暇なもので初めて入院するのならともかく、空は同じ病院に何回も入院しているのだ。記憶が無かったとしても体が覚えているのではないのだろうか。よくわからんが。
まあ、でも入院と言っても体は一応元気みたいだし、日の光も浴びないと毒だろうしな。
「よし、わかったよ」
「やった」
空は起き上がりベッドから降りる。
「よし、じゃあ行こうか」
「おう」
空は点滴をカラカラと引かせながら病室を出て行った。俺も貴重品だけを身に着け空の後を追った。
外はいい天気だ。雲一つなく太陽も頑張っている。いい加減涼しくなってきてもいいんだぞ。
空は目的地が決まっているようだ。俺はただついていくだけ。
しばらく歩きついたところは中庭だ。そこには病気で入院しているとは思えないような子供たちが走り回ったりして遊んでいた。
「元気だな」
「うん、そうだね」
その一方空は元気じゃないようだ。せっかく散歩に付き合ってやっているんだそんな調子だと俺も嫌になってしまうんだが。
ベンチに座ったので、俺もその隣に腰かけた。
二人そろって遊んでいる子供たちを見ている。他にもおじいちゃんやらおばあちゃんやら看護師さんやらも微笑ましそうに子供たちを見ていた。
何年後になるかはわからんが俺もそのうち父親になるのだろう。そう考えるとなぜか感慨深くなる。高校に入ったと思ったらもうすでに社会人になっているからな。時は光より速しだな。
「わたしさ、お母さんになれるのかな」
空が急にしゃべりだす。
「誰かと付き合って誰かにプロポーズされて誰かと結婚して子供を産んで、幸せの家庭築けるのかな」
「できるだろ」
そうは言ってみたが、本当にそうなのだろうか。どこにもできるなんていう確証はないんだ。
「たぶんできないよ…」
「どうしてだ?」
「自分の体の事だもん、自分が一番わかるよ」
「…どういうことだ?」
この先の事を聞くのがすごい怖い。しかし、聞かないとなにも始まらない気がした。だから聞いた。
「たぶん私ね、今年生きれるかどうかだよ」




