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旧車物語  作者: 3気筒
34/71

第34章 旭の悪友!?

遅れてしまいました汗

それではどうぞ!

 由美が野球で例えるならば近鉄時代の北川の代打逆転サヨナラ優勝決定満塁ホームラン(お釣無し)並みの快挙を成し遂げ、Yesterdayにて皆とケーキをバカ食いして帰路について2時間後。この街を通る国道と街道を結ぶストリートである異変が起きていた。

「おぅ!『暴威』にツナギ入れたんかよ!?」

「押忍!!『NightWalker』もじきに到着します!!」

 スキンヘッドで木刀を担いだ少年が頭を下げて報告すると、リーダーらしき少年が単車から降りて笑う。

「で?そのコナマイキなペケジェーヤロウってのは?まだ来ねぇのか?」

 幹部の1人が拳をバキバキ鳴らす。その拳は常に人を殴っているのか、殴りタコのかさぶたが生乾き状態という恐ろしいものだった。

「考えてみりゃあ、『NightWalker』も情けねぇよな?下のモンかなんか知らねぇけど、『相模連合連れてこい』とか言わせやがってよ?」

 けっけっけ、と笑いながら幹部の少年は角刈りの頭を弄る。

 彼らはこの街を仕切る暴走族の連合隊、『南部連合』のトップを張るチーム・・・第十四代『金剛會』だ。歴史的に見ると特に長くはないが、この時代には珍しく走りのチームとして活動をしている。一般人には手を出さず、相手チームにケンカも売らないが、売られたケンカは全て買うという古風で筋の通ったチームだ。

「しかも『頭3人とタイマン張らせろ』たぁナメてんぜ」

「でもよ、旭さんや洋介さんほどじゃねーにしろ、賢もなかなかのモンだし・・・まぁ今回も楽勝だろ」

 横にいた幹部の少年が言うと、『金剛會』十四代目頭の長良賢は苦笑いした。

「バカ、お前さぁ。あの2人にゃあ勝てる奴なんかいねーぜ?こんな下らない話の中であの人達の名前出すなよな?」

 笑いながら言って、彼は愛車のシートに腰を下ろした。

「このGSだって、オレが本当の男になれたら見せに行くつもりだしな」

 言って、パープルメタリックと赤フレームのコントラストが輝くGS400Eを見つめる。本人は地元で1番のGSだと思っている。

 すると遠くから何台かのバイクの音が響いてきた。

「押忍!會長!『暴威』『NightWalker』来ました!!」

 部下の少年が叫ぶと、金剛會のバイク12台の横に19台のバイクが並んだ。年々暴走族の数が減り、連合3チーム集まっても31台しかいないがそれでもヨソに比べれば多い方だった。

「おう、菅井呼んで来ぉよ」

 長良が言うと、白い特攻服を纏った少年がやってきた。背中には『NightWalker』の文字が入っていて、胸のポケットには『伍代目総長』と書かれていた。

「よぉ菅井ぃ・・・テメェんトコのパシリが舐められたおかげで、オレらまで重い腰上げなきゃならなくなったじゃねーか?」

 長良が言うと、菅井と呼ばれた男は悔しそうに拳を握り締めた。

「オレら金剛會はよぉ、オメェらんみてぇに軟派チームでも無きゃ、『暴威』みてぇなケンカ屋集団でもネェえんだわ?」

「す、すまない・・・!!」

 菅井が頭を下げる。が、次の瞬間には菅井は後ろにぶっ飛んでいた。

「テメェのパシリのケツも拭けねぇような軟派ヤロウが!!ナニ堂々遅刻してやがんだ!?」

 そしてもう1発みぞおちに蹴りを入れると、菅井は呼吸が出来なくなり辺りを這いずり回った。

「おぅ、『NightWalker』の頭ぁ今日は休みだ・・・オレと『暴威』だけで殺んぞ?」

 長良が言うと、人垣の中からかなりデカイ男が出てきた。金の刺繍で『極悪非道少年 暴威』と飾られた赤い特攻服を着た巨漢な少年が笑った。

「おぅ長良ぁ?あんましチョーシこくなよ?」

「あ?なんか言ったかよ、小杉?」

 すると大柄な少年・・・『暴威』二十代総長の小杉が睨みつけながら言った。

「そのペケジェーヤロウを殺ったら・・・次はオメェだかんよぉ・・・?」

 手に持つ固いコーラ瓶を、握力だけで粉砕した。

「ケンカしか能がねぇゴリラ野郎が・・・」

 長良が悪態を付く。

 御覧のように、『南部連合』は1枚岩では無い。先代が『金剛會』出身で、走りもケンカも無敵だった為、現在も長良達『金剛會』が連合のトップに君臨するが、今ではこうして連合総會長の座を狙う人間も出てきている。

「ま、オレは負ける気しねぇけどよ?」

 長良は笑いながら言った。小杉よりも遥かに小さいが、腕っぷしには自信があった。連合の頭にいることが何よりの証拠だ。

 今にも爆発しそうな現場。だがそこに、今日のメインゲストが現れた。



 ファンファン!!ファンファンファファ!!ファファァァァア!!!!


