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第3話 なめられたら殺す世界

屋外へと脱出を果たしたソフィアと自称鎌倉武士団の一行は、この場から離れるべく先に進もうとしたが、一部の自称鎌倉武士団が…… いや、一部の自称鎌倉武士団ではなく、約9割りの自称鎌倉武士団が、宮殿と言っても過言ではない建物に向かって、和弓による矢を放った。


『ビュンッ ビュンッ ビュンッ!!』

『グサッ! グサッ! グサッ!!』


「ハァ~!?」


(コイツら…… 躊躇なく、マジで矢を放ちやがった!?)


次々と建物に突き刺さる矢に目を丸くさせ、何故ここまでやる必要があるのか自問自答するソフィアを余所に、自称鎌倉武士団の7割が第2射として、一斉に火の付いた矢を放ったのだ。つまりは火矢(ひや)だ。残りの3割りは、通常の矢をブチかました。


『ビュンッ ビュンッ ビュンッ!!』

『グサッ! ボォー! ボォー!』

『ビュンッ ビュンッ ビュンッ!!』

『グサッ! グサッ! グサッ!!』


「――!?」


自称鎌倉武士団のあまりにも意表を突きすぎた行動に、ソフィアは声も出せなくなっていた。まさに、狂気に満ちたカオスの世界が目の前で広がっていたのだ。


「あなた達! 宮殿に火矢ひやを放つって…… いくら追われているからと言っても、あまりにもヤリ過ぎよ!」


木製で出来た玄関のドアをはじめ木製で出来ている箇所が赤々と燃えだし始めた。


「姫様、これで良いのでござる。足止めには火を放つのが一番でござる」


自宅警備兵達は宮殿に燃え移った箇所の消火作業に追われ、ソフィア達一団には構っていられない様子だった。


「確かに…… って、確かにじゃないわよ! あなた達、何考えてるのよ!」


「我等、鎌倉武士はなめられたら殺す。なめられない為に殺す。殺したいから殺す。揉め事が起きたから殺す。頭にきたから殺す。それが、鎌倉武士の勝手気ままな生き様でございまする」


鎌倉武士団はソフィアの問いに正論で返し、ソフィアの前で一斉に平伏した。


(あなた達、如何にも格好良く言ってるけど、私はそんな生き様はいらない……)


ソフィアは自称鎌倉武士団の生き様に不安を覚え自分自身は、あんな物騒な奴等のようにはあるまいと心に誓うのだった。


「ここに居ても追っ手が来るはずよ。兎に角、ここから逃げましょう」


「「「御意!!」」」


ソフィアの言葉に自称鎌倉武士団は、再び平伏し土地勘もないまま彷徨するのだった。その結果、八甲田山雪中行軍よりも悲惨な彷徨の旅路となってしまった。


「ママッ! あの人達、頭のイカれた変な格好をしてるよ。」


「コラッ エリアちゃん! あんなヤベェ人達に指を差しちゃいけません。何かされたら大変でしょ」


「なんだとぉ!! この女童(めわらわ)!」


ソフィア達御一行を、冷静かつ大胆な分析と解説をする幼女に対して、それを嗜め恐怖する母親。そして、あろうことかその幼女の言葉に太刀と和弓を構え、ぶちギレる自称鎌倉武士団。 ――カオス


「あなた達、小さな女の子相手に手荒なことはしない!」


些細な事でブチギレる自称鎌倉武士団に対して、ブチギレるソフィア。


「なめたら殺す。なめられたら殺す!」


「あなた達! 私の言うことが聞けないの! 全員クビにするわよ!」


悪態をつく自称鎌倉武士団に、我慢の我慢を重ねたソフィアもさらにブチギレる。我慢とは一体……


「姫様! それだけはご勘弁を!」


同じ所をグルグルと彷徨し、精神的ダメージがお互いに限界を迎えつつあったのだろう。そんな時、


「お嬢様ー! ソフィアお嬢様ーー!!」


ソフィアの名を叫び、メイド服を着た若い女性が、ソフィア達御一行に駆け寄って来た。


「何奴! 我等が姫に何用か! 追っ手の者なら容赦なく殺す!」


警戒心を(あらわ)に、太刀と和弓をメイド姿の女性に向ける自称鎌倉武士団。


見たこともないであろう大鎧、太刀、和弓を目の前に、プルプルと震えながら涙目になっている。このメイド姿の女性は震える声で、


「私はソフィアお嬢様の専属メイドのロゼリア・ネクト・ゼネスコ 通称 ロゼです。ソフィアお嬢様のお側は私がお守り致します」


「姫様。この女郎(めろう)が、そのように申しておりますが、ご存知でございますか?」


「いえ、私はそのような方を存じ上げません。全然知らない方です。斬り捨てて差し上げなさい」


ソフィア自身、どうしてこのような状況になっているか、自称鎌倉武士団が何故ソフィアを姫様と呼ぶのか、その自称鎌倉武士団自体がこの場に居るのか理解出来ていない状況の中にいるのだ。ロゼと名乗るメイドさんの事など知る由もない。



「ソフィアお嬢様~ 小さな頃よりお仕えさせてもらっているロゼを知らないとか酷すぎますぅ~」


ロゼと呼ばれるメイドは膝をつき泣き出してしまった。


お読みいただき誠にありがとうございます。

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