第58章 悲しみの果て
「圭太っ!」
由美が圭太のもとに走り寄る。
「大丈夫なの⁉怪我は⁉」
「僕は大丈夫…そ、それよりあの人…!」
圭太がRZの少女を見る。彼女は気を失っているのか、うつ伏せで倒れこんでいた。
「おい美春、真子ぉ…」
旭が声を掛けると、2人は頷いた。
「わかってるよあっくん…!」
「彼女とRZは任せてくれ」
言いながら、2人が彼女と、彼女を囲んでいる2人の男に迫る。
「コラぁ!クソアマがぁ、なんか文句あんのかぁ⁉」
真子と美春に因縁をつかるが、2人はそんな男達には見向きもせずに彼女を抱き起こした。
「大丈夫かなぁ…」
「美春…私はあなたほど怪我や病院には詳しく無い…大丈夫そうか?」
「うーん…骨とかは大丈夫みたい…顔の打撲…身体の打ち身が…」
見れば彼女の顔は左の目蓋は腫れ、口からも血が出ている他、頬も腫れてしまっている…。身体の方も蹴られた後などが複数あるが、彼女の身につけていた革のライダースーツが、多少のダメージを防いでいた。
「んー、明日までは高熱にうなされちゃうかも…怪我は全治二週間、命にも生活にもお顔にも影響は無いハズだよ♪」
「そう…顔は女の命だものね…」
真子が痛々しい姿を見て、ため息をついた。
「コラぁ!てめーら無視してんじゃねぇ‼」
背後で、男が叫んだ。真子は振り向かずに男に言った。
「あなた、前を見てなくていいの…?」
「あんだとコラぁ⁉」
トントン…
「あぁ⁈うっせーぞこのダボっ…ぐっ⁉」
肩を叩かれて、2人が振り向くと、そこには悪魔のように笑う洋介の姿が…
「テメェら…よくも女の子に手ぇあげやがったなぁ?」
睨みつけると、男2人は気押しされている。真子と美春は彼女と、RZを回収すると、後ろの方に逃げて行った。
「今日は帰れないぜてめーら⁉」
洋介が2人の胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「おい美春…おめぇら先に帰ってろ」
一方、大男と対峙していた旭が言った。
「俺ぁちっとばっかし怒ってんかんよ…圭太とその女連れつ早く行け…!」
「うん…!さ、玲にゃん!このコを後ろに乗せて上げて!」
美春が玲花のホークⅡの三段シートに彼女を乗せる。玲花は何も言わずに、彼女の身体と自分をくっ付けると、落ちていたヒモで結び付けた。
「これで落ちないね…!よし、姐様ぁ!いつでも出れますよ!」
「ありがとうね玲にゃん♪」
「姉貴…!こっちもオッケーだ!」
倒れていたRZを引き起こして、凛が言った。
「よし…由美ちゃん!早く圭太君を…!」
真子達がエンジンを掛けながら叫んだ。
「行くわよ圭太っ!」
「う、うん…!」
急いで自分のFXのもとに駆け寄ろうと振った瞬間…大男が立ちはだかった。
「早退決め込んでんじゃあねーぞガキィ‼」
ドスドス歩きながら近づいて来た。
「テメーら勝手に仕切ってんじゃねーぞ?全員皆殺しだからなぁ‼」
今にも圭太に殴りかかりそうな大男…腕が振り上げられたその瞬間、大男が真横に吹っ飛んだ。
「圭太、早く行けや…」
旭が大男の後ろ衿を掴んで、横に放り投げたのだ。
「あ、旭さん…!」
「テメーらにゃちとばかし刺激の強ぇ絵面が広がっちまうからよ、早く行け!」
旭が叫ぶ後ろで大男が起き上がっていた。圭太は急いでFXのエンジンに火をいれると、由美達の後を追った。
「くっ…!テメーら、良い気になってんじゃねーぞ⁉」
走り去る圭太達を見て、大男が叫ぶ。
「オイオイ…テメー、こっち見ろ」
旭が言った。
「そんなに暴れてーなら、俺が一緒に遊んでやっからよぉ?」
「ぐっ…⁉この野郎‼」
大男が飛び掛かると、旭は悪魔のような笑みを浮かべた。
「全く…!なんであんな無茶な事をしたのよ!」
