腹黒桃太郎
むかーし昔、江戸時代のある村におじいさんとおばあさんがいました。その村は過疎化に悩んでいる限界集落で、1ヶ月に1度商人が物を売りに来るくらいでした。なので過疎化解消のためにある伝説をでっち上げることにしました。その村は昔は有名な桃の生産地であり、大きな川の近くにあったことから村人同士の話し合いの結果、川から流れてきて活躍する『桃太郎』という話をでっち上げることに決まりました。
そして紆余曲折あった後にちょうどその年に子供を産んでいた守銭奴の外面がとても良いイケおじなおじいさんと面食いでおじいさんの顔面にベタ惚れのおばあさんの息子が『桃太郎』になることになりました。
おばあさんはその日からどうやったらいかにおじいさんと似てイケメンな我が子を着飾れるかを考え、おばあさんがついに辿り着いたのが我が子を桃に入れて登場させることです。おばあさんはここで1つ思いました。村人に目撃させるだけでは我が子の神々しさ、そして認知度が低くなってしまうと。しかし同時に多くの人に目撃させるのはリスクを伴うと思い、おばあさんは思い悩みました。
おばあさんは考えている内に1つ完全犯罪を達成出来る方法を思いついたのです。それは1ヶ月に1回村に訪ねてくる商人を目撃者に仕立て上げることです。
ややあって計画実行の2ヶ月後、村の外にも『桃太郎』の認知度はおばあさんの努力の結果、ポツポツと上がってきていました。それに比例してこの村の認知度も徐々に上がってきていました。
そして過疎化も、その村の桃の認知度が上がり、昔のように桃が売れるようになったため、村自体が潤い、その村に移り住んでくる人も増えたため、無事に解消されました。
それにしめしめと思ったおじいさんは自分は何もしていないにもかかわらず、歌舞伎俳優並の演技力と顔面で村長にいかに自分たちが苦労を乗り越えてきたのか語り、見事に金一封を手に入れました。
ここで万事解決と思いますが、そのようにはならずここから『桃太郎くん』の真の話が始まるのです。桃太郎くんは面食いで有名なおばあさんの支援を受けて、すくすくと育っていき、桃太郎くんはそれはもうキメの細かい桃肌をもつ美しい美男子に育っていきました。一方で、おじいさんの英才教育で、完璧な外面と歌舞伎俳優並の演技力、腹黒さを身につけ、向かうところ敵なしな状態になりました。
桃太郎くんはここに来るまでおばあさんのたゆみない肌管理と顔面と演技力で、寺子屋でファンを量産していました。ですがここにきて桃太郎くんは宗教を立ち上げることを決心したのです。何故なら桃太郎くんの元にはファンから様々な依頼が届いており、外面を良くするためには依頼解決が必要ですが、面倒くさくなってしまったのです。そこで桃太郎くんはファンやストーカーを有効利用しようと決意しました。その為にまずは厄介なストーカーをどうにかしようと決めました。
「キジ、いるんだろう?」
桃太郎くんは自分の真上を見上げながら優しく問いかけました。キジは桃太郎くん推しの同担拒否であり、桃太郎くんがどこに行くにも必ず気配を殺して着いてくるストーカーです。細身で常に忍び装束を着ており、徳川家の御庭番をしているという噂があります。キジは桃太郎くんから言葉を貰えたことに恍惚としながら跪き上目遣いで返事をしました。
「はい、ここに」
桃太郎くんは周囲に人がいないことを確認して、キジの頭を踏みながら、
「〇〇州の酒が欲しい。」
と一言。キジは恍惚とした顔をさらに赤らめ、
「はい、準備して参ります」
と言ったため、桃太郎くんはキジの頭から足を外した。桃太郎くんは外出中であったため、キジの頭にはくっきりと泥まみれの草履の跡が残っていた。その後、キジは少し考えて
「2ヶ月程時間をください」
と言って消えていった。桃太郎くんは厄介なストーカーを追い出せたので、作戦を実行することにした。
「サル、皆を集めてくれないかい?」
ストーカー2号である。サルは桃太郎くんを観察してくるだけで特に害はない。キジは同担拒否のため、一方的に同輩を嫌っているが、サルは同輩と語り合うことが趣味なので無害である。武士のような風貌で、筋肉がすごい。サルは桃太郎の家の壁になることが夢らしく、普段から無表情で無口である。サルは
