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旧車物語  作者: 3気筒
17/71

第17章 トリプル姉妹登場!

今回はギャグ多めです。それではどうぞ~

「え・・・!?」

 圭太は驚いた。それもその筈、少し知っているとはいえいきなり女の子に抱きつかれたのだ。驚かない方がどうかしている。

 しかし、圭太の驚き以上に怒りのパロメーターを上げている人間がいた。由美だ。

「ちょっと!!圭太になにしてるの!?」

 いきなり現れていきなり圭太に抱きついた少女(敵)に由美が激怒した。

「圭太君・・・会いたかったわ・・・」

 しかし、目の前の女狐はそんな由美を完全無視。恐らく彼女の視線には圭太1人しか写っていないだろう。

「ちょっと真子さん!放して・・・!」

 圭太が慌てて彼女、真子を引き剥がす。しかし真子と呼ばれた少女は離れはしたものの依然として圭太しか見えていない。

「圭太君!久しぶりね!」

「は、はぁ・・・」

 もう今すぐ死んでも後悔しなさそうなくらいまぶしい笑顔の真子に、少し戸惑う。すると、自分の後ろからなんかものすごく恐ろしい空気を感じた。振り返るとそこには

「け〜い〜た〜!?」

 般若みたいな顔をした由美が怒り心頭中だった。

「ちょっと圭太!なに鼻の下伸ばしてるのよ!?それに・・・!」

 由美は右人差し指を真子に突き付けて

「あんた!いきなり現れてなにやってんのよ!?」

 キレた。

「な、なんで由美ちゃんあんなキレてんのよ・・・?」

 洋介が聞くと、美春が片手で洋介に耳打ちする。それを聞いて洋介は「なるへそね」と納得した。

「なにって、圭太君に抱きついてたのよ」

 見て分からない?とでも言いたげに真子が腕を広げる。さらに

「あなたこそ、人様に指を差すなんて失礼じゃない?」

 火種に油を注ぐようなことを言う。

「な、なによ!人にいきなり抱きつくのは失礼じゃないの!?」

「そ、そうですよ!あなたと圭太さんの関係はわかりませんけど、やりすぎです!」

 由美の言葉を翔子が援護する。確かに第三者である由美や翔子達から見れば、いきなり真子が圭太に抱きついたという事実しかわからない。

「私と圭太君の関係は、そうねぇ・・・」

 真子はあごに手を当てて少し考えてから

「運命の人よ」

 と答えた。

「う、運命って・・・!?」

「言葉のまんまよ。彼は私と運命の赤い糸で結ばれてるの」

 真子が自信満々に頷く。瞬間、

「圭太!!どーゆーこと!?」

「ちょ、落ち着いてよ由美!」

 暴走する由美を圭太がなだめる。

「けーちゃん?どーゆー関係なの?」

 美春が珍しく落ち着いて理由を問う。圭太は少し頭を掻きながら「実は・・・」と話始めた。




 事は3日前。圭太は1人で地元を走っていた。理由は姉の茶子に頼まれたおつかいと、借りていた本を市立図書館に返すためである。

「さーて、帰ろうかな」

 全ての用事を終わらせて、ついでに新しい本も借りたので、さて帰るかと帰路につくと、途中信号待ちで前に2台のバイクがいた。1台は真子のバイクで、もう1台はゴリラみたいなイカツイ男の乗ったビックスクーターだった。なにか話しているみたいだが、圭太はさほど気にせず今日新しく借りた本を家に帰ってゆっくり読むことしか考えていなかった。つまりぼーっとしていたのだ。

 なので、気付いたら2台の間に割って入ってしまっていた。2台はいきなり現れた圭太のFXに驚く。

「おいてめえ!!」

 ゴリラが圭太に怒鳴りつけた。いきなり怒鳴られた圭太は驚いてゴリラと真子を交互に見合う。そこで初めて自分のしてしまった行為が恐ろしいことだったのだと理解する。

「おめぇ俺のナンパの邪魔しよーてのかよ?勇気あんなぁ小僧?」

 そういってゴリラは圭太のバイクを見る。すると・・・

「青のFX・・・!?」

 顔色を真っ青にしたゴリラは信号も赤だというのにビックスクーターのアクセルを全開にして逃走した。

「・・・あれ?」

 同じく圭太も驚いた。圭太は彼がナンパしていたのではなく、真子がゴリラの彼女だと思っていたので、そこに割って入って行ったことに対して怒鳴られたのかと思っていた。しかし、蓋を開けてみるとただのナンパだったらしい。

