第7話 悲しき断罪 エレオSide
僕はデンジャラス汁で汚れた箇所を隠す意味で、羅愚毘威墓宇琉を胸で抱きしめるようにシルエッタ嬢の頭を固定させ、ソフィアの前に立つ。
「僕が心から愛するソフィアよ。誠に断腸の思いではあるが、これ以上の愚行は婚約破棄だ!と言わざるを得ない。淑女教育として、1週間、いや、1週間も君に会えないのは辛すぎる…… 3日間だけにしよう。北のフルモアナ教会に行ってもらうことになるだろうが良いね。ソフィア」
「――!? えっ! 何? 何なの? 一体何が起こってるの? マジで?」
ソフィアの一言で僕は酷く動揺した。愛すべきソフィアも僕の言葉に戸惑っている。その狼狽えている顔も僕にとってはご褒美ではないかと思えるほど尊い。み、3日間の我慢だ。甘々すぎる処分であることは十分に分かっている。しかし、それ以上の制裁は僕の精神的、肉体的にも限界なのだ。
「聞こえているかい? ソフィア」
「……………………」
ソフィアは僕からの処分内容にショックでも受けたのか下を向いたまま黙り込んでしまった。可哀想なソフィア…… 今すぐにでもシルエッタ嬢を燃えるゴミ用のゴミ箱に頭から投げ入れ、君の傍に駆け付けたい。しかし、デンジャラス汁で穢れてしまった胸で君を抱きしめてしまったら…… 君までデンジャラス汁で穢れてしまう……
「ヤバい…… ヤバすぎる…… 逃げねば」
――!?
ソフィアの呟きに、僕は愕然となる。
ソフィアはいち早く、僕の胸に着いたデンジャラス汁のシミに気が付いてしまったのか!?
「ソフィア、何をブツブツと言っているんだ? 大丈夫か?」
プルプルと身体を震え始めるソフィアに、僕はデンジャラス汁のシミを誤魔化すために声をかけた数秒後、
「――キェェェェーーーー!!」
突然のソフィアが鬼の形相で発狂し、扉へ向かって逃げ出したのだ。流石の僕も驚嘆し、足がガクガクと震え身動きが取れなくなってしまった。その様な状況下では衛兵にソフィアを保護するよう命令を出すのが精一杯であった。
ソフィアを保護する為に協力してくれている同級生達と衛兵に囲まれてしまったソフィアを見て、これでなんとかソフィアを慰める事が出来ると安堵した瞬間。ソフィアに前に目映いばかりの光が溢れだした。
「うわぁぁぁぁあ!!」
「目がぁぁあ!! 目がぁぁあ!!」
同級生、衛兵をはじめ、その場にいた者はあまりの眩しさに目を押さえながら絶叫と悶絶をしていた。かくいう僕も眩しさから逃れることは出来なかった。
「キャーー! まぶしぅいー! 誰よ! 滅びの言葉を言ったのは!」
ソフィアの絶叫する声も響き渡っていた。目映い光は徐々に消え、そこには今までその場に居なかった見たこともない鎧を着た男達が同級生達と衛兵の前に立ち塞がっていた。
「一体何が起きているんだ。僕の大事なソフィアにあの者達はに何をしようとしているんだ」
僕はソフィアの安否が心配で近付こうとするが、シルエッタのクソアマが邪魔をして上手く前に進めない。
男達はソフィアを護衛でもするかのように彼女を護り始めた。
男達は扉を開こうとするが、なかなか開けられない。そして彼女は自ら扉を開け、男達に護られながら部屋を出て行こうとしている。
僕は今起きている現実が信じられずソフィアを追うことが出来なかった。その前に、このクソアマが僕の胸から離れようとせず、いくら引き剥がそうとしても硬直して動かなくなったクソアマは僕にしがみつき、引き剥がすことは出来なかったのだ。
「ソフィアァァ! ソフィアァァァァア!」
僕の叫びが虚しく響く。ソフィアには僕の声が聞こえなかったのだろうか、後ろを振り返らずに大広間を出て行った。
必死にソフィアを追いかけようとしたが、僕の行く手を阻むかのように男達はこともあろうに王宮に火を放ち、僕の前から姿を消したのだ。
「ソフィア…… 君を必ず探し出してみせる。この愛があればこそ……」
鎮火した王宮を眺め、僕はソフィアを探す旅に出る覚悟を固めるのだった。
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