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旧車物語  作者: 3気筒
18/71

第18章 ハイウェイバトル!?

あとがきは登場人物紹介です!

かくして、2人のレースが始まろうとしていた。

「ルールはさっき話したとーり!こっから国道の入り口まで!!先に行ったら勝ちだ!」

旭が再度説明をしている。

「な、なんでレースになるんですか・・・?」

圭太がワケがわからないと言った感じで旭に聞くと、美春が横からニコニコしながら肩を叩く。

「けーちゃん・・・?無自覚ほど怖いものは無いよ?」

「は、はぁ。一応しっかりしてるつもりなんですけど・・・」

「わかってないなぁ〜ゆーちゃん大変だぁ」

ガックリため息をつく美春。それでも圭太はなぜこんなレースが行われることになったのかわかっていない。

一方、レースに出る2人は旭の説明を聞くのに集中していた。由美は相手のバイクを盗み見る。



カワサキが70年代に生んだじゃじゃ馬、マッハシリーズ。その中でも500SSマッハⅢをしのぐリッターあたり130馬力を誇る350SSマッハⅡの後継マシン。400SSマッハS3。パワーは初期型350の45馬力に劣る42馬力だが、排気量が上がったためトルクがアップ、車軸も伸びたりと足回りも洗練された400マッハは単なるエンジンパワーと装備増加による車重以外は全ての面で勝っていると言って過言ではない。

「で、勝負になったワケだが・・・」

その時、洋介が真子のマッハの目の前に来て話しはじめる。

「由美ちゃんは今日初めて高速走った子なんだけどさぁ、君はよく走るのか?」

いつもの変な態度ではなく、普通に話し掛けている。対して真子は

「ふむ、毎週2回は走るようにしているけれど・・・高速経験がないの?」

少し驚いたように真子が由美の方を見て言う。

「あぁ、そうなんだよ〜だから負けちゃうかも知んないね、むしろ無理だよ、うんうん」

なぜか空を見ながら1人納得して話す洋介。なんか嬉しそうだ。

「そうなの・・・」

真子が自分の愛車と由美の愛車を交互に見てつぶやく。真子は自分が手塩に掛けて組んだこのマッハが、見た感じ外装とショート管以外ノーマルの由美のマシンに負けるわけが無いと心の中で断言していた。

だが、ここに来て彼女は迷い始めた。これは、女と女の意地を賭けたレースだ。自分は走り慣れている。マシンも完調、エンジンも綺麗に回る。しかし相手は高速初走行のほぼノーマルゼファー。これでは正々堂々とは言い難い。むしろ弱いものイジメだ。

