第5章 忍び寄る影!?
4人はファミレスを出た。
この後、旭の家にゼファーのパーツを貰いに行くのでダムを少しまた流してから帰ることになったのだ。
皆自分のバイクのエンジンを掛ける。由美もエンジンを掛けようとスターターに指を伸ばした時、美春に呼び止められた。
「あ、由美ちゃーん」
「なんですか?」
由美が美春に聞き返すと、美春がニコニコしながら問い掛ける。
「敬語は抜きって言ったじゃない。それに、サイレンサー抜くんじゃないの?」
「あ、ごめんなさ・・・じゃない、ごめん。よし、そーいえばサイレンサー抜いた音を聞きたかったんだよね!」
そう言って、サイレンサーを外そうと思いバイクから降りるが、なにがサイレンサーでどうやって外すのかわからないことに気付いた。
「・・・旭さん、サイレンサーってどれですか?」
由美に呼ばれて、エンジンを暖気していた旭が由美のゼファーに向かった。
「サイレンサーってのは、マフラーを後ろから見ればわかりやすいよ。ほら、排気口が出口に比べて小せぇだろ?この穴を埋めているぶんだけ消音されてんだ」
なるほど、確かにマフラーの出口の直径は大きいのに、排気ガスが出る穴は小さい。
「ま、でも実際はやんないほうがいいんだけどな」
旭が訳有りげに言う。
「オレ達みたいにあんまりうるさいと、マッポにも目を付けられるしな」
そう、旭達のサンパチもそうだが、由美のもこれを抜いたら騒音規定をオーバーするかもしれない。
「ま、運がなければの話だけどな。みんな結構外してんけど。しかも捕まっても対した話じゃないしな」
そんなことを言う旭に、由美がしゃがみながら聞く。
「じゃあやめたほうがいいですか?」
「実際は付けてた方がいい。まぁ、この辺地元は警察もそこまでうるさくないけどキップでもなんでも切られたらオレも責任感じるしな。オレは反対だな」
「なんだかなぁ・・・」
そう言って、由美が旭を見る。
「でも、私は外したい!ゼファーちゃんの本当の声が聞けるし!」
そういって、ゼファーのタンクに手を置いた。
「じゃ、好きにしたらいいさ。ただ、一応違法になるってことを頭に入れとけよ。ま、守ってるヤツなんかめったにいないけどな」
ちゃんと忠告もしたし、反対もした。他人にしっかりアドバイスし、その上で旭はバイクをイジる。いくらバイクがかっこよくなっても、それが違法と知らない、まして今日初めて自分のバイクに乗った由美に「サイレンサー抜いたらかっこいい」なんて理由で煽って抜いたりしない。こういうことを自然に出来る旭だからこそ、慕っている人間(特に後輩たちから)が多いのだ。
そして、しゃがみながら説明を再開する。
「マフラーの出口の下になんかネジが出てんだろ?このネジで固定されてんだけど、このネジ抜くのに必要な六角レンチが車載工具の中に入ってるからソイツを出してくれ」
なるほど、車載工具が必要なのか、しかし・・・
「あの、車載工具ってどこにあるんですか・・・?」
この質問に、由美以外の3人は呆れ顔である。
「由美〜、そんなことも確認しないでバイク買ったの〜?」
呆れながら圭太に聞かれ、由美は恥ずかしさに顔を真っ赤にさせた。
「だ、だってもう直感で買うしかないって思って、そんなこと気にする余裕無かったのよ!!」
「はっはっは、んな恥ずかしいこと堂々と威張るな」
旭に笑われて由美はさらに真っ赤になった。
「ま、ゼファーの車載工具はシートの下にあるんだ。あけてみな?」
旭に言われて、由美はシートを外した。すると確かにシート下に車載工具があった。
「で、中から・・・じゃーん!」
六角レンチを取り出した旭は、マフラーの下にレンチを持っていきネジを緩めはじめた。
「よし、ネジが抜けたべ?そしたら、六角レンチのL字の短い方をサイレンサーに差し込んで・・・」
旭がそのまま引っ張ると、中から黒くなったサイレンサーが出てきた。
「で、サイレンサーは持って帰るからウエスに包んでシートの下に入れて、完成!」
「おぉ!」
確かに後ろから見て、マフラーの穴を塞ぐものが無くなって、いかにも「よく排気します」と言わんばかりのイカついリアビューになった。
「じゃあ、エンジン掛けて見な?ビビッから」
意味深なことを言うとそそくさとその場を離れる旭。
「言われなくても!」とスターターに手を伸ばしエンジン始動。すると・・・
きゅるるるるる・・・ボァァン!!!!!!!