 こ気味良いコールに、長良が呟く。

「あ・・・?誰よ、小杉?チームにビーエックスなんて贅沢ナ単車乗ってん奴いんのか?」

 長良が話を振ると、小杉はもうほとんど見えない首を横に振った。

「いや・・・ウチにぁいねー」

 連合全員が見ているとヘッドライトが1つ、ユラユラと近づいてきた。そして目の前に止まったバイクを見て、2人は唖然とした。

「な・・・!?ペケジェーだぁ!?」

 長良が驚いた。目の前に現れたのがCBXでは無く、今日の相手であるXJ400・・・ペケジェーだったからである。

「おぅ!!オメェがこの『南部連合』にケンカ売った奴か!?」

 が、メカの事などどうでもいい小杉はそのペケジェーの前に迫った。

「おいおい?随分手厚い歓迎じゃないの・・・」

 ペケジェーの男がフッ、と笑う。愛車と同じホワイトに塗られたコルク半を脱ぐと、続けた。

「お前・・・誰だっけ?悪い、覚えてないわぁ」

「ああ!?」

 小杉はペケジェーの男の胸ぐらを掴んで引き寄せると、睨み付けながら言った。ちょうど長良達からは男の顔が見えなくなる。

「誰に口効いてんだよこのヤロウ・・・?」

「いやぁ、紅の豚にさ」

 そして、小杉はキレた。

「ぶっ殺してやんかぁコラぁ!!」

 言って、ペケジェーのエンジンを思い切り蹴飛ばした。瞬間・・・



 ゴキャッ・・・・・!!



 鈍い音が辺りに響いた。

「はごぉっ・・・!?」

「豚足1本ゲーッツ」

 見れば、小杉の左腕があらぬ方向に曲がっていた。あまりの激痛に小杉が胸ぐらを掴んでいた腕を離すと、男はバイクに跨がった状態で小杉の顔面にコルク半をごと裏拳を入れた。

「ったくよぉ・・・ペケ子ちゃんに蹴り入れるなんざ・・・後輩じゃなかったら死んでも文句言えねーよ?」

 地面をのたうち回る小杉を見て笑う。

「て、テメェ・・・!!よくもやりやぁったなぁ!?」

 残された『暴威』のメンバーや、『金剛會』『NightWalker』のメンバーが威勢よく叫ぶと、ペケジェーの男は単車から降りてから「あっれぇ〜?」と首をひねった。

「み、みなさんなんでそんなに殺気だってるの?」

 おちゃらけながら言うが、皆キレていて今にも暴動が起きそうな状況だった。

「ありゃまぁ・・・さすがに3チーム相手はキツいなぁ・・・」

 が、尚も軽口を叩く男を見て、長良はふと思い立った。

「ペケ子ちゃん・・・?見た時無いマフラー・・・?それにこの声・・・?まさか・・・!!」

 そして今にも襲い掛かろうとしている群衆を殴って道を開けさせた。皆が「総長!」「ぶっ殺してください!!」と声を上げるが、長良は男の姿を見て絶句した。

「あ・・・あんたは・・・!?」

「ん・・・?おぉ!長良じゃねーか!?やっと知ってる奴に会えたぜ!!」

 うひょーい!とか言いながら、男が長良に近づくのを見て全員が唖然とする。

「いんやぁよ!旭ん家忘れちまってさぁ、洋介ん家は工場の場所変わったみてぇで、行ったら工場でカマボコ作ってやがったからさぁ!!いやぁ、やっと知ってん奴に会ったぜぇ!!」

 長良の肩に腕を回して一気にまくし立てる男に、長良はため息した。

「帰ってきたんすか・・・?相変わらずっすね、伊勢さん」

 長良が言うと、ペケジェーの男・・・伊勢俊一は笑いながら頷いた。

「マフラー作る修行の旅に出て丸3年!!いやぁ、この街も変わんねーなー!!いや変わったか!わっはははははは!!」

「どっちすか?はぁ・・・」

 長良がため息をつく。すると肩に手を回していた伊勢が長良の胸ポケットを見て「あ・・・?」と呟いた。

「なによ、お前が『金剛會』の総長なん?」

 すると、長良は急に真面目な顔になって俊一の腕を退かした。

「そのことっすけど・・・伊勢さん。なんで『南部連合』にケンカを?コトと場合によっちゃあ、オレらも引けないっすから」

 長良が俊一を睨み付けながら言うと、俊一は「へ・・・?ケンカ・・・?なんで・・・?」と言った。

「はぁ!?だ、だって・・・伊勢さんが『NightWalker』のパシリブッ潰して、『頭とタイマン張らせろ』って言ってきたんじゃ・・・!?」

 長良がたずねると、伊勢はしばらくぼーっとしていると、「ちゃうちゃう」と手を横に振った。

「オレっちはただ『南部連合の頭に会わせてくれよ』って頼んだだけだぜ?そしたらペケ子ちゃんのシートに蹴りくれやがったからさぁ・・・教育してやったら『じゃあ今週末に来て下さい』って・・・」