「・・・てあげる・・・」

「へ?」

真子がなにかつぶやいたが、由美には聞こえなかった。そんな由美を見て、真子は大声で言った。

「ハンデつけてあげるって言ったのよ・・・!!」

「え・・・!?」

真子の言葉に、由美は驚く。先ほど旭の話した計画に無かった話しだ。

「考えてみたら、私のマッハが初心者の乗るゼファーに負けるわけ無いのよ。だから、あなたがスタートして30秒待ってからスタートしてあげるって言ったのよ!?」

「むっ・・・」

さすがの由美もこの上から目線の発言にカチンと来た。負けず嫌いの由美は悔しくなり真子にそんなものいらないと言おうとすると、旭が「まぁまぁ」となだめる。

「あちらさんがそれでいいならいいじゃねーか。こちとら、走りだした時から有利なんだからよ」

旭がこそこそ耳打ちする。

「わかったわ・・・!」

由美は真子のそのルールでいいと伝えると、気合いを入れるためと緊張を解すため屈伸を始める。

「姉貴!ブッチギレよ!?」

「お姉ちゃん・・・」

凛と紗耶香が後ろから姉の応援をする。

「じゃあ、俺達もみんな由美ちゃんについていくから準備すんべぇ」

旭が言うと、皆自分の愛車に向かって歩いていく。

「ちなみに俺と洋介はちゃーんとそっちが30秒遅れでスタートするか見てなきゃならんから、しばらく待機すんわ」

「・・・いいわよ」

真子がぶっきらぼうに返事する。

「じゃあ決まりな」

そう言うと旭は由美達になにかこそこそ話ている。まぁ、なにかレースのアドバイスだろうと真子達は余裕を持って見ていた。

「・・・つーことで、がんばれよ」

言って旭は洋介の方に戻って行った。

「じゃあ、スタートすんぞ!10秒前!!」

旭がカウントを出す。由美達が1人ずつエンジンに火を入れていく。周りから旧車のエンジン音聴きたさに野次馬が集まり始める。

「5、4、3、2、1、」カウントが2になった瞬間、由美かギヤを1に入れた。

「GO!!」


コァァァアアア!!!!

スタートと同時に、由美のゼファー改FXの直管から爆音が轟く。全開だ。後から圭太や美春達が続く。

「音だけはいいわね」

真子が遠ざかっていく由美のゼファーを見つめる。

「音だけかい?」

「クラッチ繋ぐのは下手だし、急に全開にしすぎよ。半クラの時間が長いからウィリーはしなかったけど、危ないわね。飛ばなければいいけれど・・・」

話にならない、しかし心配している感じの真子を見て旭は少し胸が痛くなった。元々この計画は実行したくなかったが、まっとうなレースとなれば、負けるとわかってても由美はムキになるだろう。それで事故をしてもらいたくなくて取った作戦だが、真子の真っ直ぐすぎる心を見て少し罪悪感が生まれた。

「そろそろ30秒前だ!」

洋介が騒いでいる。時計を見るとあと14秒だ。

「よし、圭太君に良いところを見せるためにも、がんばるわよ!!」

「俺達3人でトップは総なめだぜ!」

「り、凛お姉ちゃん・・・」

姉妹は仲良く話し合っている。それを横目に旭達も愛車に跨がる。

「じゃあ、スタート10秒前!!」

旭のカウントが始まる。周りには先ほどの野次馬がマッハやサンパチ、ヨンフォアの音を今か今かと待ち構える。しかし・・・


しゃこここここ・・・しゃこここここ・・・しゃこここここ・・・ぷすん。


1台キックしても掛からないマシンが1台。それはなんと真子のマッハだった。

「姉貴!どうしたんだよ!!」

「くそ!なぜ掛からないの!?」

進んでいくカウントに焦って一心不乱にキックする真子。

「3、2、1・・・」

「・・・この!!」

真子が苛立ってキックするが掛からない。それを見ていた旭がカウントを止めた。

「じゃあ、先に行ってんわ!!!」



カーンカーン!!!カァァァァァアン!!!



「よ、がんばりな?」



フォンフォン!!!ドォォォォオ!!!!


旭と洋介は一足先に加速して行った。それを悔しそうに見ながら、凛が姉に駆け寄る。

「どうしたんだよ姉貴!?さっきまでバッキバキに決まってたじゃんかよぉ!?」

凛は姉のマッハを見る。一見変わったところはなにも無い。キックも降りている。

ちなみに彼女、メカのことはあまり詳しくない。ただ適当に怪しそうなところを探すだけだ。

「お姉ちゃん!」

紗耶香がマシンに駆け寄ると、真っ先にマフラーの出口に軽く触れる。

「1番、2番、3番・・・ちゃんとさっきの余熱もあるし・・・」

意外なことに、彼女がこの中で1番メカに詳しい。マフラーエンドの温度は3本揃っている。先ほどまでは綺麗に回っていたと言うことだ。

「・・・!?お姉ちゃん!キック止めて!!」

すると、紗耶香は突然プラグを見る。すると・・・

「嘘・・・!?」

「どうしたんだよ紗耶香!?」

凛がわからないと言う風に訪ねる。

「普段のお姉ちゃんなら絶対に気付いてた・・・プラグが半分だけ抜けてるの!3本共全部!!」

「な・・・!?」

言って真子は軽くキックを下ろす。

「確かに・・・圧縮が無い・・・!」

キックは僅かだかいつもより軽く、片手でも簡単に降りてしまった。

「あいつら・・・!」

真子の目に怒りの炎が宿る。その目はまるで怒れる獅子そのものだ。

「そうまでして圭太君を渡したくないか・・・だが舐めるな!私のマッハが負けるわけが無いのよ!!」

再度3本のプラグを挿し直すと、エンジンは呆気なく生き返った。

「待ってなさい!ぶち抜いてあげるから!!」


ガチャガチャ・・・!!