「ひっ!!」
あまりの爆発的な音に、由美は旭の予言通りビビった。
「おー、良い音くれてやがるなぁ」
なかなか感心しながら見ている旭に対して由美は、一瞬ビビったがすぐ感動に変わった。
「す、すごーい!!!こんなに変わるんだ!!」
嬉しくなってバンバンフカす。
ゴアァァン!ゴアァァン!!
「サイコー!!キャー!!」
バンバンフカすからもうすごい爆音が辺りに響き渡る。それを見ていた圭太に旭が寄ってきた。
「オメーのも抜いちまうか?」
その問に対して、旭は至って冷静に答えた。
「大丈夫です」
圭太は断った。あまり爆音すぎるのは目立つし、圭太のFXは純正マフラーなのでさして効果をは無いだろう。
「ま、さっきも言ったが、実際はやんないほうがいいんだけどな」
「まぁ本人が喜んでるならいいんじゃないですか?」
「だな」
そして、全員で来た道をまた戻りながら走る。
実は、もう少し走ればさっきのダム入り口にすぐに戻れるのだが、「せっかく来たんだし」と言うことで逆走して遠回りのルートで帰ることになった。
4台は順調に走り、景色を楽しみながら走った。
「やっぱりみんなで走るのは楽しい!!」
爆音直管仕様になったゼファー改FXは、旭達のサンパチみたいな甲高いバリバリした音では無く、低音でくぐもった爆音を山に反響させながら走る。
スピードは法廷速度である40キロ。旭も相手がペーパーライダーなので飛ばしたりせず、さっきのウィリーなどの曲芸乗りもやらなかった。
しばらく走り、またダム入り口に戻ってきた。
このまま旭の家に行くことになっているので旭に付いていくことになる。
ここから五差路を右折。国道に出て車を追い越したりもせずに安全運転で走る。
信号に引っ掛かり待っていると、爆音を轟かす3台は注目された。
「見て見て!圭太、今すごい目立ってるよ!」
なかなか上機嫌の由美に圭太が微妙な顔をして言う。
「やっぱりみんな私のゼファーちゃんの良さがわかるのね!!」
由美は気を良くしてるが、多分注目の理由は違うと思う。
そんなこんなで信号が青に変わり、左折。国道を出て一般道を走っている時に事件が起きた。
突如、後ろから車が煽ってきた。
かなりノーズを詰めて、一番後ろを走っている美春と由美にプレッシャーを掛ける。
「な、なになになに?!」
由美が慌ててスピードを上げると、車もスピードを上げて付いてきた。
異変に気付いた旭が、美春に並ぶ。
「どーした!?」
「車が後ろからピッタリ付いてきて・・・」
まだ法廷速度を軽くオーバーした程度だが、狭く信号も多い一般道でその車の行為は異常だ。
(仕方ねぇ、こっちにゃ圭太や由美もいる。しゃくだが車に道を譲ろう・・・ちくしょう)
「しょうがねぇ、とりあえず道譲って先行かせよう」
美春と由美にそう言って、道を譲り先に行かせようとする。バイク乗りにしたら、車に先に行かせるのはしゃくだし、何しろこの車の煽り方にムカつきを覚えた旭だが、こちらには初心者が2人もいる。悔しいがこれが最善の策だ。
道を譲ると車は前に躍り出たが、今度は旭にあわせて並走してきた。
「あぁ?なんだこの野郎・・・ここまで舐められちゃ黙ってらんねーぞぉ、おう」
そう呟き、運転しているヤツの顔を見る。どこにでも居そうな中年の男がヘラヘラ笑いながら運転している。おそらく中国系の人間で、よく見ると後部座席にもあと2人は乗っていた。
舌打ちしながら、旭がサンパチで脱出を試みる。いつまでもこの危険な行為をしている車と並走していたら事故に巻き込まれるかも知れない。
しかし、車は旭に距離を詰めてきた。いわゆる幅寄せである。
歩道側にジリジリ詰められる。このままでは弾かれるのは時間の問題である。
「・・・ンの野郎!」
旭は車に叫び右足でドアに蹴りを入れた。見事にベッコリいった。
そして旭は相手ドライバーにガンを付けながら、普通のハンドルだったら通れないような狭い車と歩道の間を、鬼ハンにしたGT380は甲高い音を鳴らして加速していく。
前に出たところで今度は車の前でアクセルをフカす。
カーン!カーン!
バリバリバリバリ!!