一方、先を急ぐ真子達の中で、由美が圭太に怒っていた。
「いくらこの人が心配だからって、こんな危ない真似して…‼もし何かあったらどうするの⁉」
「ご、ごめんなさい…」
圭太がしょんぼりしながらあやまる。
「どうしても気になっちゃったんだ…!今夜この人に何か良く無いことが起きる気がして…」
斜め前を走る玲花の背中で気絶している彼女を見て続けた。
「でも…由美や真子さん達を巻き込みたくなかったんだ…もし由美達がヒドイ目にあったら…」
「圭太…」
「そ、そんなことより…なんでみんなあそこに来たの⁉先に帰っててって言ったハズなのに…‼」
「え…今更なの?」
極度の緊張から解放されたことで、ようやくそのことに気付いた圭太がたずねると、由美がことの真相を語り始めた…
「おっっっそーーーーーっ…‼‼」
キーーーーー…‼
「ーーーーーいっ‼‼」
ーーン…‼‼
洋館の娯楽室の中に、本日二度目の由美の絶叫が響く。
「おい!もうちょっと静かに言えないのかよ⁉」
凛が耳を塞ぎながら言った。
「しゃらっぷ…!…全く、圭太も旭さんも洋介さんも…遅すぎよ…?」
イライラしながら時計を見ると、別れてから大体1時間を過ぎていた。
「あ、あの…洋介さんもついてますし、大丈夫ですよ、きっと」
「それにおにーちゃんもついてるしね!」
翔子と千尋がなだめる。確かにあの2人がいれば多少心配事は減るが…
「……」
「玲花?どうかしたか?」
ずっと何かを考え込む玲花に凛が声を掛けた。
「いや……あたいちょっと外でタバコ吸ってくるよ」
そう言って、玲花は部屋の外に出ると玄関へと歩いていった。
「それにしても、ねぇ」
美春が玲花が出て行った扉を見つめながら呟いた。
「みんなはあっくん達が今何をしてるのか、大体見当くらいついてるよねぇ♪」
その問にたいして、ほぼ全員がため息をついた。由美が呆れながら言う。
「最初は本当に用事があると思い込んでたわ…でもやっぱり」
「RZの彼女の所だろう…」
真子もため息をついた。
「洋介さんも旭さんも、それに圭太さんも困っている人を放っておけないですよね!」
「ま…それは私達もなんだけれど…」
翔子が嬉しそうに言うと、横で紗耶香もうなずいた。
目の前のホワイトボードに書かれた文字…
『緊急!RZの女の子救出さくせん!』
と、由美の字で書かれていた。
「圭太君達が帰ってくるころに会議を始めようと思っていたから、まだなにも書かれちゃいないが…」
「真子姉さん、誰に言ってるの…?」
「とりあえず事態は一刻を争うわ」
デカデカと題名のみ書かれたホワイトボードを前に、由美が改めてホワイトボード用のマッキーを取り出した。
「まず‼今夜この街で、さっきのあの人が何かよからぬこと事をしそうだと…」
「復讐って言ったわね…」
真子が言うと、由美は続けた。
「紗耶香ちゃん!この辺りの街って、結構広いのかしら?」
紗耶香にたずねると、紗耶香は「えーとですね…」と、地図を広げる。
「この位置から、海岸線のあの灯台公園辺りまでで、海沿いを外れて少しの所に駅があるみたいで、街は小さいですが範囲は広いです」
「なるほど…ということは、走り回るだけじゃ遭遇できなそうね」
「人数はいるけど、バラけて探し回ってなんかあるよりは固まっていた方が安全だしな」
凛がホワイトボードをにらみながら言った。
「それに、何人かはココに残っていないともし圭太達が帰ってきた時に困るし…今からあの女を探しに行きたい人と、残る人に別れようぜ?」
「それもそうね」
由美がまた仕切り直した。
「私はもちろん行くわよ?」
「私も行く。圭太君がいるし…何よりあのRZ、なかなか速そうだもの」
真子がニヤリと笑う。ナナハンキラーのRZ350とマッハⅡとでは…コーナーでは勝ち目は無いが、ストレートでは絶対の自信を持つ真子はウズウズしていた。勝負馬鹿である。