 ちなみになぜゴリラが圭太のFXを見るなり逃走したのかと言うと、旭が地元のヤンキー繋がりの人間に「青いFXに乗ってんヤツ、普通のヤツだけどオレんダチだから手ぇ出したら殺すぞ」と話を回していた。まさかこんな所で役に立つとは・・・。(ちなみに圭太はその話を知らない)

 そして、真子から見ると、しつこくナンパしてくる人外から、自分を守ってくれた騎士ナイトのように見えてしまった。

「あの・・・」

 唖然とする圭太に真子が話し掛ける。

「は、はい・・・?」

 未だ唖然としていた圭太だが、真子に呼ばれて我に返って振り向いた。

(この子・・・制服着てるってことは高校生?しかもヤンキー臭くない・・・可愛いし・・・)

 真子がわずかコンマ3秒で思考を巡らす。とたん、顔を赤くして黙り込んでしまう。しかしそんな彼女の考えなど鈍感人間である圭太に解るワケも無く、信号は無情にも青になった。

「あ、信号青になりましたよ?それじゃあ・・・」

「ま、待って!」

 突如、叫びを上げて圭太を呼び止める。なんだろう?と思って圭太が振り返ると、真子が少しモジモジしながらこちらを見ている。少し怖い。

「あの、今のお礼がしたいから、よかったら喫茶店にでも・・・」

 しかし真子が言い切る前に万人が認める鈍感人間である圭太はあっさり

「いえ、お構い無く」

 と言って走り去ってしまった。すげー。

「あ、待って!」

 いきなり意表を突かれた真子。信号はすでに赤になるための点滅と言う名のカウントダウンを始めた。

「このまま、諦められないわよ!!」

 ガチャン!とギヤを入れ、ロケットスタート。信号はギリギリ間に合った。

「はぁー疲れた。早く家に帰って本でも・・・」

「待ちなさーーい!!!」圭太が走っていると、後方からさっきの女性の叫びが聞こえた気がした。バックミラーで確認すると

「ん・・・?えぇっ!?」

 後ろから物凄い勢いで加速してくるバイクが1台。そして白煙。圭太が驚いているうちに気付いたら横に並ばれていた。

「待って!話を聞いて!2分だけでもいい!!」

「わ、わかりましたから、とりあえずあそこのコンビニに入りましょう!!」

 さすがの圭太も彼女の必死の追い上げ&なぜか顔に恐怖して頷くしかなかった。



 コンビニの駐車場に入り、圭太と真子はエンジンを切った。2人はとりあえずバイクから降りた。

「あの、さっきは助けてくれてありがとうね・・・」

 真子は頭を下げた。実際、あそこで圭太が現われていなくても相手のバイクなど真子の愛車の敵では無かっただろうが。

「いえ・・・僕なにもしていないんですけど・・・」

 確かに、圭太はただぼーっと走っていて偶然真ん中に割って入ってしまっただけだ。特別なことなどなにもしていない。

「そんなこと無いわよ?あなた名前は?」

「な、中山圭太です」

「圭太君、ね」

 脳内に名前インプット完了。

「私の名前は赤城真子。年は今年で19歳、趣味はバイクと占い。ちなみにフリーよ」

 無駄に細かい説明を終えた真子が圭太を見ると、圭太は自分の後ろにあるバイクを興味深げに見ていた。

「どう?私のバイク」

 真子に言われて、圭太ははっ、となった。そう言えば自己紹介あんまり聞いてなかったな・・・。

「す、凄いですね・・・」

 圭太は見ながら頷く。真っ白なタンクに緑色のレインボーライン、KAWASAKIのロゴ。マフラーは右2本、左1本出しのチャンバー。あたりに立ちこめるカストロールの甘い香り・・・。