車に向かって旭は威圧的なフカし方、いわゆる『コール』を切る。白煙が視界を覆いオイルが飛ぶ。
しかし車は、それでも構わず煽ってくる。
旭は頭の中で『コイツ無理やり止めてボコボコにしてやろーか?』とか物騒なことを考えていたが、 やがて車は途中で曲がり、旭達から離れていった。
「あっくん!!大丈夫!?ケガ無い!?」
美春がヘルメットの僅かな隙間からでもわかるくらい心配している顔をしていた。
「大丈夫だ、心配すんなよ!」
そう言って旭は走りながらガッツポーズを取る。しかし・・・
「ひ、肘から血が出てるよ!?大丈夫!?」
見ると右の肘から血が出てる。おそらく幅寄せされて抜き返したときに切ったらしい。真っ赤な血が下にポツポツ後ろに流れながら落ちていく。
「旭さーん!大丈夫ですか!?」
さっきまでいっしょに前を走っていた圭太もやってきた。
「肘を少し切ったみたいだな、ちくしょうあのクソ野郎がよぉ」
旭が圭太に見せるように腕を上げた。しかし、少しってレベルの血の量では無い。
「だ、大丈夫なんですか!?」
由美がおずおず聞いてきた。
「あぁ、ウチに行けば包帯とかあるし、大丈夫だろ」そんなことをいいながらまたハンドルに手を伸ばす旭。圭太は心の中で(ターミネーターみたいな人だ)と思った。
「あっくんにケガ・・・あっくんにケガ・・・あいつら、絶対に・・・」
美春は誰にも聞こえない小さな声でつぶやいた。そして妙に明るい声で続けた。
「壊してやる・・・」
「?」
由美は、変な雰囲気に包まれた美春を見た。その背後に恐ろしいオーラを見たような気がした。
変な横やりが入ったが、4人は旭の家に向かって走り続けた。これが後に大きな出来事になるとも知らずに・・・
バイク紹介&自慢広場!
作者「このコーナーでは、登場人物に自分の愛車をを紹介してもらいます!3人目はリーゼントパーマとグラサンがトレードマーク!!霧島旭クンで・・・」
グシャ!!←踏まれた
旭「おい・・・てめぇ・・・?」
作者「い・・痛い・・・」
旭「人が寝ようって時によぅ・・・なに勝手に人のこと呼んでんだよ・・・?」
ゲシっ!!←また蹴られた。
作者「痛っ・・・!だからぁ!ここは夢の中なんだって!」
旭「え・・・?そうなの・・・?」
作者「そうなの!」
旭「そうか・・・ここが夢の中なのか・・・まぁ、100歩譲ってここが夢の中だとしよう・・・で?オメーは何なんだ?」
作者「まぁ、この夢の中の住人とでも申しましょうか」
バキっ!!←殴られた
旭「なに勝手に人の夢の中に住んでんだよこの野郎・・・?」
作者「暴力反対!ここはお前だけの夢じゃないの!たまーにいろんな人の夢の中に現れる空間なの!!」
旭「なんだ良かった・・・」
作者「圭太たちとずいぶん扱いが違うじゃないか・・・」
旭「あいつらダチだし、お前知らねーし・・・つーか圭太のこと知ってんのかよ?」
作者「もちのロン!私は圭太君と由美ちゃんの夢にも現れましたからね!」
旭「2人ともかわいそうだな」
作者「まぁそんなわけで(スルー)今回は旭君に愛車を紹介して頂こうと思いまして・・・」
旭「別にいいけどなんで・・・?」
作者「いいじゃん、気にするな」
SUZUKI GT380改(B4型) 旭仕様
スペック
エンジン 本体ノーマル(腰上、腰下オーバーホール済み) 吸排気系はミズノモータースのゼス管3本チャンバー
足回り ノーマル
外装 鬼ハン(環七シボリ風) 左ミラー無 ウインカーカチ上げ 純正シートアンコ抜き
カラー キャンディーレッド(B4純正カラー)
旭「以上だ」
作者「おぉ・・・なんだか70年代の空気がプンプンと・・・」
旭「当時の族仕様を目指したからなぁ・・・どうだ?かっこいいだろ?」
作者「うん、かっこいいよ。でもなんで3本チャンバーなの?GT380って言ったらイモ管なのに・・・」
旭「よく聞いてくれた!俺はサンパチにイモ管付けた時の音が嫌いなんだ!」
作者「なんで?」
旭「愚問!イモ管と集合管は音がくぐもった音するべ!?それに引き換え、3本チャンバーはバリバリ言うだろ?だからだ」
作者「ふーん、でもイモ管もバリバリ言わない?」
旭「だってみんな付けてるじゃん」
作者「あぁ、そっちが本音か」
旭「まぁいいや。とりあえずもう帰っていいよな?」
作者「いいけど・・・なんでみんなそう早く帰りたがるの?」
旭「お前がキモイから」←即答
作者「ヒドっ!」
旭「しゃ-ねーべ?本当の事だし・・・じゃーな」
というわけで、長いあとがきでした汗