 まさか長良が頭だったとはなぁ〜、と笑う俊一。そして怒りと恥ずかしさに顔を真っ赤に染める長良。そんな長良を見てビビる菅井・・・

「テメェ菅井ー!!」

「ひ、ひぃ・・・!!!!」

 そして長良が菅井を半殺しにし、『NightWalker』と『暴威』のメンバーがそれぞれの頭を担いで帰っていくのを終始見ていた俊一は、長良の肩を叩いた。

「強くなったじゃねーか長良ぁ。まさかお前が総會長とはなぁ・・・」

「い、いえ・・・!旭さん達のお陰ッスよ・・・!!」

 ビッと背筋を伸ばす。見れば他のメンバーもビッとしている。

「てことは・・・やっぱ先代は旭か洋介が頭だったのかい?」

 俊一が嬉しそうにたずねると、長良は首を横に振った。

「いいえ・・・あのお2人は違います」

「え?」

 俊一があっけに取られていると、長良が続けた。

「旭先輩と洋介先輩は現役にはならないで、好きな時にケンカして好きな時に暴走ってたんですよ。そんでも、旭先輩は去年彼女が出来てケンカはほとんどしなくなって、洋介先輩も今では実家の跡継ぎの為に気合い入れて頑張ってんみたいっす」

 長良の説明を聞いていた俊一は、時折「はぁはぁ・・・」とか「へぇ・・・」とか適当に相槌を打っていたが、やがて「そうかぁ」と笑った。

「アイツらも、頑張ってんだな」

「そうっすね・・・カッコいい『不良』すよ・・・」

 長良も頷くと、俊一は後ろにいたメンバー達にも「まぁまぁ座れや」と言ってリラックスさせる。

「長良ぁ。旭ん家の場所かなんかわかる?」

 俊一がたずねると、長良は「わかりますよ」と言って話す。長良はそれをケータイのメモ帳に書き込むと、閉まった。

「さんきゅ、明日行ってみるわ・・・よし!じゃあ久しぶりに会ったこったし!!楽しいトークでもすっかよ!!」

 こうして、長い夜が幕を開けた。









 次の日。

「ねぇ旭さぁん見て見てぇ〜」

「あっくんあっくぅ〜ん♪」

「うっせぇ・・・仕事の邪魔すんじゃねぇよ。ラーメン作ってやんねーぞ?」

 昼を少し過ぎた時間に街道沿いにあるラーメン『真田屋』に、由美、圭太、美春がカウンターに座り、旭が中でラーメンを作っていた。

「だって旭さん、100点よ?100点!」

「そうだよぉ!もっと褒めてあげてよぉ!」

 由美達が騒いでいるのは、昨日も散々見せびらかした日本史の答案用紙だった。

「昨日さんざ褒めたじゃねーか!!」

 旭が叫びながらスープを作っていると、2人はニコニコしながらお構い無しに言った。

「足りない足りない〜」

「もっともっとぉ〜♪」

「あぁもううるせぇな!!すげーな!!100点!!よかったな!!」

 呆れながら怒鳴る旭だが、2人はそんな褒め方でもよろこんだ。2人はキャッキャ言いながら笑いあうと、圭太が今までの話を元に戻した。

「・・・で、昨日からこんな調子で決らなかったですけど・・・最初のツーリングはどこに行きましょうか?」

 圭太がたずねると、旭は茹でている細麺を指で潰して、芯の残り具合を見ながら言った。

「ろくでなしーずのせいで昨日は決まんなかったかんなぁ・・・また近い日に決めるべぇ」

 言いながら、ザルを3つ持ち上げて一気にお湯を切る。

「あ!旭さん酷いわよ!私達はもうろくでなしーずじゃないのよ!?」

「そーだそーだぁ!」

 由美と美春が抗議するが、旭はしれっとした態度で言った。

「お前らまだまだ余裕で現役だぜ?・・・ほら!圭太は真田屋ラーメン醤油!ろくでなし1号はサンパチラーメン!3号はカレーラーメン!!」

 言いながらラーメンを出す。ちなみに1号は由美、2号は凛、3号は美春と昨日喫茶店でうるさかったので真子がそう決めた。

「あぁ!まだ言うのね!?」

「私達頑張ったんだからもうろくでなしーずじゃ無いよぅ!」

 由美と美春が100点の答案を突き付けながら言うが、旭はため息するだけだった。

「ほら由美も美春さんも・・・早く食べなきゃ麺が伸びるよ?」

 言いながら、醤油ラーメンという1番無難でシンプルなラーメンを啜りながら圭太が言うと、由美と美春は慌てて食べはじめた。

「しっかし・・・話戻すけど、最初のツーリングはやっぱそんな遠く行くのはなぁ・・・」

 旭が厨房の中なのにタバコを堂々と吸いながら呟く。

「昨日真子さんが言ってたんですけど、箱根とかどうですかね?県内ですし、観光地ですよ」

 言ってから、圭太は海苔と麺を絡ませて口に運ぶ。

「箱根かぁ・・・確かに楽しそうだなぁ・・・」

「芦ノ湖に行って温泉入って、駅伝コースを使って帰ったりしたら楽しいですよ」

「ああ、芦ノ湖ってネッシーならぬアッシーがいるのよね」

「見てみたいねぇゆーちゃん!」

「・・・ダメだコイツら・・・」

「はい・・・」

 ろくでなしーずに呆れながら2人はため息をつく。今日はいつにもましてレベルが高い。連日の勉強のせいで逆にバカになったのではと2人が考えていた時であった。



 ファンファンファファン!!ファファファファファファン!!