「俺も行くぜ姉貴!…ただ、出来れば、姉貴の後ろに乗せてもらいたいんだけど…」
「どうして?」
「なんだか後半からカブり気味でさ、セッティングやるのしんどいし…」
「仕方ないわね…」
真子がため息をつくと、凛が嬉しそうに頭を下げた。
「サンキュー姉貴!」
一方、翔子と紗耶香はお互いに顔を見合わせて言った。
「私達はどうします?」
「んー、行きたいのは山々です…でも、私のフォアで真子さん達と巡行するのは…でも洋介さん達を助けたいです…」
翔子が悩む。CB350Fourも周りのバイクに比べたら同年代だが、中でもずば抜けて戦闘力の高い赤城真子のマッハⅡや、90年代初頭の名車の由美のゼファーが本気で走ったらついて行ける自信も技術も無い事を本人が一番知っていた。
「私も、真子姉さんについて行くには役不足ですけど…」
紗耶香も同じく頷く。彼女のマッハ…250SSマッハⅠは28馬力のエンジンに154キロの車体…マッハ姉妹の末っ子は他のマッハ達に比べて然程過激では無い。
「それならしーちゃんとさやりんはちーちゃんと待っててよ♪」
美春が2人の間に割って入る。
「しーちゃんのはぐっちへの想いを乗せて!おねーさん頑張っちゃうよ!」
「わわわ、み、美春さん…‼」
翔子が顔を真っ赤にする。
「おねーちゃん!私の分もよろしくね!」
「まっかせてよ♪」
千尋の愛車…になる予定のRG250E…このRGという名前はこのバイクが初めて付けた名前で、スズキの名車T20から受け継がれる空冷2ストツインの傑作で、パワーリードバルブ仕様のこのRGは、後にΓの名を冠して…後に全世界を震撼させる。RGはまさにスズキの誉れ高い名前なのだ。
「真っ直ぐはとにかく、くねくね道なら速いんだから♪」
「これで四人…とりあえずは揃ったわね」
真子が由美を見ると、由美が首を振って笑った。
「いいえ真子さん…あと一人、絶対に来るのがいるわよ…?」
愛車の前でタバコを燻らせる。
「あの女…」
玲花が呟いた。
『私はお前達、旧車會が大嫌いなんだ‼』
「…くそっ、あんな奴っ…‼」
初対面でいきなり愛車をバカにされ、挙句大嫌い発言…
今夜何があろうと、玲花は未だに彼女を許す気は絶対に無い…本人はずっとそう思っていた。
しかし…
『最期に思い出の場所で…私にもあったかもしれない未来が見れたような気がするよ…』
彼女のこの言葉が、アタマから離れない。
あの眼は、普通の人間には到底出来ない…死を覚悟した人間のソレだ…
そして、旭達が居ない現状…
「玲花っ‼」
「⁉…ゆ、由美…それに…」
由美の後ろには、真子達も集まっていた。
「今から私達四人で、あの人と圭太達を探しに行くんだけど…」
「玲にゃんも一緒に行こうよ!」
由美と美春が言うと、玲花はそっぽを向いた。
「い、いくら由美と姐さまの誘いでも、あたいは行かないからね!」
腕を組みながら完全否定した。すると今度は凛と真子が前に出た。
「へぇ〜…あんな思い詰めたツラして、まだ許せない振りするのか?」
「だ、誰が振りなんて…‼あたいは本気だよ⁉」
凛に食って掛かるが、凛は「おぉこわいこわい…」と笑っている。
「貴女もガンコね…全く」
真子が言った。
「貴女の事…少し誤解していたわ」
「ご…ごかい…?」
玲花がたずねると、真子が続ける。
「初めて会った時…お互いの愛車の個性の事で言い争ったわよね?」
美春の入院した病院での出来事を思い出して、玲花は顔をムッとさせた。
「あの時の私は、貴女の愛車をあの例の彼女と同じ様に思っていたし、口にも出した」
ホークⅡに視線を移す。
「私も暴走族には否定的な立場だけど…貴女はこのホークⅡを、目立つ為の道具にしか思っていない輩とは違って、本当に本気で愛しているのがわかった。そしてそれは私達旧車物語のメンバーの共通点」
