緊急搬送
楽しい時間はすぐに終わる。海に行ったのは先月の話だ。もう一回あんな休みが欲しい。温泉もおいしい料理もしばらくは体験できないのか。
カレンダーはすでに9月。まだまだ気温は下がりそうにもない。
仕事にもある程度慣れてきて、余裕も出てきていた。そんな時に俺の元に一本の電話が入った。
「もしもし」
『桐谷さんですか!?』
「はいそうですが」
電話番号でわかったが病院からだった。異様に慌てている感じだった。
『空さんが救急搬送されました!』
「え!?」
ある程度事情を聞き、上司に断り、急いで病院へと向かった。
集中治療室のベッドに空が横たわっている。
「本人から119番があってですね、症状は前に運び込まれた時と同じだったんですが、搬送中に急に容体が悪化して」
「大丈夫なんですか!?」
「はい、恐らく今日中には集中治療室から出られるでしょう」
ひとまず安堵する。
「今回も検査をするので一週間ほど入院してもらいます」
「わかりました」
「あと、できたらでいいのですが、1日2日だけでもいいので空さんと一緒にいてもらえませんか。彼女もその方が安心すると思うので」
「たぶん大丈夫です」
後で電話した所上司が快く承諾してくれた。俺の家の事情もわかってくれているみたいなのでとても助かる。
医師との長い話が終わり、部屋を出る。
時間はすでに6時。空はまだ集中治療室にいるらしい。少し早いが夜飯を食べることにしよう。
病院内の食堂で食べ、戻るとすでに空は病室に移動したらしい。看護師さんに病室を教えてもらい、向かう。
個室だった。けっこう症状が重いのだろうか。少し不安になるが、こんな表情で空の目の前になんか行けないな。頬を叩き気を取り直して部屋に入っていく。
「よっ」
なるべくいつも通りの声を出すようにして声をかける。
「あ、遼」
俺の顔を見た途端、急に泣き出してしまった。俺はナマハゲか何かか。
椅子に座ると俺に抱き着いてきた。俺も抱き返す。
「遼ー、怖かったよー」
何度も俺の名前を呼び泣く。
俺は優しく空の頭を撫で続ける。
しばらくして落ち着いたのか、俺から離れた。まだ泣いているが。
「また1週間ぐらい入院だってさ」
「……うん」
「明日明後日って一緒にいてやれるから」
「本当?」
「ああ、本当だ」
空は安堵した表情を浮かべる。この表情を見て俺は休みを取ってよかったと思った。
「ありがと」




