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旧車物語  作者: 3気筒
71/71

第71章 新勢力?



時は16時。

ここは街でも評判のラーメン屋…真田屋。


厨房に立つ男…霧島 旭は静かに神経を研ぎ澄ましていた。


「…っ!」



ざッ!


並べた丼に、スープという黄金を均等に注ぐ!その早さ、正確さ…共に神憑り的な職人芸…!


さらにラーメンのキモ…麺を…!豪快にっ!!


ばっしゃぁぁあっ!!


湯切り…!圧倒的湯切りっ!!振り下ろされたストレーナーから滴るお湯、湯気はまるで幻のように!霧散する龍の如く…!!


ストレーナーの中で踊る麺は息づくまもなく、丼という名の玉座に!


それら3つのどんぶりがスープ、麺に満たされた…!




そして…!!ついにっっっ!!!!








「あいよっ、素らーめん3つな」コトッ






圭太、由美、美晴の前に並べられた。ごく普通に。


「いただきますっ!」


「ん〜いい匂いだわ!あ、圭太、胡椒取って」


「ズズズズ…ハフハフ…んまー♪」


三者三様、具なし素ラーメンを流し込む。


「裏メニュー…具なし素ラーメン…一杯300円…これは私達貧乏学生にはたまらない一品よね」


そんな由美や圭太はまさに学校帰りの様相、制服姿である。


「ま、金ねぇお前らのためのメニューだけどな…美晴はもう学生じゃあねえし無駄遣いのしすぎだけどな」


「むむっ!わたしはこの店の娘であっくんの雇い主と言っても過言じゃないからいいんだもん!」


「オメェに雇われた記憶はないけどな…」



威張るようにふんぞり返る店主の娘にたいして呆れる旭であった。


「それよりよ、最近小耳に挟んだんだが…最近川崎の方がなんか活発らしいんだよな」


「活発?なにがですか?」


ラーメンにお酢を一匙しながら圭太が問うと、旭は換気扇の下でタバコに火をつけ、タバコを燻らせた。


「詳しくは聞いてないけどな、俺等と同年代の奴らで旧車のチームが立ち上がったらしいぜ?」


「へぇ〜…ま、興味ないわねぇ…」


「お、意外…」


由美の反応に圭太が思いがけないといった反応。


「だって、私達(旧車物語)には関係ないじゃない?川崎って遠いイメージあるし…」


「川崎って遠くないぜ?あそこはほら…長いからな…」


「長い?」


「そうか…みんながイメージする川崎市って、なんか海寄りで横浜の隣ってイメージだけど、実際は南北に細長いから」


「そういえば確かに圭太の言う通りね…」


麺の小さな欠片をレンゲに移すという悲しい作業をしながら、旭や圭太の言葉に頷く。


「町田市の隣は麻生区、多摩区と近いし、16号とぶつかる246 は川崎市を横断してるし、近いは近いのかも」


由美の悲しい作業を見守りながら、頭の中で開いた地図を眺める圭太。


「ふーん…でも、それでなんで川崎が活発になるのよ?」


「聞いた話じゃあな、なんでも単車のレベルが高くて、メンバーも少数精鋭で纏まってるらしい。」


「へぇ」


「ま、あたし達には関係ないわよね。別に競う必要無いし…それに…」


ラーメンどんぶりの中身をまるっと飲み干した由美が満面の笑みで言った。


「私達以上に最高のチームなんかこの世にないしね!」


「まぁ、確かにね」


圭太も同意し頷いた。


自分や由美はまだ駆け出しライダーだが、旭や洋介の卓越した走りや技術、真子達赤城三姉妹の個性、チーム員ではないが、玲香や綾も個性的だし、美晴や翔子のようなムードメーカーもいる…。


それに、競争したり比べるものでもなく、純粋にバイクを楽しんでいるツーリングクラブである。他を気にする必要もないのだ。


由美と圭太の言葉に、旭は今までだんまりを決め込み存在感を消してラーメンの具を盗もうとしていた美晴のコメカミをシバきつつ頷いた。


「ま、たしかにそうだよな」ヤベデアッグンシンジャウシンジャ…アーッ!











