第32話 ピュアハートな蛮族
ソフィアは前世で蓄えた腐った歴女の記憶を思い出していた。
(確か平安時代の仏像って、慈悲に満ちた麗しい仏像が多かったように感じてだけど、鎌倉時代になると一気に金剛力士像とか、怖い感じの仏像が増えるのよね。まさか…… コイツらが原因じゃないの?)
ソフィアは蛮族達の悪行で強面の仏像が増えたのではないかと考えを巡らせるのであった。
「まあ、早く竹崎季長をバッサリ殺っちやった方が人類の為でもあるし、ねぇ、泰時。躊躇なく速やかに殺って頂戴。頼んだわよ」
ソフィアが泰時にそう告げると、突如目の前が眩い光が溢れ出す。
「な、なに。また誰かヤベェヤツを召喚しちゃうの!?」
ソフィアは目を塞ぎながら、口から本音が溢れ出てしまった。
眩しい光が消えると、そこには高貴なオーラを放った年配の女性が立っていた。
ソフィアは思わず、
「あんた誰? また蛮族達のお仲間?」
初対面の相手に失礼きわまりない発言をするのだった。
「妾の事か? 妾は源頼朝殿の尼御台じゃ。ん~、妾クラスのビックネームになると本名は明かせぬことになっておるがゆえ。すまぬが、代わりに北条政子と呼んでくれたら、それで良い」
「北条政子ッ!? ま、まさか日本三大悪女の頂点を担い、悪役令嬢達から尊敬と崇拝を一心に集めている。あの北条政子?」
「そうじゃ、悪役令嬢界のカリスマ。北条政子じゃ。姫様に会えるのを楽しみにしておったのじゃ」
「政子様からそのような、お言葉を頂けるとは、身に余る光栄に存じます」
ソフィアは北条泰時達とは違い、最大限の礼を尽くした。まさに区別と差別である。
「姫様。妾にそのような真似をしなくても良い。妾はイナザミ様から姫様の面倒を見てやってくれと。頼まれただけじゃ。それと、妾に様は付けなくても良いぞよ。妾は姫様の家臣ゆえ、そのように扱って下され」
「わかったわ。今度から政子さんと呼ばさせてもらうわ。政子さん。今後ともよろしくお願いします」
「いつでも妾を頼って下され。それと堅苦しい話し言葉は止めてくださいまし、妾もそのようにいたす故、良しなに」
「ハイ。ありがとうございます。それで、あの蛮族達の制御も併せてお願いします」
「はて? 蛮族とは鎌倉武士団のことでありましょうや?」
北条政子は豆鉄砲でもブチ込まれたような表情を見せた。
「そうです。あの首狩り族の事です」
ソフィアはそう言って、泰時達に指を指した。
「姫様。あの者達は決して野蛮な、蛮族や首狩り族ではありませぬ。それを証拠に承久の乱では、妾の演説に感動して、感涙の涙を流しながら、後鳥羽上皇を追討に行ったのですよ。なんて、純粋無垢なピュアピュアハートな鎌倉武士団なんでしょう。のう泰時?」
「ハッ! あの時の尼御台様の演説は、感動で今でも忘れる事はございませぬ。尼御台様の
『二品、家人等を簾下に招き、秋田城介景盛を以て示し含めて曰く、皆心を一にして奉るべし。
是れ最期の詞なり。故右大将軍朝敵を征罰し、関東を草創してより以降、官位と云ひ俸禄と云ひ、其の恩 既に山岳よりも高く、溟渤よりも深し。
報謝の志浅からんや。
而るに今逆臣の讒に依りて、非義の綸旨を下さる。
名を惜しむの族は、早く秀康・胤義等を討ち取り、三代将軍の遺跡を全うすべし。
但し院中に参らんと欲する者は、只今申し切る可し者り。
群参の士悉く命に応じ、且つは涙に溺れ申す返報 委かならず。
只命を軽んじて恩に酬いんことを思ふ』
その一文を唱和しただけで、自然の感涙の涙が溢れてしまいまするぅ……」
泰時が政子の演説全文を涙を流しながら、ドヤ顔が言い放つと、今度は蛮族達も泣きながら、泰時にならい唱和していた。
(確か現代文にすると、こんな感じだったわね。
皆、心を一つにして聞きなさい。これが私の最後の言葉です。
今は亡き頼朝様が朝敵を征伐し、関東に鎌倉幕府を開いて以降、官位が上がり、十分な俸禄が与えられ、不自由なく暮らせるようになりました。
この恩は、海よりもまだ深く、山よりも高いのです。
頼朝様の恩に報いようとする志が浅くはありませんか。
ところが今、逆賊の讒言により上皇様が惑わされ、道義に反した綸旨を下されました。
名を惜しむ者は、すみやかに藤原秀康、三浦胤義を討取り、3代続いた源氏の遺跡を守り抜くのです。
ただし、朝廷側へ就きたいという人は、今すぐ名乗り出なさい。
これで、涙を流して後鳥羽上皇を追討に行くって、どれだけ純粋無垢なピュアピュアハートな蛮族達なんだろ?)
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