第24話 命の軽さを知る蛮族
地獄の底より蘇った泰時達を徴集し、人質救出作戦実行のためにソフィアとロゼは軍議を開くことにした。ロゼは軍議開催の宣言をする。
「それでは、第一回山賊討伐会議を開催いたします。拍手~」
『パチ パチ パチ パチ』
ヤル気のないまばらな拍手が森に響く。
「あなたたちッ! お嬢様主催の崇高な会議なのよ! わかってる? わからない様であれば、お嬢様御自らわからせてあげましょうか?」
汚れ仕事はすべてソフィアに任せ、自らの手は汚さない。ロゼは出来るメイドなのだ。
「では、もう一度…… 拍手ー!!」
『『『パチパチパチパチパチパチッ』』』
留守番部隊を筆頭に、ソフィアの制裁で記憶が無い捜索部隊も何故か、怯えた顔で盛大な拍手をする。
「じゃあ、始めるわよ。泰時、山賊達の状況を説明して」
「ハッ! 拙者共が見たのは山賊共が村から奪った酒で宴会…… うっ 頭が 頭が割れる…… 頭がぁー」
泰時は話の途中で頭を抱え込み、藻掻き始めた。
「泰時、急にどうしたの? 大丈夫?」
ソフィアは一応、家臣でもある泰時に声を掛けた。
「はぁ はぁ お、お、思いだし…… ぎゃーーーー!」
「泰時、なに急に叫び声なんか出して」
「姫様! 姫様ッ! お許しを どうかお許しくださいませ! どうかご容赦を!」
泰時は失われた大切な思い出を思い出したかのように、絶叫しながらソフィアの前で土下座を繰り返す。北条の執権殿と呼ばれた男の憐れな末路であった。
「「「ぎゃーー!! 姫様! お許しを お許しを」」」
泰時の後に続いて蛮族である鎌倉武士団が、ソフィアに土下座で許しを請う姿は、人間が大魔王に恭順の意を示すかのような光景であった。
「あっ、思い出したの。あなた達の謝罪になんの意味があるの?」
ソフィアは泰時達鎌倉武士団を労わることなく、無慈悲にも辛辣な言葉を吐き捨てる。
「「「どうか姫様、どうかお怒りを鎮め我等をお許しくださいませ。い、命だけはどうか……」」」
命の軽さを一番に知る鎌倉武士団が命乞いをするなど正気の沙汰とは思えない状況に、
「私にとってあなたたちの謝罪なんてどうでも良いの。私の一番知りたい情報は、人質の安否とどうやって救出するかよ。あと山賊の人数ね。わかった?」
「「「ハッ! ありがとうがざいまする。命を奪わないだけでも感謝です。ハイ」」」
「それで、人質達は大丈夫なの?」
「ハッ 捕らわれた人質達は宴会場の近くに小屋に押し込められておりました」
泰時は苦渋に満ちた表情で答える。
(泰時がこんな顔をするなんて、もしかして人質達は拷問でもされてるんじゃないの。いや、もっと人権侵害を遥かに超えたゲスで極悪非道なことを…… 早く助けに行かなきゃ)
「人質達はそんな酷い事されてるの?」
ソフィアは今、人質達に行われているであろう最悪な状況を考え口にした。
「えっ!? 人質達は小屋の中で自由を堪能しておりましたが?」
「ハァ? 部屋の中を自由に動き回ってるってこと?」
(何言ってんだコイツ。人質が自由を満喫してるってどんな人質だよ! 普通の人質は部屋の片隅に捨て置かれ、非道にも声を出せないように布で口を塞がれ、さらに手足を縛り上げられて、フガフガとすすり泣くのが正しい人質のあり方なのに)
「ハッ 山賊共の話ですと、人質達は奴隷として売られるようで、健康体でキズ一つなければ奴隷商側から高額で買い取ってもらえるらしく、そのため、売れるまでは大切に扱うようです」
(まあ、なんて紳士的で優しい山賊達なんでしょ。どこかの首狩り族とは大違いね。それにしてもいつの間にこんな情報を……)
「やけに詳しいわね。どこからの情報なの? まさか直接聞いたとかじゃないでしょうね」
ソフィアは不審に思い、泰時を問い質した。
「いや~ ヤツ等から酒を奪おうと近付きましたら、そんな話をしていたものでこれは好機と思い、情報を持ち帰ったしだいでござる」
「……………………」
(コイツ等の原動力は酒なのか? やっぱり酒なのか? そのうち頭蓋骨を肴に一杯やりそうなんだけど)
「それで山賊達は何人位なの?」
「およそ80人! 姫様の前に80の首を並べさせて頂く所存でござる」
(――えっ!? 私の目の前に80人の生首!? ガチモンのサイコパスやんけぇ)
「久しぶりの首実検。ウキウキしますなぁ」
「……………………」
泰時の言葉の端々から零れ落ちるサイコ感にソフィアは言葉を失った。
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