場所は変わって、横浜は大黒。


愛機、RZ350の側に立つのは、日向 綾。


そして、綾の眼前に2人の男女がやって来た。


「こんちわ〜…お姉さん、さっき見てたよ。速かったね」


男の方が話しかけた。雰囲気的にはどこもおかしくない。

見た目も清潔感のある、巷では好青年と言われる部類の風体の男。


「…どーも」


しかし綾は、どこか違和感というか、妙な雰囲気を感じ取っていた。

素っ気なく出た言葉の次も無く、ヘルメットに手を掛けた。




「千葉の爆弾娘って、キミの事でしょ?」



「!!」




とっさにヘルメットの顎の部分を掴み体制を整える。


「おっと…!そのヘルメットで殴られるのは嫌だなぁ…」


あははっ…と苦笑する男…


レインボーブリッジで繋がってるからさ、南房総の方の話はよく耳に入るのさ。断っておくけど、ボクらは別に君に潰されたチームの一員や仲間でも、知り合いでも暴走族でもない…君に敵意があるわけでもなんでも無いって事だけは先に伝えるよ」


「それはご丁寧に…ならあなた達と私は一切関係ないわね」



「関係無くはない」


今まで男の後ろにいた女が食い気味に入ってきた。

髪は短いツインテールで、服装はスカートに薄手のパーカー、リュックにはアニメキャラクターの缶バッジ…しかし可愛らしい服装、ファッションとは無縁の、どこまでも無表情だ。


「同じ神奈川の旧車乗り。私たちとあなたは無関係ではない」



「無関係よ。私は誰ともつるまないしつるむ気もないの…あんたちが旧車に乗っていようかなんだろうが、私には関係ないわよ」


キッと睨みつける綾…視線の先の少女はしかし、微動だにもしない。男のほうがヤレヤレといった感じで口を開いた。


「いやね、実はキミをスカウトしにきたのさ」


「スカウト…?」


「あぁ、千葉での事も今では問題ないだろうけどさ…いずれ時が経てば奴らがまた君を付け狙うかも…そんなときに僕らのチームに身を置いておけば、まぁ安心だろうと、ね」


「何をトンチンカンな事を…いい加減に」


「旧車物語…」


「…!?」


今度は女の口から、思いがけない言葉が飛び出した。


「そのツーリングクラブは、あなたの居場所じゃない」


「…私はべつにつるんでるつもりなんかないわ」


「今や旧車に乗ると、やれ暴走族だ旧車會だと…目をつけられバイクも盗まれるし、金も流れる…でも」


「そんな時代は終わる」


続くセリフを女が奪い去った。


「やがてそんな時代は終わる。誰しもが抑圧されることなく、好きな旧車に乗れる…そんな時代がもうすぐ来る。私達が作る」


「僕らが、バイクや走りで時代を変えていくんだよ。それはこれからやってくるさらなる情報化社会によってね」


男が手にしている黒い板…新しいケータイだったか?…そんなことを思案しつつ、綾はもうウンザリとばかりにヘルメットを被った。


「あっそ…なら勝手に作りなさいよ…私は他人の事を気にしてるヒマもなければ、興味も無い」


「残念だなぁ…」


「それに…旧車物語かれらはあんたが言う暴力集団でもなんでもない…知ったような口を叩くのは勝手だけど、こっちは不愉快極まりないわ」


がシャン!


コァァアン!


キック一発でパラツインに火が入る。


全てを置き去りにするロケット加速で、綾とRZ350は大黒を飛ぶように出ていった。




「駄目だったかぁ…残念だなぁ」


「正論で畳み掛けるやり方は良くない」


女の方が無表情で男に言う。


「ま、それもそうか…さて」



「なにそれ」


「動画サイトのネタにね…この間面白い絵が撮れたんだよ」


「…」


「起爆剤になるかも…楽しみだなぁ」











翌日…



「パソコンの時間よ〜!」

圭太達は教室で情報の授業を受けていた。

先生がWordの使い方を説いている最中、由美はアホみたいに私事にパソコンを使って遊んでいる。


「由美…ちゃんと話聞きなよ?」


「何言ってるのよ…ウチにはパソコンなんて無いのよ?見れるうちに見る!当たり前じゃない!とくに動画サイトはボリューム落とせば…ん?」


固まる視線の先…画面に羅列した動画の一覧に、由美は一つの動画を見つけた。 


「こ、これ…!圭太!」


「巻き込まないで授業聞いて大人しくして…ん?」




【湾岸バトル!CBXでマッハをぶち抜いてみた】



そんなタイトルの動画に、由美はもとより圭太も目を奪われた。



CBX400Fが、徐々に前方を走る白いバイクに迫り、やがて抜き去ってしまう。


その白いバイク…女性ライダーが乗るレインボーラインのマッハは…明らかに赤城三姉妹の長女、赤城真子その人だった。


短めなお話ですみません…

前回投稿が3年も前と知り申し訳ありません…

このお話の時代背景が、2010年以前の設定なので、当時を思い出すのがなかなか大変になってしました…時の流れは恐ろしいです…

もうちょっと投稿スピードをあげれるよう、現実世界でばかりでなく、こちらの世界でもツーリングしていきます(笑)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます‼︎ 続き楽しみに待ってました。
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