「今日時間あるかしら?こんなところじゃなんだし、どこかお店にでも・・・」

 バイクを観察していた圭太に真子が話し掛けてくる。はっとなって圭太はこの後のスケジュールを思い出す・・・。本読みたい・・・。

「あ、僕ちょっと用事がありまして・・・」

「あらそう・・・」

 残念そうに、本当の本当に残念そうに真子がうなだれる。しかし、そんなことで諦めるほど真子は生易しくなかった。

「じ、じゃあ今度暇な時に連絡でもちょうだい!」

 そう言って、真子は1枚の紙キレに自分の携帯の番号を書いて渡した。

「は、はぁ・・・」

 圭太は紙を受け取り、とりあえずポケットにしまった。

「じ、じゃあ僕そろそろ・・・」

「うん♪またね、圭太君!」

 真子は最後にこれ以上無いくらいの笑顔で圭太を見送った。

「ふふ、相模ナンバーってことはこの辺りに住んでるのね・・・」

 言って、真子は自分の愛車のシートに寄りかかる。後部シートに手を乗せて愛車に語り掛ける。

「これは運命よ・・・!絶対に圭太君と仲良くなってみせるわ!私に追い付けないものなんて無いわよ!」

 そして、愛車に火を入れる。白と緑のレインボーラインのカワサキ MACH2に。








「・・・というわけなんだ」

 上の説明を8割以上省略した圭太なりの説明が終わると、由美は「むぅ・・・!」と悔しそうに膨れている。

「・・・」

 由美はもう一度真子を見る。間違いない、女の感が警告している・・・真子も圭太を狙ってる・・・!

「おーい姉貴」

 すると突然、真子の後ろから2人の少女が歩いてきた。1人は上はレザーで下はジーンズ。長い髪をポニーテールにした気の強そうなボーイッシュな女の子。もう1人は服装は同じだが髪型は短いツインテール。しかし見るからにやさしそうな、それでいていじめたくなるような・・・気弱そうなオーラ全開である。2人ともどことなく顔が真子に似ているので恐らく姉妹だ。