クァァン!!クァァン!!!ギャワァァァアン!!

カワサキ特有のメカノイズの混じったマッハの爆音が辺りに轟く。辺りは白煙だらけになり、白煙が消えた後、そこには3台のマッハの姿は無かった。








「上手くいったのかしら〜?」

後ろを振り向きながら美春がつぶやく。

現在、ベイブリッジ中間あたりを先頭を由美が。2番手が圭太。少し遅れて翔子と美春が続く。

「それにしても、もう由美さん見えないです・・・!」

翔子が前を見ながら美春に叫ぶ。翔子は愛車、CB350Fourにムチを打って飛ばすが、先頭2台についていけない。唸るエンジン音と振動、道路の継ぎ目に気を付けながら頑張って走っている。

「ゆーちゃん、意外と速いねぇ」

美春がのんびりしながら翔子に返す。ちなみに、美春のサンパチは本気で走ればそこそこ速い仕様だが、後から来る旭を待つためにスピードを落としている。

「ゆーちゃん大丈夫かなぁ?」

「多分、圭太さんがいるから大丈夫・・・・・・かな?」

「だよねぇ・・・」

2人は圭太のことを思い出してため息をした。全く、無意識で鈍感とはこんなに恐ろしいのかと思い知った2人である。




「楽しいーーー!!!」


ゴァァァァァァァァア!!!!!

一方、ベイブリッジを渡りきる寸前の位置まで来ていた由美のテンションは最高潮に達していた。

「速い速い!あんな女のマッハなんか目じゃないわ!!」


あはははは!!とか笑いながらゼファー改FXを走らせる由美。

「由美・・・!少しペース落として!!」

その後ろを、FXに乗る圭太が追い掛ける。しかし・・・

「は、速い・・・」

全く追い付けないワケではないが、パワー差がデカイためなかなか差が縮まらない。

橋を渡り切ると、下り坂になっている。圭太が後ろから見ていると、由美は下りに入ってさらにスピードを上げた。

「速い速い速い〜!!」

きゃっきゃと笑いながら加速する由美。しかし・・・

「危ない・・・!」

圭太が叫ぶ。その先には・・・

「右カーブ!?」

由美も慌てて減速する。目の前に迫る白い壁に恐怖しながらも懸命にエンジンブレーキやフロント・リアを効かせてコーナーに侵入する。

「よし・・・!行ける!!」

そう思ったその時・・・



ズリっ・・・・!!!



「由美ーーーーーー!!!」

由美のゼファーのリアタイヤが継ぎ目に取られて一瞬浮いた。目の前は白い壁。速度は現在100前後。絶望的だ。

しかし・・・


ギョギョギョギョギョギョ・・・・!!!!

「!?」

跳ねたリアタイヤは着地した後、まだ回転を続けていた。そしてそのまま空転、横滑り。壁にそって流れていく。

「嘘・・・!?」

由美はドリフトしてコーナーをクリアした。その後の姿勢の直し方も綺麗に出来ていた。

「由美ーー!!」

圭太が目の前のゼファーに並んだ。スピードを落としたゼファーに乗る由美の顔を覗き込む。

「由美!大丈・・・!?」

圭太が言い掛けて黙ってしまった。由美は目を見開いて呆然としていた。

「け、けいたぁ〜」

ガチガチガチと震えながら振り向く由美。圭太の顔を見て安堵したのか、泣きそうな顔である。

「こわかったぁ・・・」

そして泣いた。

圭太はため息をついて

「とりあえず、安全運転。ほら、前見て」

「うん・・・」

半泣きの由美の横を、圭太はゆっくり走った。出口はもう近い。






「大丈夫かね〜由美ちゃんらは」

旭と洋介もベイブリッジの中間手前に着いた。結構なスピードで飛ばしているのでこの分ならそんなに遅れずに追い付けそうだ。

「しっかし・・・!あのマッハ姉妹大丈夫かぁ?」

洋介が旭と並びながら走る。

「しっかたねーべ!あんなんと高速でヨーイドンしたらオレらだって勝てねーよ!!」

旭は苦笑いで洋介に叫ぶ。峠なら、トルクがあってなおかつそのトルクを補える幅広いギヤ比のサンパチやホイールベースの短いヨンフォアでも戦えるかも知れないが、あのパッと見ただけであんなにイジッているマッハにストレート勝負など、分が悪すぎるどころの話ではない。