 ウンバー!!ンバンバンババー!!!!




「なにこの音・・・」

 由美がラムエアヘッド型カマボコに穴を開けて遊んでいると、外からバイクのエンジン音が聞こえてきた。

「2台ともなんか今まで聞いたこと無い音だ」

 圭太も聞いていると、旭は耳を澄ませて呟いた。

「はぁん・・・ビーエックス並に甲高い音ぁこの前聞いたペケジェーと同じ・・・ウンバー言ってんのぁ、GS系ツインだべな」

 言いながら店の入り口を見ていると、引き戸が開いた。店内に男2人が入ってきた。

「らっしゃい!!2名様で・・・あ・・・」

 いつもの様に客に声を掛けた旭が固まった。由美達はもちろん、美春ですら見覚えの無い男が、旭の目の前に立っていた。

「よぉ旭!元気してた?」

「お・・・オメェまさか・・・俊一!?」

 旭が名前を叫ぶと、目の前にいる俊一と呼ばれた男は頷いた。

「1週間だけ帰ってきたんだ。久しぶりだな、旭!」

 俊一は笑顔で手を差し出す。すると・・・

「テメェ!ち、ちっと待ってろ・・・!」

 旭はそんな俊一を放って厨房に駆け込んだ。

「あら・・・?久しぶりの再開に涙したかなもしか」

 俊一がニヤニヤしながら待っていると、旭が厨房から飛ぶ勢いで出てきた。その手にはかなり物騒なものが握られていた。

「お・・・おい旭・・・?」

「なんだい俊一君?」

「その・・・手に持ってる奴はなぁに?」

「わかんねーか?・・・包丁って言うんだぜ?」

 言って、旭は包丁を俊一に向けた。良く磨いであるらしくかなり切れ味は良さそうだ。切れ味ゲージMAX。

「テメェ!前に貸した3万!!早く返しやがれコノヤロウ!!」

 言いながら包丁を向けると、俊一は悲鳴を上げた。

「わっ、バカ止めれ!!刺さったら死ねるぞ!?」

「うるっせぇ!死にやがれ!!」

 そして、狭い店内で危険な鬼ごっこが始まった。旭は包丁を振り回し、俊一は必死に逃げていた。

「な・・・美春さん、あの人は・・・?」

 圭太がたずねると、美春は笑いながら首を振った。

「私も知らなぁい♪」

「知らなぁい♪って・・・美春ちゃん、放っておいていいの!?」

 由美がたずねると、美春は「うん!」と言ってカレーの中にライスをブチ込んだ。

「だってあっくん、楽しそう♪」

 美春が嬉しそうに言った。同時に、旭の振り回す包丁が俊一の脇を擦ったのは内緒だ。

 その時、店の入り口で暴れる2人と、そんな状況でラーメンを啜る3人を呆れながら見ている人物に美春が気付いた。

「あ!長良っち!!久しぶりぃ!」

 すると、長良は美春達に近づいていきその場で頭を下げた。

「ご無沙汰してます美春さん!!」

「ご無沙汰ぁ!」

 美春の笑顔を見てもなお頭を下げたままの状態で、次は圭太達の方に向いた。

「はじめまして、自分、旭先輩達の舎弟にして、『南部連合』のトップ、『金剛會』第十四代総會長をしてる長良賢です!」

 言って、圭太と由美と握手した。

「な、『南部連合』・・・?」

 由美が聞き慣れぬ単語に疑問を抱くと、それには気にせず長良は由美を見た。

「いやあ、噂には聞いていましたが・・・!あなたが由美さんですね!?フェックス仕様のゼファーに乗っている素敵なヒトとは!!」

「え・・・あ、まぁ・・・」

 ドカタスタイルでガタイの良い長良のマシンガンのような問い掛けに由美がたじろぐ。そんな長良を見て、美春は2人には聞かれないように長良に耳打ちした。

「・・・へへへぇ♪ダメだよ長良っち、ゆーちゃんは好きな男の子がいるんだからぁ・・・」

 笑顔全開で耳打ちする美春。すると、長良は地獄に叩き落とされたかのような、期待全壊悲しみ全開な顔になった。

「そそそそ・・・そっすか・・・・・・・・・あ、自分これから現場なんで・・・それでは・・・」

 それだけ言って、長良はフラフラと真田屋から出て・・・


 キョカッ!・・・ブバー!!

