砂浜
なんでこういう遠出すると知り合いと会ってしまうことがあるのかね。あのバカップル共がついてきたのは俺のミスでもある今頃なんだかんだ言うつもりはない。だけどよ、猫先輩までここに来ているなんて聞いてないぞ。なんで海の家で俺が奢らないといけないのだ。訳が分からん。
「リア充爆発すればいいのに」
「はいはい。先輩も早く彼氏作ればいいでしょう」
「んじゃ、付き合ってください」
「丁重にお断りいたします」
不満そうにほっぺを膨らませている。高校時代に同じこと言われたら承諾していたと思いますよ。正直この先輩のこと好きだったし。なんて言うわけがない。俺の心の中で留めておきますよ。
「はい、あーん」
先輩がストローのスプーンで俺に奢らせたかき氷を乗せ、俺に差し出してくる。断る意味もないので、そのまま食べる。うん、うまい。
「お友達はいいんですか」
「うん、どうせ私いなくても変わらないだろうし」
なんてネガティブ発言なんだ。この人の口から初めてネガティブ発言聞いた気がする。先輩はつまらなそうに同じく俺に奢らせたオレンジジュースにブクブクと空気を入れている。
一つ溜め息を吐いて、先輩のでこにデコピンを喰らわせ、ジュースを奪い取る。
「何するの!?」
「先輩らしくないですよ」
ジュースを飲む。そうするとデコピンをやり返される。
「遼のくせに生意気な」
「先輩にだけは言われたくありませんね」
ジュースを再び取られる。
「ジュース少ない。買ってきて」
「わかりましたよ。お嬢様」
元から少ない俺の財布が余計に寒くなってしまった。気温は暑いのに懐は寒いままだよ。まったく少しは比例してくれたっていいじゃないか。
先輩の前にジュースを置く。俺もそろそろ空のもとに戻らなければいけない。
「それでは先輩、俺はこれで」
「うん、わかった。彼女とせいぜい楽しんできな」
何度も言いますが彼女じゃないんですよ。
「今度どこかに遊びに行くときに誘ってくださいよ。高校の時みたいに付き合いますから」
暗い顔をしていたのにあっという間に明るい顔になりやがった。
「言ったな。覚悟しておけよ」
元気になったのはいいが、言わなけりゃよかった。どうせ荷物持ちあたりがオチだろう。
「空、お疲れ様」
一人で荷物番をしていた空と合流する。今はあのバカップル共が海でキャッキャウフフやっているのだろう。俺は空にさっき買った飲み物とアイスクリームを見せる。
「どっち食べる?」
「両方」
はいはい、大体予想ついてましたよ。
俺はおとなしく両方を空に渡す。空はジュースを横に置きソフトクリームを食べ始めた。おいしそうに食べるな。買ってきた甲斐があるっていうもんだ。
食べるのに夢中なのか頬にクリームをつけている。
「お前はガキか」
指でそのクリームを取ってやる。
「え、あ、ありがとう」
なんの気兼ねもなく自分の口へと運ぶ。
「り、遼……?」
「んあ?」
「……バカ」
急にバカとはなんだ。知っているか。バカって言ったやつがバカなんだぞ。
そして自分の今やった行動を改めて考えるとすごい恥ずかしく思えてきた。なんで俺はあんなことをしたんだろうか。
二人の間にただただ気まずい空気が流れた。