「しかし、プラグを抜くなんてよく考えたなー」

あっはっはと笑いながら洋介が言う。

実は旭と洋介は真子のマッハを観察していたとき、すでにプラグを半分だけ抜いていたのだ。あれなら圧縮もスッカスッカになりすぎることもプラグコードが浮きすぎるということも無い。さらに言うなら、マッハ系のエンジンはフィンが高いので、真横や真上から見ただけだとプラグがちゃんと挿入されているか非常に分かりにくい車種なのであでる。

「あれじゃキックしたって火しか飛ばねーし。焦ってたから今もまだ気付いてねーんじゃねーか?」

洋介が笑いながら言う。しかし・・・

「いんや、そーでもねーみてーよ?」

「・・・?・・・!?」

旭にバックミラーを見ろと手でやられたので洋介も見てみると、後ろから凄い勢いで1台のバイクが追い上げてきた。

「嘘だべ・・・!?」

洋介が度肝を抜かれたと言わんばかりの表情でミラーを見ている。

「ありゃ、本当にじゃじゃ馬だな・・・!」

旭も舌打ちしながら後ろを見る。



マッハが、すぐそこまで来ていたのだ。


「まずお前等からだ・・・!」

真子が恨むように呟く。マッハの特技であり、当時の同クラスのバイクの中でもずば抜けた性能であるストレートでの加速性能を十二分に発揮した走りで前の2台に迫る。

「お、おい・・・!速ぇぞ!!」

洋介がミラーで後方を見ながら旭に叫ぶ。

「でーじょぶだ・・・いくら速くたってこんだけ差がありゃあ・・・!」

しかし、旭は舌打ちしてサンパチのギヤを落とす。

「勝てるとは思えねーが、いっちょう張ってみますか!!」

旭のGT380はショットガンチャンバーからマッハに負けない白煙と爆音を発生させながら加速していく。GT380の『RAM AIR SYSTEM』を搭載した2スト3気筒エンジンは、よく『おとなしい性格の2スト3気筒』と言われているが、実際はマッハの後継車であるKHよりも鋭い吹け上がりを見せる。それに旭の積極的なまでのライディングが合わさってかなり速いペースで走ることが出来る。しかし・・・

「チィっ・・・!」

軽く舌打ちをする。確かにKHをしのぐレスポンスの良さや旭のライディングテクニックがあっても、勝てる要素があるのは峠やワインディング。しかしここは直線、ストレートなのだ。

「バイバイ・・・!」

ギャァァァア・・・!!

横をマッハが通り越して行く。

「チッ!!」

目の前に躍り出た、GT380と同じ2スト3気筒マシンの白煙とオイルを浴びて、旭は舌打ちした。距離はぐんぐん離れていく。

「旭!」

洋介がケツについてくる。洋介のヨンフォアは機動力は良いが加速、最高速はこの中では翔子のCB350Fourに次いで悪い。かなり最悪な組み合わせだ。

「まず2人・・・!!」

真子が勝ち誇ったかのように1人つぶやく。

ちなみに、後の2人。凛と紗耶香は旭達のさらに後方にいる。2人の仕様の関係で真子ほど飛ばせないのだ。ちなみに凛がコーナーなどが得意なワインディング仕様。紗耶香のは250のノーマル仕様だ。

「姉貴・・・!負けんなよ・・・!」

凛は紗耶香のペースに合わせながら走る。そして紗耶香も姉の勝利を願いつつ、事故はしないで欲しいな、と思った。




「美春さん!なにか後ろから・・・!」

同じ頃、橋の出口付近を走っていた翔子が隣を走る美春に叫ぶ。

「あれ、あっくんじゃない・・・!!」

バックミラーを覗いた美春も嫌な予感を感じた。まさか旭が抜かれるなど考えてもいなかった。が、よくよく考えれば、サンパチがマッハに高速バトルで勝てる訳が無い。美春は最初はそう思い直した。しかし