「うわぁぁぁぁぁぁあ!!!!」


 ウンバー!!ウンバーウンバァバァ!!ブァァァァァ・・・!!



 悲痛の叫びを上げた後、湘〇コールを響かせて去っていった。

「美春ちゃん?なにかあったの?」

 由美が不思議そうに問うと、美春はニコニコしながら言った。

「長良っちドンマイ!!」








 それから30分後・・・由美達はカウンター席に座り、先ほどまで地獄の鬼ごっこをしていた俊一を見ていた。

「ったく・・・コノヤロウがよぉ」

 1人厨房に立ってタバコを吸う旭を尻目に、由美が手を挙げた。

「あの・・・それで、この人は?」

「あぁ、コイツは伊勢俊一。中坊ん時のダチだ」

 旭に面倒臭そうに紹介された俊一は、軽い口取りで自己紹介をはじめた。

「ども!伊勢俊一でっす!特技は溶接!仕事は手曲げマフラー職人!!茨城の方で見習いやってまっす!」

「まぁバカだけど、ヨロシク頼むわ」

 旭がため息をつく。

「ヨロシクね♪私は真田美春だよぉ!」

 美春がニコニコしながら言うと、俊一はニヤニヤしながら美春を見つめた。

「ほぉ〜・・・なるほど」

「ん?どうしたのぉ?」

「いやぁ、長良から聞いてはいたけど・・・可愛いな」

「え?本当!?やったぁ♪」

 俊一の言葉にまるで子供のように喜ぶ美春。

「本当、旭には勿体ないくらいだよ。このリーゼントバカクソ野郎のどこが・・・ゴメンナサイ包丁ハ危険デス・・・」

 旭がまた包丁を取り出したのを見て、俊一は沈黙した。

「僕は中山圭太です。よろしくお願いします」

「私は三笠由美!ご覧の通り天才よ!!」

 続いて2人が挨拶した。由美は長良の目の前に先日のテストの答案を自信満々にぶら下げながら自己紹介した。

「ヨロシク!・・・アレ・・・?」

 笑顔で応えた俊一だったが、すぐに何か違和感を感じたらしい。旭と2人を交互に見比べている。

「どーかしたんか?」

 旭がたずねると、俊一は恐る恐る耳打ちした。

「なんでこんな真っ直ぐな子達が・・・?どういう関係?」

 長らく地元を離れ暫く連絡を取っていなかった俊一は、昔の旭しか知らないのでちんぷんかんぷんだ。あの極悪非道だった旭が、こんな普通な子達とつるんでいるのが全く謎だった。

「まぁ言いたいコトぁわかんけどよ・・・ひとことでいやぁ、オレも丸くなったんよ」

 旭が言うと、「はぇ〜・・・」とか言いながら驚くしかない。

「もしかして、表のFXとゼファーは2人の単車?」

 俊一がたずねると、旭は頷いて笑った。

「おう、オレのいるツーリングチームのメンバーだよ」

「ツーリングチーム?旧車會か?」

 俊一の言葉に旭は首を横に振った。すると美春が俊一に説明をした。

「あっくんと私とけーちゃんとゆーちゃん、はぐっち・・・友達と始めた普通のツーリングチームだよ♪」

 水を一口飲んで、にっこり笑う美春を見て俊一は確かにと思った。そして成長した旭を見て笑った。

「本当・・・大人になったじゃんかよ旭ぁ!!」

「まぁよ・・・」

 そんな褒められた旭は照れ隠しするように店の奥に引っ込んで行った。

「確か俊一さんよね?旭さんとはいつからの付き合いなの?」

 今まで見ているしかなかった由美が俊一に話し掛けると、俊一は「あー、そうだなぁ・・・」と記憶を思い出しながら笑って言った。

「アイツとは、中学ん時に会ったんだ」

 呟いて、懐かしそうに由美達を見つめる。

「中学ってさぁ、他の小学校からも集まるじゃん?アイツとは別の小学校だったんだけど・・・中学に上がる前にはもうみーんなアイツの名前は知ってたなぁ」

「え・・・?やっぱり極悪だったの?」

 由美が言うと、俊一は「本当に知らないんだなぁ」と言って続ける。

「悪ガキでさぁ、小学校ん時にはすでに中坊とやり合って勝ってたコトもあったし、なかなか過激で有名人だったんだ。入学式なんか、短ランにボンタンでさぁ。いきなり先輩にシメられたかと思えば次の日の朝にはすぐにやり返すんだ。いつも暴れてて学校なんか来ないし、来たってケンカしてすぐに強制帰宅させられて・・・補導歴なんか星の数って感じでマッポもマークしてたくらいだ」

「か、過激ですね・・・」

「今の旭さんからは想像出来ないわね・・・」

 圭太と由美が今聞いた昔話と、現在の旭を重ねて驚いた。確かにケンカは強いし見た目も悪っぽいが優しくてバイクに詳しく、面倒見の良い兄のようなイメージの旭からは考えられない悪さだ。

