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旧車物語  作者: 3気筒
16/71

第16章 楽しいツーリング!?

幼稚な文章ですが、どうぞ!

 ある少女(というのも限界の歳だが)が、部屋にこもって1人心の中で悪態をついていた。


『全く、最近の奴らはなんだ?

 ただ便利なだけでビックスクーターに乗ったりアメリカンに乗ったり・・・。旧車に乗れば旧車會ばかり!私達のバイクはそんな風に見られたくない。

 そもそも、変なバイクに乗ってるヤツはウザイくらい私に声を掛けてくるのに、なんで普通のバイク乗りは私に声を掛けないのか!?旧車だから!?なんでだ!?

 旧車乗りはチャラいし、ビクスク、アメリカンもウザイし。普通のバイク乗りには引かれるし・・・。

 でも・・・

 あの日会った、FXの彼・・・

 会った瞬間わかった!これは運命だって!可愛い顔して私達と同じカワサキ旧車。しかもドノーマル。運転も丁寧でいいじゃない?彼こそ現代の紳士よ!よし、また道で検問張って待つしかないわね』


 そう言って、彼女は1枚の写真を取り出す。写真は、背景にバイクが1台。車種はFXのノーマルでカラーは青。そしてライダーであろう人間は高校の制服を着た美少年。

「待ってなさい!必ず私の物にするんだから!」

 おーっほっほっほ!!と1人部屋の中で高笑いする小女(というのも限界の歳だが)の声を、夕食が出来たから知らせに来た妹が外でびびりながら聞いていたのは隠れた不幸だ。





「へっくし!」

 時は同じ頃。圭太は家の車庫で愛車を洗車していた。「大丈夫?風邪?」

 由美が横から心配する。ちなみに今日「バイク洗車しましょう!やっぱり綺麗にしないとね!もちろん圭太の家で!!」と無理やり決めたのも由美である。

「いや、大丈夫。なんか人に見られてる気がした」

 圭太が後ろを振り返るが、当然そこには誰もいない。両親はまだ帰ってきてないし、姉はいまは懸賞に飽きて新たな趣味を模索中らしく、部屋でなにかやっている。

「ホラーなこと言ってないで、さっさと洗車終わらすわよ」

 由美はそういうと、また圭太のFXを磨きはじめた。ちなみにゼファーの方はすでに洗車が終わっている。

「明日は朝早いのよ!ガンガン磨かなきゃ!!」

 言いながらフロントのフェンダーを磨く由美。明日は休日なので、旭や翔子達と横浜の方にツーリングに行く予定になっている。

「何時出発だっけ?」

 顔が写り込むくらい磨きあげたブルーのタンクを覗き込みながら圭太が聞く。

「旭さんの家に朝10時よ。翔子ちゃんとも2週間ぶりかぁ」

 磨き終えた箇所をもう一度、磨き忘れが無いか確認して由美が立ち上がった。

 翔子と前回別れてから2週間。たったの2週間だったが、由美は翔子に会える日を楽しみにしていた。それは圭太も一緒だし、もちろん翔子もだ。

「同じ県内だけど、横浜って行ったことないのよね!中華街見て海見て船を見て!やることいっぱいあるわよ!」

 うれしそうに立ち上がる由美を尻目に、圭太はトラブルが起こらないでくれと願った。






 そして翌日。

「おっはよーゆーちゃん!けーちゃん!」

 旭の住むアパート、『雪風荘』の駐車場についた2人を美春がいつものテンションで出迎えた。2人のGT380も、いつもはオイルで汚れているリア周りを含めビカビカに輝いている。

