第5話 最狂の蛮族登場
眩い光が徐々に消えていく。ソフィアが見たものは……
「誰? あの……」
ソフィアはポツリと溢し凝視する。
光の中から現れたのは、煌びやかに装飾をされた大鎧を纏い腰には見事な太刀をぶら下げ、手には和弓を携えた武士が一人。
後ろには立派な馬具が装備されたポニーサイズのずんぐりとした馬一頭が佇んでいた。
「お主は一体何者じゃぁぁあ!! 首よこせやぁぁあ!!」
自称鎌倉武士団は謎の武士に対して、敵意剥き出しにして恫喝を始めた。チンピラも真っ青の恫喝である。
「儂の顔も満足に分からんのか! ボケ共がッ!!」
「「「――!?」」」
武士は鬼の形相で自称鎌倉武士団を一喝をすると、野蛮人共は黙り込んだ。武士はズカズカとソフィアの前に歩み寄り、その場にソフィアに向かって平伏した。
「姫様、我が名を北条泰時と申す。生前は執権職を賜っておりました」
「――!?」
「「「執権殿?……………………」」」
突然、自称鎌倉武士団は何も言わずに北条泰時と名乗った武士に後ろに並び平伏をした。
(今この人、北条泰時って言ったわよね。なんかヤバすぎる人が出て来たんだけど?)
「こちらこそよろしくお願いします。それで泰時さんはこの状況を何とかしてくれるの?」
ソフィアは鎌倉三代目執権、北条泰時の名を聞き、何故こんなところに現れたのか疑問だらけであったが、とりあえずは敵対していなかったことに安堵した。
「ハッ! ここは某にお任せ下さいませ」
北条泰時は立ち上がり、自称鎌倉武士団に向かって、
「これより、姫様を外へお連れする。姫様の為に命を懸けるのだ。各々方ご覚悟されよ」
「「「おうっ!!」」」
泰時の言葉に呼応して、自称鎌倉武士団は雄叫びを上げる。
(あのヤベェ連中を黙らせてしまった。執権職ってもの凄いのね)
ソフィアは泰時の執権職という将軍さえも黙らせる絶対権力に驚きを隠せない。
泰時は門扉にいる守備兵達に近付き、満面の笑みで声をかけたが目は笑っていない。
「皆の衆、ご苦労。某共はただ城外へ出たいだけなのじゃ。我等に争う気はないし、余計な殺生はしたくないのだ。ただ、門を開けてくれさえすれば我等は大人しくこの場を立ち去ろう。どうだ、お互い問題を起こさないのが上策と思うが……」
「「「……………………」」」
守備兵達は泰時の言葉に沈黙し、円陣を組始めた。
「ナンなんだ、あの集団は?」
「変な格好してるよな?」
「見たことのない顔だよな? 一人だけ見覚えのあるような顔が……」
「あれはソフィア様じゃないかッ⁉」
「あの暴風竜のソフィア様かぁ! 俺達だけじゃ手がつけれねぇぞ!」
「ソフィア様の相手を出来るのはエレオ殿下しかいねぇーぞ?」
「ガチで一番関わりたくないヤツに会うなんて、今日は厄日以外の何ものでもないな」
「ホントそれな」
「ソフィア様に関わっても、ろくな事にならんからなぁ~」
「んだ んだ」
「そうだな。ここは知らないふりをするのが一番じゃないのか?」
「なんか面倒クセェ~」
(私じゃないけど、守備兵達の話を聞いているとソフィアの評判って……(汗) 暴風竜ってなに?)
ソフィアと呼ばれている晴美は、なんだかなぁ~と思い、鬱になるのだった。
「お主達、某共はそもそもソフィア様の護衛だ。盗賊や山賊の類いではない。城外へ出たいだけなのだ。お主達には迷惑をかけんから城門を開けてくれんか?」
泰時は左手で左腰に差してした太刀の鞘を掴み守備兵達に話しかけた。
(なんなのこの男前は、ちょっとカッコいいわね)
ソフィアが泰時の行動に男らしさに感銘を受けていると、
『カチッ』
「「「――!?」」」
ソフィアに見られないように泰時は左の親指で鍔を押し刃の一部をチラリと守備兵達に見せつけた。
何処からどう見ても盗賊、山賊の類いの強迫であった。守備兵達はキラリと光る刃の恐怖に青ざめ、いそいそと城門を開け始めた。
(あら、守備兵のみなさんって、なんて平和的な方々なのかしら。野蛮人だらけで困ってたのよね)
ソフィアは裏で恐喝紛いの事が行われている事実を知らず、無事に王都を出ることが出来た。
知らないとは、人を頭お花畑にするのだ……
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