 が、そんな2人を見て俊一は優しげに笑った。

「まぁ、そんな極悪非道な旭君ですが・・・!イジメられてる奴を助けたり普通の奴に手は出さず、同じ世界にいる奴とだけケンカしてた。おまけに・・・ぷぷっ、子猫に餌やったりしててなぁ・・・!」

 途中、耐え切れずに吹き出した俊一。昔、ケンカの後だったのか血だるまの旭が子猫に餌を上げて微笑んでいたのを思い出して笑ってしまった。

 一方由美達ははぁ、と一息。圭太はホッとした顔で由美と顔を見合わせる。

「やっぱり旭さんだね・・・」

「昔も今も、優しい所はカッコいいわよね」

 そんな2人の間に美春も割って入る。

「やっぱりあっくんはあっくんだねぇ♪私も嬉しいよぉ♪」

 そんな3人を見ている俊一も、根は変わっていないコトを再認識してほほえむ。暫く4人で話していると、旭が長ネギの入った段ボールを持って奥から帰ってきた。

「あっくんやっぱりカッコいいねぇ♪」

「旭さん、改めて見直したわ!」

 帰ってくるなりいきなりニコニコしながら笑っている美春と由美を見て、旭の頭に?マークが飛びかった。



 それからしばらくいろいろな話をしていた時だった。

「あ、そうだ!表の赤いサンパチ、あれ旭のだよな!?」

 水を飲んでいた俊一が思い出したかのように大声で言うと、旭はニヤニヤ笑いながら頷いた。

「激シブだべ!?オレのサンパチちゃんよぉ!!」

「あのチャンバーめちゃくちゃ良い音出しそうだよなぁ。見た目もシブいし」

 俊一が言うと、旭もウンウンと満足気に頷いた。

「お前昔っから好きだったもんなぁ、サンパチ!良かったじゃん!!」

 俊一がはっはっはと笑いながら言うと、旭も「あ」と思い出した。

「そーいやオメ、ペケジェー・・・」

「あ?おぉ!!さっき音聞いたかよ!?オレの自慢のペケ子ちゃん!!」

 俊一が言うと、説明を始めた。

「知っての通り・・・オレは昔っからペケ子ちゃんが大好きだった・・・!!で、向こうに行ってしばらくして手に入れてからずーっと乗っているワケだが・・・」

「あぁ・・・オメ昔っからペケ子ペケ子ってうるさかったもんなぁ」

 旭が昔の俊一を思い出しながら呟く。そんな旭を尻目に俊一はまるで芸術家が自分の作品を紹介するように話始めた。

「あの音聞いたろ?マフラーから吐き出される音・・・」

「あぁ、どーしたってペケジェーの出せる音じゃ・・・」

 前に洋介と一緒に聞いた時を思い出しながら呟く。同じ時代の4気筒ツインカムとは言え、ヤマハのXJ400があんなCBX400Fのような甲高い音が出せるワケが無い。しかし悔しいが、実際旭も洋介も聞き間違える程似ていた。

「普段はもっとペケ子ちゃんらしい音のマフラー着けてるけど、見せたくってさぁ・・・オレの曲げた芸術品を!!」

 そこで、俊一はバン!とカウンター席を叩いた。

「如何に綺麗にパイプを曲げられるか・・・集合箇所の位置やテールの長さ跳ね上げ角度、溶接箇所の数から出口の太さまでいろいろ作っては捨て作っては捨てを繰り返した結果生まれたRPM管すなわち『P管』ならぬCBX管略して『B管』!!ビーエックスのような甲高い音をXJで出す為のマフラーだぁ!!」

