第23話 悪役令嬢の真髄
泰時を隊長とする捜索部隊にソフィアの鬼畜とも言える暴力制裁が終わり、ソフィアは捜索部隊の目が覚めるのを待とうとしたが、ここでロゼが、
「お嬢様。ここは私にお任せください」
ロゼは屍と化した捜索部隊の前に立ち、両手を前に突き出した。
「この者達を暗黒の闇夜から目覚めさせよ。『集団意識再起動!』」
捜索部隊は突如、黒い靄に包まれた。
「――!? ロゼ…… これは一体…… 何が起こったの?」
両手を突き出しているロゼに、ソフィアはゲテモノの類いでも見るかのような目で訊ねる。
「魔法ですがなにか?」
ロゼは当たり前ことをなに言ってるのだ、このお惚けお嬢様は? と言いたげな表情で答える。
「――!? ま、ま、魔法?」
ロゼがまだ魔法の起動中に関わらず、ペタペタとロゼの身体を触り始めた。特に胸の辺りを中心に……
それは異世界に転生されてから初めて見る魔法にソフィアが驚きのあまり挙動不審な行動を取ってしまった結果だったのだ。
「このタコ助! 何をしやがります! いくらお嬢様でも、ブッ飛ばしますよ!」
「いや~、何か仕掛けでも仕込んで有るのかなと思って、つい…… セクハラしちゃった(汗) ロゼ…… ナイスバディ」
ソフィアは魔法という非科学的な理に、どうしても頭が受け入れる事が出来ない。と言い訳をしながらロゼにおさわりを堪能したいだけだった。
「お嬢様だって周りの迷惑も考えずに魔法をガンガンに使い、傍若無人かつ残虐で非道な行いから『バリバリご迷惑伝説』って言われていたじゃないですか!」
「――!? バリバリご迷惑伝説!?」
ソフィアはロゼから初めて聞く、ソフィアの暗黒史に恐怖を覚える。
確かにソフィアこと市川晴美にはソフィアの記憶は無い。イケメン王子の一件で前世の記憶が戻っただけのこと。そんな晴美に待っているのは、イザナミの書簡にあったソフィアの過去の悶え死に必至の暗黒史。
「バリバリご迷惑伝説に関わった者は、精神をズタズタにされながらも、お嬢様の屈託もない笑顔で誰もが最後にはお嬢様の悪行を許してしまう。まさに天真爛漫な鬼畜生の所業」
(いくら天然公爵令嬢だからと言っても、天真爛漫な鬼畜生の所業ってどうみても……)
「それって、まるで私が悪役令嬢みたいじゃない?」
ソフィアは思わず自分の考えを口に出してしまった。
「お嬢様! 悪役令嬢みたいじゃなく、悪役令嬢そのものです。その極悪役令嬢のソフィア様被害者の会会長にして、最大の被害者でもあるエレオノーラ殿下がお嬢様の粗相をにこやかに笑って許す。私には殿下の頭の中身が理解できませんでした」
「……………………」
(ヤルわねロゼ。ソフィアのことを三回も悪役令嬢だとディスり、イケメン王子にも容赦なくディスる。嫌いじゃないわ。その性格)
「お嬢様、そろそろ泰時さん達が目を覚ますかと」
ロゼは魔法を止め、ソフィアに目線を移した。
「ロゼありがとう。これで人質の救出に向かえるわ」
「いえ、これくらいはたいしたことはありません」
「それにしても、なかなか目を覚まさないわね。しょうがないわ。私の一発で起してあげましょう」
ソフィアは倒れている捜索部隊に近付き、顔面に蹴りを入れようとした瞬間、
「お嬢様お止め下さいませ。闇に堕ちた者をさらに闇に堕とすのは、禁忌の極みにございます。泰時さん達が目を覚ましたら、殴る蹴る毟るは一向に構いません。それまではどうかご辛抱を!」
主を闇の住人になってはいけないと自らの犠牲を顧みずソフィアを制止するとは、ロゼはやれば出来るメイドなのである。
「わかったわ。ロゼの忠義を無視するわけにはいかないわよね」
ソフィアはロゼの熱い忠義心に心を打たれ、泰時達を蹴りで起こすのを止めた。
「ん~ んっ!? 某は一体…… ハァ⁉ 確か姫様に…… 記憶がない……」
泰時捜索部隊が目覚めるとソフィアの強烈なエルボーで記憶が飛んだのか、自分達が何故寝ていたのか分からず戸惑っていると、
「やっと起きたのね。だいぶ疲れていたのね。戻ってきたら急に倒れるように寝るもんだから、こっちがビックリしちゃったわ(笑)」
「「「……………………」」」
ロゼと留守番隊の蛮族達はソフィアの手のひら返しに言葉を失った……
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