その言葉に玲花の表情が変わる…
「私達姉妹のマッハへの愛と、貴女のホークⅡへの愛…それに、あのRZ乗りから受けた印象…私達、それに多分、彼女も似たもの同士よ」
そう言って、真子はホークⅡのシートに手を下ろした。
「私達と同じ仲間の危機なんだ…旧車物語の『仲間』として、一緒に来てくれないか?」
「仲間…?あたいが…?」
玲花が信じられないと言った感じで見つめる。
「……わかった、あたいやる」
真子の眼を見つめながら言った。
「あたい、あのRZの女は正直キライだよ…でもあたいも殴っちゃったし、向こうも同じ風にキライだと思う」
カチッ…
キーを捻り、ニュートラルランプやヘッドライトなどが点灯した。そしてエンジンスターターに指を伸ばす。
キョカッ…‼
ブァァァアアアアアアアアァァァァ…‼
「だから謝らなきゃね!殴っちゃったこと‼」
玲花が二カッと笑った。
「玲にゃん…!♪」
「よっし!そうと決まれば、早速探しに行くわよ⁉」
「おうよ!姉貴!早く出ないとマズイぜ⁉」
「そうだな…とりあえずは海岸線を流して、街を回って…とにかく走り回るわ」
こうして、彼女達はそれぞれの愛車に跨って、海岸線に飛び出して行った。仲間のため、そして、仲直りを果たすために…
「そうなんだ…」
走りながらなので、掻い摘んだ説明しか出来なかったが、由美の話を聞いて、圭太は頷いた。
「とにかく洋館はもうすぐだ…早く彼女を寝かせないと…」
真子が言った。美春も不安そうに頷いた。
「今夜は高熱が出ると思うから、お薬の用意と、最低でも明日にはお医者さんを呼ばなきゃだよ」
それを聞いて、今まで黙っていた玲花が叫んだ。
「…くそっ‼あんた、しっかりしろよなぁ‼」
夜の海岸線に赤い光が4本、後ろに伸びて行った…
「よう旭、そっちはどうよ?」
一方、こちらでは洋介が一仕事終えたような顔で旭に話し掛ける。
旭は舌打ちをするとつまらなそうに言った。
「おい、コイツ見てみろ」
「あん…?」
旭が手招きしたので近づくと、それは男達の乗って来たクルマである。
「コイツがどうかしたか?」
洋介が見たのは割れたフロントガラスから車内に頭を突っ込んでいる、あの大男だ。
「いや、コイツじゃなくてよ?こっちだ」
無惨な姿の大男を見えないものの用に扱いながら旭が指差したのは、そのクルマの車内だ。
「あん?なんだこれ…うっ…⁉コイツは…‼」
助手席に放置されているアタッシュケースの中から、白い粉やライター…後部座席には注射器やスプーンなどが落ちていた。
「コイツらハナっからラリってやがったんだ…クズが」
旭が悪態をつくと、遠くからサイレンの音が近づいてきた。
「さすがに単車が燃えりゃあ出勤せざるを得ねぇよなぁ」
「バックレんぜ旭⁉」
洋介がフォアに跨りエンジンを掛けた。旭もサンパチに近付き…しかし、またクルマに戻ると、何やらゴソゴソと作業し始めた。
「おーい、何やってんだ?はやくしねぇと捕まっちゃうぞ?」
「ちょっと待てよ…?うし、コレで良し…ぷふっ…」
何やらニコニコしながらサンパチに駆け寄ると、キックでエンジンを始動して、2台は現場から立ち去った…
「なぁ何笑ってんだ?」
「別に…?なんもねーよ」
「気味わりぃなぁ」
洋介が軽く引きながら言うが、旭のニヤニヤは洋館に着くまで止まらなかった。
「あ、由美さん達が帰って来た‼」
一方、洋館の外から聞こえてくる複数のエキゾーストノートに待機していた翔子達が洋館の外に飛び出して行くと、美春が大急ぎでこちらに走って来た。
「さやりん!今すぐお布団と救急箱と氷水を用意して欲しいんだよ‼」
「え…⁉どうかしたんですか⁉」
