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先輩

「おぉー、ペンギンだよペンギン!」

 俺たちは水族館に着いた。そしてある程度歩いていたらペンギンのところまでやってきた。空はガキのようにテンションが上がり、水槽の近くまで走って行ってしまった。

「ガキかあいつは」

 今日はGW中真っ只中と言うことで周りには家族連れが大勢いる。もちろんガキンチョもいる。そして、空の今のテンションはそのガキンチョ達にも劣れをとらないという感じだ。

 俺はのんびりと歩いて、人混みの中を通り、空の隣までやってきた。

「遼、遅いよ」

「うるせぇ、ガキ」

「ガキじゃないもん」

「ペンギンで興奮する時点でガキだ」

「だって、初めて見たもん」

 空は不満だとアピールする表情になる。

「……そうだな」

 言わなくてもわかるだろうが、俺も空もペンギンを見た時はある。片手で十分足りる回数しか見た時は無いがな。

「……もしかして疲れてる?」

「別に……」

「疲れてるならあそこで休んでたら?」

 空は休憩所みたいなところを指差す。

「ん、そうか?」

「うん、昨日も仕事とかで大変だったんでしょ?」

「……ん、まぁ」

「じゃあ、休んでなよ」

「わかった。じゃあ、お言葉に甘えて」

「うん」

「お前は何してるんだ?」

「私は適当に見てくるよ。あ、ショーの時間になったら戻ってくるから、一緒に見ようね」

「わかったよ」

「んじゃ」

 そういうと、空は人混みの中に消えて行った。

 俺は空から言われたとおりに、休憩所に向かった。

「いつでも元気だな」

 昨日の疲れがまだ取れていないからか、すでに俺はお疲れモードだ。

 売店で飲み物を買い、テーブル一つを陣取って、ゆっくり休んでいることにした。

「ふぁ~~~あ」

 大きなあくびを一発かましていると、

「あれ、遼?」

 女の人が俺に声をかけてきた。

「はい?」

 その女の人を見てみると、一瞬で誰だかわかった。

「あ、猫先輩」

「猫言うな」

 その人は、高校の部活での先輩だった。名前は猫島清美(ねこじまきよみ)。とにかく元気が取り柄の先輩だったので、名前にもある猫という文字だけ取って、猫先輩と言うわけだ。

 猫先輩は俺の正面のイスに座った。

「で、なに。遼は一人で水族館来てるの?」

「違いますよ、なんでそんな寂しいことしなきゃいけないんすか」

「冗談だって、そう怒るなって」

「怒っていません」

 この先輩は恐らく、部活内で一番話した先輩であろう。決して同級生の部員と仲が悪かったわけではないぞ。何の部活かは言わなくてもいいだろ?てか、言いたくない。

「まあ、空ちゃんと一緒に来てたりするんでしょ?」

「ん、ま、まあ」

「いつでも熱いカップルだね」

「そういう先輩こそ一人で水族館ですか?」

「そんなわけないでしょ!」

「なんでマジになってるんですか」

「マジじゃありませんー」

 絶対マジだったと思うが、まあ触れないでおこう。

「女友達とですか?」

「……まあね」

「……彼氏は?」

「……うるさい、リア充」

「リア充じゃありませんよ。付き合ってませんから」

「じゃあ、付き合って!」

「丁重にお断りいたします」

「……ケチ」

 猫先輩は口をアヒルのように尖がらせる。

「大学いったら絶対彼氏作るとか意気揚々と宣言してたじゃないですか」

「うるさい」

「すみませんでした」

 俺は適当に謝っておいた。

「で、その女友達の方々は?」

「あっちでペンギン見てる」

 ペンギンの方を見てみると、異様にキャッキャ言っている浮いている集団がいた。

「あれ、ですか」

「そう、あれ。10分ぐらいいるのにまだ動こうとしないから、私だけこっち来ちゃった」

「なるほど」

 この俺の言葉を最後に沈黙が続いた。そして、その沈黙を破ったのは猫先輩の一つの行動だった。

「いただきっ!」

 俺の飲み物(コーラ)をひったくり、飲んだ。

「よく彼氏でもない男の使ったストロー使えますね」

「私とあんたの仲じゃん」

「どんな仲ですか」

 俺は猫先輩の持っている俺の飲み物を奪い返し、コーラを飲んだ。

「あー、間接キス」

「よく言いますね。先輩も部活の頃よくしてたじゃないですか。俺の奪って」

「だから、私とあんたの仲じゃん」

「あと、飲みすぎです」

 中身がだいぶ無くなっていた。

「さて、ごちそうさまでした。んじゃ、私はみんなの所に戻るね。あ、たまにはメールもしてね」

 そういうと、猫先輩はペンギンコーナーに消えて行った。嵐のような人だった。

 それにしても先輩とこんなところで会うとはな。思ってもいなかった。

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