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救急

 憂鬱な梅雨が過ぎ、時期は7月。梅雨なんてものは元から無かったのかのような晴天だ。クールビズのワイシャツとは言え暑い。電車の中の冷房ガンガンの天国から降りればセミが至る所で鳴いているような地獄へと変わってしまう。まあ、目的地の会社へと着いてしまえばこれまた冷房のある素晴らしい空間へとなるんだが。まだ節電節電でそんなにガンガンつけてないんだけどな。まあ、個人的には冷房ガンガンよりこれぐらいが丁度いいんだが。

 少しでも熱くなる前にといつもよりちょいとばっかし早く家を出たため、ちょいとばっかし早く会社に着く。

「ん、遼か。今日は早いな」

「あ、おはようございます。そういうキングさんも早いじゃないですか」

「早いも何も俺は泊まりだよ。仕事が終わらん終わらん」

 苦笑を浮かべながら答えてくれるキングさん。本人もけっこうこの呼ばれ方気に入っているらしい。最近知ったんだけど。

 首や肩をぐるぐると回した後にまた仕事に取り掛かるキングさん。俺達をまとめる人でありながら自分から積極的に取り掛かる。仕事人の鑑じゃないか。俺もそんなキングさんを見習い自分の仕事に取り掛かることにしますかね。


「なんでみんなそんなに熱心なんだ?」

 あなたが最初に熱心に仕事をしていたおかげですよ。そんなことにも気づかずに首をかしげているところがなんとなくおかしい。部長さんも最初この風景を見て驚きの表情を浮かべていた。

 さて、あっという間に昼休みだ。ひとまず今やっている奴も一区切りついたし昼飯にでもするか。周りの人たちもすでに昼飯をしていたり、食堂に行ってたりしている。

「遼。お前も昼飯に行くか?」

「食堂ですか?」

「ああ。もしかして弁当あったりするか?」

「ありますけど。付き合いますよ」

「なんか悪いな」

 カバンの中から弁当を取り出す。そしてキングさんの後をついて行った。


「なんだ愛妻弁当か?」

「そんなもんですよ」

「はっはっはっ、羨ましいねえ」

 俺の弁当を見ながら言ってくる。実際にこの弁当は空が作ってくれたものだ。

「そういうキングさんもいつもは弁当じゃないですか。あれは愛妻じゃないんですか?」

「実際にはまだ妻の弁当じゃないけどな」

 え?結婚してなかったのか?

「してないぞ」

 キングさんは同じ部署のある人とすんげーラブラブなのは俺たち全員知っていることだ。まさかあれで結婚してなかったとは。

「失礼ですがキングさん何歳ですか」

「三十だが」

 内心三十五ぐらいだと思ってた。意外と老け顔だったりするんだな。

 そんなしょうもない話をぐだぐだと話していた。昼休みなんてあっという間だった。


 昼休みも終わり、仕事に取り掛かっていると俺の携帯がブルブルと震えだした。何事かと思い画面を見てみると番号しか表示されていない。電話番号から見て携帯からだ。誰からだ?間違い電話とかやめてくれよ。

 席を立ち、休憩所の方に向かいながら通話ボタンを押す。

「もしもし」

『あ、えっと、桐谷さんですか?』

「え?ああ、はい。そうですけど」

『中央病院のものです』

「ああ、どうかしましたか?」

『つい先ほど空さんが救急車でこちらに運ばれてきました。それでご連絡をと』

 は?救急車で運ばれる?何を言っているかわからない。

『本人によると急に貧血のような症状が出て、倒れたから救急車を呼んだと。今ご本人は意識を取り戻していて大丈夫そうなんですが、こちらで検査するので少し入院してもらいます』

「え、ああ、はい」

『連絡しておいた方がいいと思ったので電話を差し上げました。それでは』

 切られた。一方的だったな。

 大丈夫か、あいつ。ひとまず早めに仕事終わして病院に行くか。

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