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第28話 至福タイム

ソフィアは小屋に入ると、部屋の片隅に人質であろう人達が頭から布団を被り震えていた。


「みんな救けに来たわよ。外が片付くまで危険だから落ち着くまで、逃げるのは我慢してね」


ソフィアは人質にを攫われた恐怖で恐がっていると感じ、人質達に恐がられないよう、いつもの倍以上にやさしく声を掛けた。


「「「……………………」」」



――返事がない屍のようだ。



「私はオズボーンヌ公爵三女ソフィア・ウィズ・オズボーンヌ。村長さんから頼まれて、あなた達を救けに来たの。顔を見せてもらえるかしら?」


「ホント?」


4才くらいの可愛らしい幼女が布団の中からあどけない顔を出した。


「あら、かわいいお嬢さんね。お名前はなんていうの?」


(私も結婚していたら、こんな可愛い子を授かっていたのかもしれないわね。彼氏とか旦那様とかそんな男性(おとこ)いなかったから子供にも縁がなかったのよね)


ソフィアこと市川晴美には、人には言えない秘密があった。実は…… 子供がとても大好きなアラサー女子だったのだ。前世では彼氏いない歴年齢ということもあり、周り人間からは子供に対して嫌悪感を抱いているのでないかと思われていた。その結果、子供がいる女友達グループからは『晴美の子供を見る目付きは異常で危険』という誤った情報が広がり、子供を晴美には絶対接触させないように厳命されるなどの措置を取られていた苦い経験があったのだ。


「わたしマリー」


(マリーちゃんって言うんだ~ マジで名前も見た目もすべて可愛いわ~ まるで本当の天使ちゃんみたい…… いや、マジで天使! これが俗に言うガチ天使ちゃんってやつなのね。これから私がガチ天使ちゃんを保護(そくばく)してあげるからね♡)


「マリーちゃんっていう……」


『ドン!』


ドアから大きなノックの音が聞こえた……


(誰よ…… 私がマリーちゃんの名前を呼ぼうとしているのに邪魔するヤツは…… 万死に値するわ)


ソフィアは聖母のような顔付きから堕天使ルシファーへと変化させ、おもいっきりドアを開けた。


『バタンッ!』


「誰じゃい! 私の至福タイム(スキンシップ)を邪魔するヤツは!!」


勢いよくドアを開けたのは良いが、外の景色が目に入った瞬間。


(――!? なんじゃこりゃー!)


ソフィアの足元には山賊であろう首のない死体が転がり、辺り一面にも山賊達のおびただしい数の山賊達の死体が転がっていたが、それでもまだ戦闘は終わっていなかった。山賊達の最後の意地なのかはわからないが確かに死に急ぐ者は無く、最後の抵抗をしていた。


「姫様、ご無事でしたか」


「ええ おかげさまで…… それで先程のドアの音は何だったのから?(怒)」


景資は地響きにも似たソフィアの声を聞くと、


「それは…… その…… 山賊を斬捨てましたら…… 何と言いますか…… 勢いよく飛すぎたようで…… 申し訳ございませぬぅ」


戦闘中にも関わらず、景資の涙を流しながらの謝罪である。


「まぁ仕方がないわね。今回だけは許してあげるわ。今度から私と幼児(子供)との至福タイム(スキンシップ)を邪魔しないようにね」


命を懸けて戦っている景資は、小屋の中の出来事など一切知らない状況に関わらず、何故か理不尽にソフィアにブチギレられ、さらに謝罪とソフィアからの許しを頂くという、この世には神の仏も存在しない世界を体験したのだった。


「以後、気を付けまする」


「わかれば良いわ。景資、まだ山賊が残っているようね?」


「申し訳ありませぬ。只今、成敗いたします…… 姫様? 姫様、某の話を聞いておりますか?」


(フフフッ 山賊達がどれだけ紳士的であっても所詮はただの山賊。私の尊い時間を奪おうとする輩は許さん! 夢まで見た至福タイム(スキンシップ)を邪魔したんだからそれなりの贖罪は受けてもらうわよ。オホホホホッ!!)


次の瞬間、ソフィアは山賊達の所へ猛ダッシュで駆け寄った。


「姫様ぁー! お止め下さいっ! 危のうございます! 姫様ぁー!」


戦場の武器と武器がかち合う音と怒号の声の中、悲痛な景資の叫び声が木霊する。


「どけぇー!! お前かぁ! お前かぁ! お前なのかぁ! 私の至福タイム(スキンシップ)を邪魔したヤツはー! 殺殺(コロコロ)しちゃうぞ!!」


お読みいただき誠にありがとうございます。

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