「凛、紗耶香。どうした?」

 真子が少女達に振り向く。凛と呼ばれた少女はつまんなそうに頭の後ろで手を組ながら真子を見る。

「そんな奴らに構ってねーで早く給油して走り行こうぜ?退屈だぜ〜」

 女の欠片も無い、完璧な男口調で喋る。こちらをつまらなそうな顔で見ている。

「あ、あの・・・姉さん、この人達も少し困ってるみたいだし・・・その・・・」

 たいして、由美達を気遣ってか、もう1人の少女が申し訳なさそうに言う。しかし由美が目線を合わせると、とたんに真子の背中に隠れてしまった。

「凛・・・圭太君は私の運命の人よ?つまり私の未来の旦那だ」

「ちょっと待てーー!!!」

 今の真子の発言に、しばらく黙っていた由美がとうとうキレた。そりゃもう睨んだだけでカラスの一個大隊を粉砕する勢いで。

「なに勝手言ってるのよ!圭太はあなたの運命のなんたらじゃないわよ!!」

 由美がすんごい形相でまくしたてる。なぜか関係無い紗耶香が「あぅあぅ・・・」と言って気の強い凛の背中に隠れた。

「いいや、圭太君は私の物だ」

「違うの!圭太は私の所有物なんだから!誰にも渡さないわよ!」

「あの、僕は物ですか・・・?」

 圭太がおそるおそるツッコミを入れるが、もはや誰も聞く耳持たず。由美と真子は互いに睨み合っていると・・・

「じゃあ、バイクで決めたらいいんじゃない?」

 美春が場の空気とは180度違う笑顔で間に入った。

「2人ともバイク乗ってるし、それなら後腐れないでしょ?けーちゃんが困ってるから早く決めようよぉ」

 ニコニコしながら言う美春に、真子はふっと鼻で笑った。

「良いだろう・・・私のマッハはそんじょそこらの旧車とはワケが違うぞ?」

 真子が自信満々に自分の愛車を指差す。しかしそこには・・・・・・

「3人ともマッハってすげーなぁ。おぅ洋介ぇ、見ろよこれ。BEETの当時モンの3本チャンバーだぜ!?」

「コイツ、フルトラ化して!?プラグがダイナマイトって・・・シブすぎだぜ!」

 話に飽きていた旭と洋介が舐めるようにして真子のマッハを見ていた。

「コラァ!!!!」

 真子がツッコミつつ旭達に近づいてきた。

「人のバイクをじろじろ見るな!触るな!私のマッハが汚くなる!!」

 怒涛の怒り具合だ。

「なんだよー、優しいのは圭太にだけかよー」

「そーだぜー?悲しくなるぜー?」

 汚れ扱いされた旭と洋介がイジケはじめる。2人がボケるとはまた珍しい。

「うるさい!私はリーゼントとか見るからに頭の悪そうな人間に興味なんて無いの!!」

 真子がぶちギレると、その背後から・・・美春(覚醒状態)が現れた。

「ふふふふふ・・・あっくんの悪口はいけないんだよぉ・・・?」

 笑顔なのにもの凄く怖い。翔子と紗耶香がタイミング良く「ひぃ・・・!」と言ってそれぞれ、由美の背後と凛の背後に隠れた。

「なんだてめぇ?頭イカレてんのか?」

 そんな美春を見て凛が煽る。

「壊しちゃうわよ・・・?ふふふふふ♪」

「なんだよ?やろうってのか?」

 2人は臨戦体制に入ってしまった。由美と真子も依然として睨み合っている。

「どーすんべ旭?」

「どーすんかな?」

 洋介と旭は腕を組んでこの状況をいかに打破するか考えていた。

 辺りは一触即発。些細な火種でも大爆発間違い無しだ。そんな時・・・

「み、みんな止めてよ!ケンカはダメだって!」

 この事件の被害者でありさらに原因でもある圭太が睨み合う由美と真子の間に立つ。

「よくわかんないけどケンカしたらダメ!僕だって怒るぞ!?」

 圭太が叫ぶと、2人はとりあえず互いに睨み合うのを止めた。その流れで美春も正気に戻り、凛も舌打ちしながら引き下がる。

「お、圭太ぁ。良くやった」

 旭が後ろから圭太の肩を叩いた。そして、

「じゃあ、決着はレースで付けようや」

 旭がまた話をもとに戻した。

「ルールは簡単。この先の高速突っ走ってもと来た国道の入り口に入るまでに前にいたヤツが勝ち・・・どうよ?勝ったら圭太は晴れてアンタのモンだ」

 旭が由美と圭太の肩を叩きながら真子に提案する。その提案に真子はふっ、と笑った。

「いいわよ?私のマッハが負けるワケがない」

 自信満々に言う真子。対して由美は・・・

「ちょっと旭さん・・・!!」

 旭と、ついでに圭太をぐいーっと後ろに引っ張って行った。真子に聞かれないくらいの位置についてから耳打ちする。

「ちょっと・・・!私レースなんてやったことないわよ!?」

 さっきまで強気だった由美だが、さすがにレースとなると話は違う。しかも今日初めて走った高速道路だ。しかし旭は

「心配すんな。洋介と2人で魔法使ったからよ・・・?」

 まるで新しいイタズラでも思いついた子供のようにニヤニヤしながら言う。そして作戦を伝える。

「・・・と言うわけだ」

「・・・わかったわ!」

「・・・」

 旭の提案に、乗り気になったのか由美はグッと立ち上がって真子に向かって歩いていく。

「レース、するの?しないの?」

「いいわ!受けて立つわよ!私のゼファーちゃんが負けるわけ無いもの!」

 先ほどまでの弱気はどこへやら。由美は自信満々に言い放つ。

「ついに始まるデスレース!自信たっぷり満タンの真子ちゃんのマッハに、由美ちゃんはどう戦うのか!?次号をお楽しみに!」

「おい美春。オメーなにやってんだ?」


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