「後は翔子ちゃんだけか」

 旭が腕を組んで立っている。今日は珍しくサングラスをまだ掛けていなかった。そして・・・

「早く来ないかなー、翔子ちゃーん!」

 横でなにやら変なテンションで洋介がくねくねしてた。

「お前黙れよ」

 旭が呆れながら言うと、洋介は少し怒り気味で旭に訴える。

「翔子ちゃんは俺の心の癒しなんだよ!天使なんだよ!」

「そーか、黙れ」

 涼しい顔でスルーした。

「まぁまぁ、旭さんも洋介さんも落ち着いてよね」

 由美が輪に加わり、3人は今日のルートの確認をはじめた。

「今日は快晴だし、楽しく走ろーね♪」

「そうですね」

 美春と圭太も笑いながら話していると、駐車場に1台のバイクがゆっくりと入ってきた。

「あ、翔子ちゃん!!」

 由美がバイクに歩み寄るとライダーがヘルメットのゴーグルを上にずらした。

「由美さん!久しぶりです!!」

 愛車、CB350Fourから降りてきた翔子に抱きつく由美。翔子は2週間という短い期間だけしか間を開けていなかったのにどこか変わった気がする。以前のどこかオロオロしていたり人を恐がっていたあの少女が、今では胸を張って堂々と愛車から降り立った。

「元気してた!?大丈夫!?」

 同い年なのに、まるで姉のように心配する由美を見て、翔子は笑顔で由美に頷いた。

「はい。以前よりも全然大丈夫です!」

「しーちゃん!久しぶり!!」

 美春も翔子に抱きつく。3人はみな笑顔で再開を喜んだ。

 ちなみに、どさくさに紛れて翔子にダイブしようとした洋介は旭と美春の奇跡のツープラトンにより地面に伏していた。

「じゃあ、みんなそろったことだし出発すっか!」

 しばらく皆と話していたが、旭が言いながらサンパチのエンジンに火を入れると、それが合図になって皆もそれぞれの愛車に跨がりエンジンを掛ける。

「ルートは国道を上って、大黒埠頭のサービスエリアまで行って休憩。そしたらまた戻って横浜に行く感じな!」

 1度大黒埠頭に寄る理由は昼食を取るというのもあるが、それ以外にも土日祝日には旧車やハーレー、クルマもたくさん集まるのでそれを見るのも目的らしい。ちなみにルートを決めたのは旭と由美である。

「今日はカメラのバッテリーも予備持ってきましたから、たくさん撮れますよ!」

 翔子もうれしそうに言うとカバンを見せる。小さなカバンにはカメラやバッテリー、フィルムやらなんやらがたくさん入っていた。

「よし、それじゃ出っ発すんぞ!」

 こうして、横浜ツーリング大会(命名由美)が開始された。


 街道と国道を結ぶ道路を、6台もの旧車が走り抜けていく。先頭は旭のGT380で後から美春、圭太、由美、翔子、そして後ろは洋介である。途中2回信号に引っ掛かったが、それはもう目立っていた。特に先頭と1番後ろのバイクが。

 しばらく走り、国道に出た。ここから先はひたすらに真っ直ぐ走るだけで高速に乗れる。道も広いので走りながら何回か順番を替えたりしながら走っている。

「なんかすごい迫力のある集団だね」

 圭太が隣を走る由美に叫ぶ。ちなみに今先頭は洋介になっていて、自分達が1番後ろになっている。

「こういう、大人数のツーリングって初めてだけどみんなのバイクはやっぱりカッコいいわね!」

 由美は愛車、ゼファー改FX仕様を軽快に走らせている。巡行速度は60キロ台。本当はもっと飛ばしたいが下道のためそうも行かない。6台はのんびりと走っていく。

 途中、信号で旭、洋介、翔子が先に行ってしまい残り3人が信号に引っ掛かってしまったが、なんとか高速入り口で追い付けた。

 それぞれが料金所を通過すると渋滞になるので、出発前に旭が皆から預かった高速代をいっぺんに払い、スムーズに進む。

「ここからは由美ちゃん達は後から、俺達が先頭走るからゆっくりでいいから付いてきな」

 旭が入り口のすぐ目の前の路肩でみんなを一旦止めて確認する。由美達は高速道路初走行なので、最初は慣れてもらうため、また危ないのでゆっくり付いてくるようにと注意してからまた発進した。順番は最初とだいたい同じで先頭は旭、後ろは洋介だ。

「これが高速道路かぁ!」

 圭太が普段走る道とは全く違う高速道路をよく見る。歩道が無く、左には白い壁が、右には反対車線を猛スピードで走っていくトラックがいる。電光掲示板には今の高速の交通情報が書かれている。自分たちが行くとこでは無い場所で渋滞が起きている。興味深げに見ていたが、やがて電光掲示板は後ろに流れていき、あの情報も自分たちには関係ないので気にしなかった。制限速度80キロ。

