入院
個室に備えられているソファーに横になり一夜を過ごす。自分の事ではないのにとても不安でほとんど寝れなかった。
外が明るくなったのを感じ、起き上がる。ずっと同じ体勢でいたおかげか体のあちこちが痛い。
空はまだ寝ている。俺は静かにベッド横の椅子に座る。
「幸せそうに寝やがって」
顔にかかっていた髪をやさしく掻き揚げてやる。周りの人より白い肌が露わになった。その幸せそうな寝顔を見て、俺は泣いていた。
つい考えてしまう最悪な事態。このまま容体が悪化してしまったら?退院できないで一緒に住むことができなくなってしまったら?もしこいつが俺の目の前から消えてしまったら?次々とよくない考えが出てきてしまう。
その涙は止まってくれるどころか、どんどん出てくる。涙を止めることができない。嗚咽も我慢することができない。
「空……」
だけど、俺がこんなことでは駄目だ。空自身は俺以上に怖いはずだ。それなのに俺が弱音を吐いてどうするのだ。
気を引き締めるために顔を洗い、空が起きる前に近くのコンビニでおにぎりを買って腹に入れる。
今日と明日は仕事を休んでいるため、一日中空といることができる。
病室に戻ると空はまだ寝ていた。いつまで寝ているつもりなんだ。
しばらく経つと朝食の時間になったのか看護師さんが入ってきた。軽く会釈を交わす。空を起こし、朝食の準備をしてくれた。
よく考えたら誰かに見られながらの飯と言うものは食べにくいものだからな。俺は席を空けようと立ち上がる。
「ん、遼。どこ行くの?」
「いや、俺いると飯食べにくいだろ?」
「そんなことない。ここにいて」
本人がいていいと言っているのだ、お言葉に甘えて部屋にいることにしよう。
「……ピーマン嫌い。あげる」
「ガキか。ちゃんと食べなさい」
嫌々ながらもピーマンを食べている。好き嫌いはよくないからな。なるべく嫌いな物でもチャレンジすることが大事だ。まあ、俺も人には言えないのだがな。
空は早々に食べ終え、トレーを片付けてくる。部屋に戻ってくるとベッドに寝そべり、つまらなそうな顔をする。
「暇ー」
「あと一週間ぐらい入院だぞ」
「嫌だー、飽きたー」
駄々をこねるな。
「退院したらどこに行きたい?」
そう聞くと、空は驚いた顔をした後すぐに生き生きとした顔になった。
「えっとね、えっとね!」
やれやれ、ホントに単純で現金な奴だ。
そこからしばらく空の話が続いたことは言うまでもないだろう。




