第四話
眠ったかわからない夜ってのはあるもんだ。
寝た気はしないが起きたら朝だった。
今は8時16分、試合開始は9時。今すぐに出なければもう間に合わないが、オレはまだ試合にでるかどうか決めかねている。
なにより謝ったとこで使ってもらえるかわからないし、オレ自身どうするか迷っていた。
一階に降りてみるとバァちゃんの部屋でオジさんが大イビキをかきながら寝ていた。部屋にはビール瓶が転がっていたり夜遅くまで一人で飲んでいたようだ。
食器を洗ったり、洗濯物を干したりしてると以外と時間はたつものだ。朝メシにパンを用意しながら見た時計はすでに9時を5分過ぎていた。
落ち着かない。
やっぱりオレは野球が好きだから、だから体が疼く。
「なに?まだいたのか?」
見るとオジさんが柱に寄り掛かりながらアクビをしていた。
「オジさん・・」
オジさんは居間に座るとテレビをつけた。
「ほら、もう始まってる」
そこにはうつっていたのは久世北打線相手に苦しい投球を続ける三宅だった。
「はやく行ってやれよ」
「今さらオレが行ったって投げさせてくれるわけがないだろ。それに別にオレは投げたいわけじゃ・・ない」
「昨日嘘つくんじゃねぇって言ったろ?」
「嘘じゃない!!オレは・・オレはもう・・」
「そうか。そこまで言うならこんなもんいらないよな?」
正紀はポケットからライターを出すと置いてあったグローブを持ち、火をつけた。
「オジさん!何やってんだよ!?」
「いや、どうせいらないならいっそ燃やしちまおうと思って」
「・・やめろ」
シンジが小さく呟いた。
「え?ハッキリ言えよ?」
シンジは台所に貯めてあった水をグローブと正紀に向かってかけた。
「止めろよ!オレが今から試合で使うんだからよ!」
正紀は顔にかかった水を手で拭うとニヤッと笑った。
「やっとホントの事言えたじゃねぇか」
自分の言葉に自分で驚いた。
「ホラ」
オジさんが渡してくれたグローブまるで焦げていなかった。
「さっきのはダミーだ」
「早くいけ!試合終わっちまうぞ」
「うん!」
スポーツバックにユニホームや道具を入れオレは、球場に向かった。