突然の事に狼狽える紗耶香。しかし、美春の背後にある先程のRZと、その彼女を背負って駆け寄る玲花を見て、紗耶香や翔子達はなんとか状況を理解した。
「…!翔子さん、一緒に手伝ってください!」
「はい!」
2人が洋館の中へと駆け込んで行く…
玲花達は彼女を空き部屋のベッドに寝かせると、紗耶香達が持ってきた救急箱と氷水を受け取り、応急処置を始めた。
「ひ…ひどいよ…」
千尋が顔を両手で覆った。
「ちくしょう…!めちゃくちゃ腫れてんじゃねーか…‼」
「さっきまで暗くて分からなかったけれど…ひどい傷…」
彼女の顔の腫れ具合と、その酷さに凛と由美が改めてあの大男達を恨んだ。
「さっきより顔が腫れてるのは仕方が無いよ…一応こうなるとは思ってたよ…」
美春が冷静に言う。
「まこりん、今からここに来てくれそうなお医者さんを探してくれないかな?」
「わかった、すぐに戻るから後は頼んだ…」
そう言って部屋を飛び出る真子の背を送りつつ、翔子はふと疑問に思った。
「あ、あの…救急車を呼ぶ方が絶対に早いし安全だと思うんですけど…」
言われてみれば確かにそうだ。わざわざ医者を呼ぶよりもよっぽど早く、しかも万全な設備の元に治療が出来る。なぜこの普通の部屋での治療にこだわるのか…美春が説明した。
「今日…この子に関わった人達が病院や警察にたくさん行く事になると思う…」
青黒く腫れたまぶた塗り薬を塗布すると氷水にタオルを漬けながら続けた。
「だから…こんな普通じゃあり得ないような怪我をしたこの子を病院に連れて行ったら…」
ぎゅーっ…とタオル絞ると、洗面器に無数の雫が落ちた。
「絶対にこの子を奴らや他人に渡したくないから…!」
そう言うと、美春はまた彼女の顔を拭き始めた。
多数の男に囲まれて殴られていたことや、燃え盛る炎を見たことで、美春の中に封じられているあの時の光景と重なる…美春が必死で看病していると、真子が勢い良く扉を開いた。
「あと一時間ほどで近くのお医者さんが来てくれることになったわ」
「ありがとう、じゃあ後は私が…」
美春が言い掛けたとき、部屋の外から足音が聞こえてきた。そして扉が開くと、そこには見慣れた2人の姿が、
「よぉ、大丈夫かよ」
「あっくん…!」
旭と洋介がゆっくりと入ってきた。
「旭さん…あの人達は…?」
圭太が無傷の2人を見ながらたずねると、洋介が笑い飛ばした。
「おぉよ、しっかり反省させてきたからさ」
まるでゲームセンターから帰ってきた直後のようにゴキゲンな洋介。そんな彼を見て翔子が
「洋介さん…よかったです…無事で…」
「はっはっは!俺は無敵だからな!」
「でも…もう無理なんかしたらダメですからね…?」
「あ、ハイ…」
「だいたい!暴力はダメなんですよ?怪我はするしさせるし、同じ人間なんですから話し合いとか…いろいろあるじゃないですか、それなのに暴力に暴力で立ち向かっちゃダメなんですねぇ聞いてますか洋介さん‼」
「む、胸がぁ!胸が痛い…‼」
「全く本当に…!」
「あれ…?俺まで胸が痛ぇぞ…?」
翔子の説教に、洋介と旭が胸を押さえるのを尻目に呆れていた凛が、ふと嫌な予感がして旭と洋介に向き直る。
「それより、あいつらしばらくしたらまたこのRZ乗りに絡んでくるようなことは無いか?」
「あ…!」
圭太も気付いた。もし彼女が回復しても、この街に住む限り、また報復してくるかもしれない…それも、自分達が居ない頃にそれが起きてしまったら…
しかし、そんな圭太や周りの心配をよそに、旭はニヤニヤと笑ってリーゼントを押さえつけた。
「大丈夫大丈夫…野郎、多分しばらくはこの街とはおさらばだからな」
「?」
ちょうどその頃、件の現場の道路は通行止めになっていた。
先ほどまで轟々と燃えていたバイク達はその炎を鎮火され、辺りに倒れていた暴走族は、大半が病院に送られるためにその準備に警察や消防が躍起になっていた。