「はっ」
と返事をした。キジが向かった〇〇州までは往復3ヶ月はかかるので2ヶ月とキジは言っていたが、キジは基本的に桃太郎くんが作ったものは壊さないと約束しているため、今がチャンスとばかりに桃太郎くんは同担拒否を極めるキジがいないタイミングで宗教を作り上げた。
宗教のNo.2はイヌである。桃太郎くんによく懐いていて桃太郎くんはとても可愛がっている寺子屋時代の後輩である。キジがいる時はキジを恐れて出てこない心配性な平凡な男の子である。
2ヶ月後
遂にキジが〇〇州産の酒を桃太郎くんのところに持って帰ると既に宗教は出来上がっていた。かなり急いだようで、キジはワクワクしながら戻ってきたが、既に宗教が出来上がっており同担拒否のキジは号泣した。しかし切り替えは早く、桃太郎くんが酒を飲んだ瞬間からもう、同担には目は行かなかった。桃太郎くんにだけ目がいく。
そうして桃太郎くんは無事に宗教を立ち上げたのだった。
『桃太郎教』は神秘の桃を持っているらしい。その薬を飲めばたちまち教祖の桃太郎様のように肌がツヤツヤになるらしい。宗教が立ち上がって1ヶ月後の街の噂である。桃太郎教は徐々に勢力拡大中であった。恐らくおばあさんの肌管理でスベスベの桃太郎くんの肌から噂の信ぴょう性が上がり、噂が効果を発揮しているのであろう。そして桃太郎くんの実家の村には一気に人が流れ込むようになってきた。バブルである。
この機会を逃すまいとおじいさんは金を稼ぎまくった。恐らく噂はおじいさんの仕業だろう事は桃太郎くんは気づいていたが、何も言わなかった。何故なら桃太郎教の広まりが思う以上に早く、広める手間が省けたためである。そしてどんどんと集まる教徒を利用して桃太郎くんは自分の外面を守っていたが、ある時、とんでもない事件が起きた。
それは重い税金である。桃の売上が伸びていたため当然ではあるが、桃太郎くんはお金は腐るほどあったため、別に問題はなかった。しかし桃太郎くんの教徒の多くは非常に困ったため、桃太郎くんに相談した。なので桃太郎くんは外面のために動かざるを得なくなった。桃太郎くんはキジになんとかしてもらうことにした。何故ならキジは御庭番らしいためである。桃太郎くんは今まで興味がなく、聞かなかったことを尋ねた
「キジ、君は将軍けの御庭番だろ?」
キジは神を見るような目で答えた。
「流石桃太郎様、私の忍びとしての正体を見抜かれるとは」
桃太郎くんは忍び装束を着ながらストーカーしている。どこに忍び以外の要素があるのか、逆に忍び以外だと思われる事が少なくない?とか思ったが、それは置いておくことにして、キジに頼むことにした。
桃太郎くんは周囲を確認してキジの頭を踏みながら、
「これは実家で作っている桃だよ、これで徳川家の大奥を懐柔してきなさい。」
桃太郎くんは美肌になることが有名だと噂を流した父の言葉を利用して、桃が入った箱のそこには自分のプロマイドと嘆願書を入れ、これまた人任せにキジに託してキジの顔も見ずに桃太郎くんは昼寝をすることにした。
キジはさらに扱いが酷くなっていくのが嬉しいのか顔を赤らめて
「承知しました」
とだけ告げて消えていった。それから少ししてキジは戻ってきて、大奥でどのようなことが起こり、どのような圧力がこの村の領主にかかったのかはわからないが教徒の問題も解決した。
あの村の桃は大奥で将軍様の正妃様も食べたぐらい美肌効果があるらしい。それからしばらくして年々おばあさんの肌管理能力と技術的進歩があったため、桃太郎くんは美しくなり、それと同時におじいさんの流す噂はどんどんと大きくなり、村全体が稼ぐ額は増え村は豊かになっていった。
桃太郎くんの外面は無事に保たれたのであった。
その後大奥にあったプロマイドに心を奪われた女性たちが次々と出家し、尼になることで大奥が縮小し、大奥に使用されていた莫大な国の予算が国家経営に周り、多大な功績を上げたことで大名間でも話題となる桃太郎教であるが、その教祖である桃太郎様は天の使いであったとされる伝説が残った。