「なら!あっくんの敵を取らなきゃ!」

美春はやはり、旭のことしか考えていなかった。

しかし、エンジンの仕様は旭と同じ。旭が勝てなかった相手に勝てるとは思っていなかった。ならば・・・

「問題は、どうやって格好良く負けるか・・・よね♪」

語尾に締まりが無い独り言をつぶやいた。

すると目の前に先ほど由美が危うく壁の餌食になるところだった右コーナーが見えた。そして大型トラックが1台。そこで少し考えて・・・

「しーちゃん!無理に付いてこなくていいからね!」「え・・・!?」

驚く翔子を1人置いて行き美春は残りのストレートを全力で駆けてく。しかし、すでに真子のマッハは翔子を捉えていた。

「3人目・・・!」

真子は間髪入れずに翔子のすぐ横を抜けていく。

「きゃ・・・!!」

翔子が為す術無く追い抜かれる。

「・・・!!」

美春はそれをミラーの片隅で捉えたが、すぐに目の前のコーナーに集中する。後ろにマッハが着いた。

「4人目行くわよ!」

マッハがさらに加速する。しかし

「トラック・・・!?」

真子は先のコーナーと目の前のトラックと、そのすぐ後ろにいる美春を見て驚く。なぜなら、ブレーキをまだ掛けていないのだ。

目の前のトラックがコーナー手間で減速のためにブレーキを踏む。そして美春も踏むハズなのだが・・・

「げ、減速しない!?」

真子が驚きの声を上げる。真子はすでにコーナーへの侵入の為に減速していた。しかし、2ストの為にエンジンブレーキは使えず、前後輪のブレーキで減速しつつトラックの外側、つまりアウトに進路修正した。スピードを落とさず、立ち上がりを重視した結果だ。しかし目の前の美春はトラックの真後ろにいて減速しない。徐々に前のトラックとの距離が縮まる。真子はもうダメだと思った。しかし。


グァァァァァァァ!!バリバリバリバリ!

ここにきて一気に美春のGT380が減速体制に入る。そして強引に車体をインに向ける。

「いっけぇぇえ!」

美春のサンパチがトラックをインから抜いた。突然現れた美春と目のあったトラックのドライバーが驚いた。が、美春はそのままコーナーに侵入。真子のマッハもコーナーに入ったが未だアウト側。そのままコーナリングを続けてコーナー出口でようやく前に出る。目の前には・・・

「・・・なんでよ!?」

美春が先頭を走っていた。美春はあのままトラックのインから前に出ていたのだ。

「このぉぉぉお!」

真子が絶叫しながらストレートで思い切り加速。途中フロントが浮き上がりそうだったがなんとかこらえて美春のサンパチを追い抜いた。

「4人目・・・!どう!?思い知ったかしら!?」

マッハの加速力を最大限に使いぶち抜いた真子が美春を見ると、なんと美春は笑顔で手を振っている。

「なっ・・・!?」

1人頭の中で考える。

(あの女がもし私のマッハより高性能なバイクに乗っていたら、私は負けていた・・・!?)

しかしすぐに頭を振った。あれはまぐれだ。あのマッハより重たいサンパチが私以上の速度であのトラックの内側を『狙って』回れるハズがないと。

しかし、美春のGT380には旭以上にある特徴があった。それは足回りである。

美春のGT380はフロント周りがGTシリーズの最高峰、GT750後期のフロントフォーク及びダブルディスク。リアはGT550のスイングアームにドラムブレーキはノーマルワイヤー式からロッド式に変更されている。どの足回りも現代のバイクに比べたら性能は下だが、当時のバイク、それも中型車に装着すればかなりのストッピング能力を発揮する。

