第10話 衝撃の事実
ソフィア蛮族御一行様は、なんとか村人達の誤解を解き交渉の為に村長の家までやって来た。
「さあ、ソフィア様。むさ苦しいところですが、どうぞ中へ」
村長の案内で家の中へ入るが、豪華な家具とまでは言わないが、それなりの家具が並べてあった。
(家の中は小綺麗ね。農民は貴族達の搾取要員として、飼殺しになって酷い生活をしているものだと思ってたわ)
ソフィアは、この農村を江戸時代の生かさず、殺さずの百姓をイメージしていた。
「村長さん。私が思っていた農村と大分イメージが違うようだけど」
「この辺は王族直轄地になりますゆえ、王様の代わりに王太子様のエレオノーラ様が領主代行されております。おかげさまで何不自由なく生活をさせてもらっております。私らにとってエレオノーラ様は神様みたいな感謝しても感謝しきれない。お優しいお方ですわい」
「あの金髪イケメン王子が…… (意外だわ。普通の王子様だったら若い女達に囲まれて、なんなことやこんなことをヤりたい放題。ハーレムヒャッハーだと思ってたわ)」
ソフィアこと市川晴美は彼氏いない歴年齢だけあって、人様とは違う歪んだ価値観を持っていた。
「ところで村長さん。先程の相談だったのだけど……」
「爽やかで性格も優良物件、さらに誰もが神のように崇め奉るイケメン推し満載のエレオノーラ様のご婚約者様であられるソフィア様の頼みとあらば是非ともご協力させてください。是非お願いします」
村長は目を潤ませながら、ソフィアに熱く懇願するのだった。
(今、推しとか言ったわよね? この世界にも推しとかの言葉があるの?)
ソフィアは村長の懇願に戸惑い、よく部屋の中を見渡すと部屋の中には至る所に、エレオの肖像画、陶器で出来たエレオの人形、エレオであろうぬいぐるみが飾られていた。
(この村長さん、あのイケメン王子様推しがハンパないわ。きっとファンとかのレベルを越えたガチ勢なのね。それにしても初対面の私に婚約破棄した王子様と印象が違うわね?)
「――で、では、村長さん。食糧を融通してもらえるってこと事で良いのかしら?」
「勿論。天地万能の神エレオノーラ様のご婚約者様とあれば、エレオノーラ様と一心同体! 命を捧げる準備は出来ております」
村長はキラキラと目を輝かせテーブルに額をつける。その光景はエレオ推しのガチ勢を遥かに越えた、カルト教団の熱狂的信者なのかと全ての者に勘違いをさせるような言動だった。
「命までは要らないわよ。命は大事にしてね。あと、全員分の数日分の食糧をお願いが出来る? 『チッ』 泰時さん、全員で何人だったかしら?」
ソフィアは村長さんの手前と大人の嗜みとして、北条泰時に付けたくもない『さん付け』を舌打ちをしながら話すのだった。
泰時はソフィアに近付き、耳元で呟く。
「拙者共の心配は無用でござる」
「なんで?」
ソフィアは素で聞き返す。
「拙者共は死人故、飯を食うことは無用でござる。強いて言えば酒があればそれで満足でござる」
「――!? 死人!」
「ソフィア様!? 急に大声を上げて、どうなされましたか?」
村長がソフィアの大声に目を丸くして、挙動不審になっていると、
「い、いえ。ちょっと驚いただけよ(今、死人って言ったわよね? 目の前にいる泰時って、幽霊かゾンビってことなのかしら? それなら駆除対象しなきゃいけなくなるわ。まずは除霊でコイツ等を排除しなきゃ)」
「そ…… そうですか…… 創造神エレオノーラ様のご婚約者様とは思えない大声だったもので」
村長のエレオに対する信仰心がついに頂点に達していた。
「あらッ、そうなのかしら…… ごめんさないね。オホホホホ……」
今さら遅いと思われるが、ソフィアは手を口に当てバッタモン淑女の真似をしてみたのだった。
「……………………」
「そ、それじゃあ、村長さん。私とロゼの二人分の食糧を融通して頂けるかしら? オホホホホ」
「――直ちに準備致します」
村長は立ち上がり、食糧を準備するために部屋を出ようとした時、泰時は肘でソフィアをつつく。
「んッ!? どうしたの泰時?」
泰時は小声で、
「姫様、酒を所望致します」
「――!? (お酒? ご飯は食べなくても、お酒だけは呑むの? しかも、逃亡しているこの状況でお酒を呑むとか鬼畜なの?)」
「村長さん、ごめんなさい。この人達お酒が呑みたいみたいでお酒も準備出来るかしら」
「酒ですか? この村には禁酒期間の為、酒はありません」
「「「なぁ~にぃ~!! 酒が無いだとぉ~!」」」
村長の酒が無い発言に、いきなりブチギレをかます鎌倉武士団一行であった。
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