 わっはっは!と笑いながら豪語する。どうやら相当苦労したらしい。旭は俊一を見て言った。

「お、お前が作ったんか?あの音・・・」

「モチのロンウィズリーだぜブラザー!」

 おどけながら言い切る俊一。そんな俊一を見て、横にいた圭太も驚いた。

「マフラーを作れるんですか・・・?」

「ああ、まだ師匠みたいに単車のパワーを上げるマフラーを作るのは得意じゃないけど、音ならどこにも負けないマフラー作れるぜ」

 堂々と言い張る俊一を見て、圭太は感動の声を上げる。

「凄い!一からパーツを作ってしまうなんて・・・凄いです!」

「はっはっは!お前楽しい奴だなぁ、ありがとう!」圭太の尊敬の眼差しを受けて、俊一はやはり豪快に笑うのであった。

 仲良く話す2人を見ていた旭は、ふと気になるコトをたずねた

「ところで俊一よぉ、お前いつまでこっちにいんのよ?」

 すると由美も「あ、そうだわ!」と俊一を見た。

「もしよかったら、今度私達と一緒に走りましょう!?近い日にチーム結成記念ツーリングをするんだけど、どうかしら!?」

「あ、いいねぇ♪」

 由美の提案に美春も大きく頷いた。圭太も期待の眼差しを向けるが、俊一は少しだけ悲しそうに口を開いた。

「凄い嬉しいんだけど・・・実はオレ、今日中に帰らなきゃいけないんだな」

「えぇ!?」

 俊一の言葉に、皆驚きを隠せない。そんな皆を見て俊一は申し訳なさそうに続けた。

「先週帰ってきて、2週間予定の帰郷だったんだ・・・本当はもっと早く会いたかったんだけど、いろいろあって遅れた・・・すまない」

 俊一が頭を下げる。その顔はつらそうに歪んでいる。

 そんな俊一を見ていた旭は軽くため息を吐いた後、俊一の肩を叩いた。

「なぁ俊一・・・」

 旭の問いかけに、俊一がゆっくりと顔を上げる。目の前には旭が呆れ顔で立っている。俊一はさらに申し訳なくなり、ガックリとうなだれそうになった時だった。

「暗い顔してんじゃねーよ!タコ!!」

 笑顔で俊一の肩を叩いて笑っている旭が目の前にいた。見れば由美や圭太達も笑っている。

「あ・・・あれ?」

 変な状況に陥っているコトは理解しているが、頭がうまく働かない俊一を見て、旭はニカッと笑う。

「ったくよぉ、んなコトで暗くなってんじゃねーよ!今回がダメなら、また次帰ってきた時にでも走ればいいじゃねーか」

 昔だったらワンパンの1つでも入れていただろうと思われるが、目の前にいる旭のその言葉を聞いた俊一はかなり驚いた。

「俊一さん!次に帰ってきたら、私達と一緒に走りましょう!?」

 由美が言うと圭太も笑顔で頷く。

「それにもし僕達が茨城までツーリングに行く時があれば一緒に走れますし」

「あ、けーちゃんそれいいねぇ!」

 美春がワクワクしながらそれに賛同する。そんな中、俊一はこの温かい雰囲気の中で1人置いていかれているコトに気付いた。

「な、なぁ旭ぁ」

「あ?なんよ?」

 俊一は旭の顔を見て、素直に言った。

「お前が変わったワケがわかったぜ・・・!いいダチじゃんかよ!!」

「・・・バァカ、変わってねーべ」

 2人は互いに笑いあった。








「結構長居したなぁ・・・」

 あれから数時間。皆でバイクの話で盛り上がっていたのだが、そろそろ行かねばと俊一が言うと、皆も外に出て見送りに来た。

「これがお前のペケジェーかぁ・・・」

 旭が前にもチラッと見た白いXJを見て呟く。ブチ上げられたロケットカウルにローレルウィンカー。30センチアップハンに60センチの3段シート・・・かなり派手派手な仕様だ。

「で、これが自慢のマフラーだ」

 俊一がニヤリと笑って指さす先には、左出しで長いマフラーが装着されている。エキパイは手曲げ特有のなだらかな曲線を描き、集合箇所から先にかけてかなり細い作りになっている。

「なんだか・・・凄い派手なバイクね・・・」

 由美が3段シートを見ながらポツリと呟く。自分達の周りには決していないタイプの改造を興味深く見つめている。

「ところであっくん・・・なんで『ペケジェー』って呼ぶのぉ?」

 美春がたずねると、圭太もウンウンと首を振る。すると旭はサイドカバーのエンブレムを指差した。

「XJのXをペケって読んでるからペケジェーなんだよ」

「ほぇ〜そんな簡単なことだったんだぁ・・・」

 旭の解説に美春が納得していると、今度は由美が質問した。

「そういえば・・・私がゼファーちゃんに巡り会う前に行ったバイク屋さんにも『XJR400』ってあったけど・・・あれとは型が違うわね・・・」

 ゼファーの形を覚えていなかったのにXJRの形は覚えていたらしい。

 そんな由美に俊一は「ノンノンノン」と言いながら解説を始める。

「あっちは名前は似てても似付かない全く別のバイクだよ。フレームからデザインから何までね」

 どうやらあまりXJRは好きでは無いらしい。俊一は他社が水冷で行く中、空冷エンジンを搭載したことは評価しているしデザインもキライでは無いのだが、ツーリング先で間違えられるのが嫌らしい。

 一方そんなコトを知るはずも無い由美は「そうなのねぇ・・・」と自己完結した。

「ん・・・?」

 皆に自慢の愛車を見られて満足気にしていた俊一が、ふと目の前の単車に目を奪われた。

「このゼファー・・・」

 俊一の目線の先には、FX仕様の由美の愛車があった。が、見ているのはバイクではなく、真っ黒に塗られたメーカー不明の手曲げショート管だった。

「あ、私のゼファーちゃん?カッコいいでしょう!何て言ったって圭太と同じFX仕様よ!!」

 由美が胸を張って威張る。が、俊一は別の点について由美にたずねた。

「由美ちゃん・・・このショート管、どこで手に入れた?」

 真剣な眼差しでたずねる俊一。聞かれた由美は「あぁそれ?」と何でもないように答える。

「買った時からついていたんだけど・・・私にもわからないわ。ただ、すっごく良い音がするのよ!」

 自慢気に説明する。確かにこのゼファーの音はカワサキマニアの真子を始めとして、旭達も認めるくらい良い音を奏でる。俊一はそんなショート管を隅々まで眺める。

「この曲げ具合・・・溶接後の処理・・・出口までの持っていき方・・・スゲーいいマフラーだ・・・!」

 言いながら隅々まで見ていく。職人の性か、集合箇所の溶接やフランジやネジの1本まで隅々まで見ていく。

「見れば見るほど・・・由美ちゃん、よかったら音を聞かせて欲しいんだけど・・・」

 俊一が申し訳なさそうに言うと、由美は「もちろんよ!」と快く頷いた。



 キュルっ!・・・ボファァアン!!