「現在このあたりで特定されている暴走族以外に、辺りを走っていたというような目撃情報はありません!」
まだ若い警官が、上司である刑事に伝えると、刑事は改めて、酷く破壊された乗用車の車内を見た。
「全く…悪名高いこいつらをここまでしちまうとはなぁ」
「先ほどこの車から発見されたあの男の免許と、車両の車検証から、本人の物で間違いありません」
「ゴクロー…さて、今回の犯人も気になるが…」
車内の中から押収された薬物達を見てため息をつく。
「先にこいつらを叩いて埃を出した方が今のところいいんだろうなあ…まさか我々が捜査していた男をこんなカタチで捕らえるとはな…」
「まさか…ぷぷっ…し、失礼…あんなカッコで寝てるこいつを見つけることになるとは…」
若い警官が、思い出すと堪えきれずに笑った。
発見時に、フロントガラスから車内に頭を突っ込み、鼻の穴にマリファナを突き刺し、右手には注射器、左手にはスプーンを持ち、さらに鼻水とヨダレを垂らしながら失神していた…全裸で。
「…今迄のこの男の悪行に泣かされてきた人間がやったんだろうなぁ」
「えぇ…覚醒剤、暴行、恐喝、窃盗、強盗、共同危険行為、強姦、殺人未遂…ま、少し叩いただけでこれだけの容疑がこの男と暴走族にはあります」
「今迄はなかなか捕らえられなかったが、ようやくだな…」
このチームといたちごっこを繰り広げていた彼らだったが、遂にこのチームに幕を引くことが出来た。
「よし、とりあえずこいつらが回復次第事情聴取だ!」
「はいっ!」
ちなみにその後彼らは、事情聴取で1人の女と2人の化け物にやられたと話したが、刑事達はそれを信じずに彼らを逮捕・補導した。あの大男やその取り巻き達はその後長い懲役生活に入ることとなる…
「ま、悪いことはするもんじゃねーっつーことだべな」
「お前が言うかそれを…」
場面は洋館に戻り、意味深な事を言ってニヤつく旭に洋介が突っ込んでいた。
「でもこの人…いったいどうしてこんな危険な想いをしてまであんな事をしていたのかしら…」
痛々しい表情でうなされている彼女を由美が見つめる。
「あの…その事なんだけれど…」
「どうしたのよ圭太」
「いや…実はもうその人から理由は聞いてるんだよね」
「そうなのか⁉」
玲花が圭太
に詰め寄る。
「実は…」
…
そうして、圭太は彼女から聞いた話しの全てを語り始めた…ゆっくりゆっくり…今日に至るまでの全ての出来事…怒りに震え、悲しみに涙を流し、復讐に全てを捧げた彼女の一年間を…
旧車物語’s愛車紹介!
赤城真子
400SS MACHⅡ
年式 1974年式
エンジン系 0.5ミリオーバーサイズ (焼き付き)
吸排気系 BEET3本出し爆竹チャンバー 350SS初期型キャブレター パワーフィルター
足回り BEETキャストホイール
外装 セパレートハンドル 750SS風シート Z400FXテール (ライト部はノーマル) バックステップ
その他 KH400CDI点火
カラーリング 白×緑 (レインボーライン)
自慢点 5000回転からの凶暴さ加減
赤城凛
400SSMACHⅡ
年式 1975年式
エンジン ノーマル
吸排気系 イモ管集合チャンバー
足回り リアメーカー不明ショック フロント穴あきキャリパー流用
外装 タックロールシート バックステップ セパレートハンドル
カラーリング 赤×橙 (レインボーライン)
自慢点 いつもピカピカのエンジン!
赤城紗耶香
250SSMACH Ⅰ
年式 1974年式
エンジン ノーマル
吸排気系 ノーマル
足回り ノーマル
外装 ノーマル
その他 フルオーバーホール
カラーリング 青×水色 (レインボーライン)
自慢点 全て…全てです…!




