第二話
「何でこんな事になったの?」
オレと三宅の前には回転式のイスに座った担任の前島が座っていた。
「だまってちゃ何もわからないでしょ?もう高校生なんだからなんとか言いなさい?」
オレは手を後ろに回して下を向き、黙ったまま何も言わなかった。三宅も同じく黙ったままだった。
「あなた達野球部なんでしょ?特に緒方君はエースなんだし、甲子園が目標って言ってたけどこんなことじゃ甲子園行けないないわよ?」
「野球なんか・・」オレがボソっと言ったのを三宅には聞こえたらしくピクっと
眉毛が動いた。
そんな二人の様子を見て、ハァと前島はため息を一つついた。
「まぁ、いいわ 今日は遅いから二人共帰りなさい。また明日にでも事情聞きます」
バンッと職員室の扉を閉め、二人は廊下に出た。
外は日も暮れ始めて薄暗くなっていて、三宅はオレの顔も見ずにさっさと行ってしまった。ふと、校庭の方を見ると見慣れた顔の奴等が汗を流しながら必死に野球を練習をしていた。
別にオレは野球を嫌いになった訳じゃない。
野球は好きだ。あの朝靄のグランドもマウンドに立った時のドキドキも三振をとった時の喜びも野球の全部が好きだ。
でも、オレはもう野球はやらない。絶対に
オレがグラウンドに出ると三宅の奴がいつの間にかユニホームに着替えて練習に参加していた
グラウンドを後にしようとするオレに気がついた奴等が何人か近付いてきたが、無視してオレはグラウンドを後にした。
いつも仲間と帰る道、一人で帰ってみると見えないものが見えてくる。
以外に綺麗に星が見えるとか、小学生の時のラクガキがまだ残ってるとか、家の近くにバァちゃんが好きだった鈴蘭の花が咲いているとか。