そして・・・

「美春さーん!」

翔子がCB350Fourにムチを入れて追い付いた。

「だ、大丈夫ですかぁ!?」

泣き顔で叫ぶ翔子。後ろから見ていた翔子からは、美春がトラックに並んだ瞬間、コーナーの奥に消えた瞬間「転倒した・・・!?」と思ったらしい。心配しながらかつ、泣きながら叫ぶ翔子に、美春は笑顔でこう答えた。

「女の子はね、強いんだよ♪」

そう。美春はまさに気合いと根性と愛で曲がり切ったのだ。恐るべしだ。

「格好いい負け方・・・だったかなぁ?」

美春は1人呟く。そして、今になって自分が凄く怖いことをしたんだと思うと急に怖くなった。偶然上手くいったものの、失敗していればコンクリートのシミに化けていたかも知れない。その時・・・

「美春ー!」

後方から自分と同じサウンドを響かしながら、旭と洋介が追い付いてきた。

「美春!大丈夫だったか?」

旭が美春の隣に並ぶと、さっきまで自分の中にあった恐怖がどこかに吹っ飛んだ。

「大丈夫だよぉ!あっくん♪」

そして美春は、自分には彼がいればなんでも出来ると再確認した。





一方、真子はぐんぐん加速していく。前には何台かバイクがいるが、あれは圭太や由美では無い。2人はどこまで先に行っているのか。考えて止めた。

「どこまで走ったって、私のマッハからは逃げられないわよ圭太君!!」

言って、真子はハイウェイを飛ばした。


その先に2人がいないとも知らずに・・・


登場人物紹介


赤城 真子

職業 大学1年生

誕生日 4月22日(現在19歳)

髪型 ロング(黒)

身長 170㎝

愛車 KAWASAKI 400SS MACHⅡ改

家族構成 父・母・凛(妹)・ 紗耶香(妹)

好きなもの 圭太・姉妹・マッハシリーズ・カストロールの香り 

嫌いなもの チャラチャラした奴・軽い男・汚いことをすること

マッハ3姉妹の長女。曲がったことが大嫌いな性格でいつも正々堂々をモットーにしているという『硬派カワサキ』を体現している。しかし圭太の事になると我を忘れてしまうことも多々あり。悩みはよくへんな男に絡まれること。マッハのことが大好きでマッハに乗れることを誇りに思っている。ストレート勝負やゼロヨンなどの高速バトルを得意とする。


赤城 凛

職業 高校2年生

誕生日 5月22日(現在17歳)

髪型 長いポニーテール(黒)

身長 167㎝

愛車 KAWASAKI 400SS MACHⅡ改

家族構成 父・母・真子(姉)・紗耶香(妹)

好きなもの 姉妹・マッハ・強い奴、速い奴・プロレス

嫌いなもの ナヨナヨした奴・理論的に物を言う奴・お化け、ホラー・小説・メカ

マッハ3姉妹の次女。口調が男のように乱暴なので可愛さのかけらもないが、顔は真子の妹なだけあって可愛い。が、本人はそう言われるとキレる。自分の愛車のメンテナンスは他の姉妹にまかせっきりのためメカの事には疎いが、峠などコーナーを攻めさせたら姉妹で1番上手い。紗耶香とは双子であるが、性格は真逆で凶暴なので紗耶香は苦労している。



登場人物紹介


赤城 紗耶香

職業 高校2年生

誕生日 5月22日(現在17歳)

髪型 短めのツインテール(黒)

身長 166㎝

愛車 KAWASAKI 250SS MAHCⅠ

家族構成 父・母・真子(姉)・凛(姉)

好きなもの 姉妹・バイク全般・平和・長距離ツーリング・バイクイジリ

嫌いなもの もめ事、ケンカ・お酒・煙草

マッハ3姉妹の三女。その性格は姉妹の中で1番おとなしく平和的。愛車のマッハは唯一の250ccノーマル。ノーマル仕様ということでなめられてしまいがちだが、実は全て紗耶香が自分で完璧にオーバーホールしたマシンなので、ヘタな改造をした族車より断然速いので、絡まれたらすぐ全力で逃げる。姉妹のマシンのメンテはすべて彼女が見ている。凛とは双子であるため顔はすごく似ているが性格は真逆。


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