 セル一発で掛かった由美のゼファー。俊一は近所迷惑を考えたが、由美にある注文をした。

「ゴメン由美ちゃん・・・ゆっくりアクセルを開けて、7000回転くらいまで上げれるかな?」

 すると由美はなんだかよくわからないが、とりあえず頷いた後、アクセルをゆっくり開けていく。



 ボファァァァァァァァア!!


 軽く吹けていく。回転数は現在4000回転辺りだ。が、ここからがこのマフラーの本当の声であることを由美達は知っている。そのままさらにアクセルを開ける。


 コァァァァァァァア!!!!!!・・・ァァァァァァァァア・・・!!


 きっちり7000回転まで回してからアクセルを戻す。マフラーからは排気音が収まり、エンジンからはカムチェーンノイズが響く。

「あぁ・・・なんて素晴らしい音なのゼファーちゃん!!」

 自分の愛車の音を聞いてまるで親バカのようにゼファーに語り掛ける由美。皆も改めて聞いた音に関心していると、突如俊一が拍車をし始めた。

「凄い良い音だ・・・!なんてこった、こんなマフラーが存在すんのかよ・・・!!」

 言いながら、ゼファーのショート管を見つめる。思っていた以上の音を聞けたらしく、かなり満足そうだ。

「マフラーてのは、エンジンの『声』を伝える大事なパーツ・・・出来次第でエンジンを生かすも殺すも自由だ・・・が、このショート管・・・こんなスゲーマフラー、師匠のマフラー意外にこんなスゲー『声』を出せるマフラーがあるだなんて・・・!」

 信じられないとでも言いたげな俊一。そんな俊一を見て満足そうな由美は自分が褒められているわけでは無いのに何故かふんぞり返っている。

「いやぁ・・・最後にヤバイ物見れてよかったよ・・・ますますツーリングに行きたくなるぜ!」

 はしゃぎながら己の愛車に跨がる俊一。そんな俊一を見て旭が声を掛ける。

「次はいつ頃帰ってくんだよ?」

「あぁ、未定だけど今年からは少し余裕も取れるし、夏にはまた来るさ!なんか用事あったら、さっき教えた番号に連絡くれよ!次会うときはこんな受け狙いマフラーじゃなくて、ペケ子ちゃんの本当の『声』聴かせてやっからさ!!」

「帰り道気ィつけろよなぁ!」

「また遊ぼうねぇ♪」

「次会うとき、楽しみにしてるわよ!」

「僕達も、そちらに行けるように頑張ります!」

 4人の激励を受けた俊一は、愛車と同色のコルクをかぶり、エンジンに火を入れると笑った。

「なぁ、最後にチーム名教えてちょ?」

「あ・・・そういえばまだ言ってなかったっけぇ・・・」

 旭が呟くと、由美が笑顔で堂々とその名を口にした。








 ファァァァァァア!!ファンファン!!

 夜道を走るXJ400。それを操る伊勢俊一はフッ、と笑った。

「『旧車物語』・・・か。楽しそうじゃねーか旭・・・次会う時まで、楽しみにしてるぜ!!」

 嬉しそうに叫ぶと、アクセルを全開にして突っ走る。新しいマフラーは、あのゼファーのマフラー並みの物を作ってみせると心に誓って・・・








 皆が帰った店内で、旭と美春がまだ雑談していた。

「ねぇあっくん・・・」

「あ?どーかしたんかよ?」

 タバコをくゆらせていた旭が美春の呼び掛けに答えると、美春が笑顔で言った。

「あっくんは、いつだってあっくんだねぇ♪」

「はぁ?意味わかんねーこと言ってんじゃねーよ」

 旭が言うと、美春はそれでも「エヘヘ」と笑った。

「今日はまたあっくんの昔話を聞けたのだぁ♪」

 が、美春のその言葉を聞いて、旭は次こそ包丁で俊一の息の根を止めるコトを誓った。

 


今回でなんと34章突破です!

ご感想ご指摘ご意見、お待ちしております!

それでは!



P.S

今回い登場した団体名称は実在しません。何か不都合がありましたらご連絡ください。それでは。

3気筒


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― 新着の感想 ―
[良い点] 文章が簡潔でたいへん読みやすい。 [気になる点] バイクの描写が少ないので、知らない人にはイメージがつきにくいかも。 [一言] 面白すぎる。やばいです。
2020/07/22 14:14 マングース
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