「け、圭太ぁ・・・!」

 見ると、由美がこちらを見ている。自分もだが、初めての高速道路に緊張しているのか。なにか声を掛けようとしたその時、自分の横を何かが抜いていった。

「え・・・?」

 抜いていったのは由美だった。直管マフラーから爆音をとどろかせながらあっという間に先頭に並んだ。

「楽しーー!!」

 由美は叫びながら旭に並ぶ。旭も圭太も「ダメだこりゃ」といろいろな意味で諦めた。

 しかし、放っておくわけにも行かないので旭がとりあえずスピードを落とすように手でジェスチャーを送るとしぶしぶ引き下がったが、たまにギヤを落として甲高い直管サウンドを響かせた。

「圭太!翔子ちゃん!すごい楽しいよ!?」

 由美がまた並んで叫んでくる。しかし翔子は転ばないように走るのが精一杯で、圭太も余裕がなかったので頷く程度に終わらせた。

 さらに進むと、大きな橋が現れた。横浜ベイブリッジである。

「みんなー!海だよ!海!!」

 由美がうれしそうにはしゃぐ。下には横浜の工場地帯と海。遠くを見れば横浜の街並みやビッグタンカーを見ることもできる。

「写真撮りたかったですねぇ」

 翔子が残念そうに言う。そういえば翔子のバイクはこの中で1番古いバイクなのに、ものすごく安定して走れている。どうやら直安静は抜群らしい。

 橋も終盤に差し掛かると、旭が左にウィンカーを出した。看板を見ればもう大黒埠頭の入り口らしい。皆もウィンカーを出して左に寄る。

 入り口に入ると道路がものすごく狭くなった。さらにずーっと先まで右コーナーになっている。

「渦巻きみたいな道路だ」

 圭太が1人感想を漏らす。延々走っていると、「大黒パーキングエリア この先右側」とある。旭も右にウィンカーを出したので皆一斉に右へ。やっと大黒埠頭パーキングエリアに到着した。




「着いたぁ!!!!」

 由美が到着するなり叫んだ。圭太もその隣にバイクを停める。

「私、最後の方で目が回るかと思ったわよぉ」

 笑いながら近づいてくる由美。歩き方がおかしいのは多分長時間バイクに乗っていたからだろう。

「みんな大丈夫かぁ?」

 旭が皆に聞こえるように聞く。皆余裕の表情なので安心した。

「いや、しかし混んでるなぁおい」

 洋介が駐車場を見ると、いろいろな種類のバイクやクルマが所狭しと集まっている。まだ昼前だというのに珍しいことだ。

「でも早く場所が取れたからよかったよぉ」

 美春がほっと一息付く。6台のバイクは駐車場に並ぶとやはり迫力がある。

「あっちにでっかい集団がいる!!」

 由美が指差す先は、黒い鉄の塊が何十台もの数いる。ライダーはだいたい革ジャンかジーンズジャケット。渋いおじさま方が多数。

「ありゃ、どっかのハーレーのオーナーズクラブだろ」

 旭の言うとうり、そこはほとんどがハーレーだった。

「でけぇなぁ」

 洋介が自分の愛車、ヨンフォアと見比べて呆れた。中に1台サイドカーの着いたハーレーがいるが、もはや化け物である。

「あちらは?」

 翔子の視線の先にも集団がいた。

「ありゃあ、多分トライアンフだな」

 洋介が言う。カフェレーサー仕様のトライアンフを遠目に、「俺のフォアのかぜってー速ぇぞ」と言っていた。

 他にも、クルマの集団が多数いたり、ただの休日家族サービスで来ただけの親子連れなどで溢れかえっていた。

「とりあえずなんか食うか」

 旭の提案に皆賛成し、サービスエリアの食堂に入っていく。中も混んでいたが、運良く窓際の6人座れる席が空いたのでそこに陣取り、昼食を調達してきた。

「翔子ちゃん、サンゴちゃんの調子はどう?」

 翔子と並んでご飯を食べている由美が訪ねると、翔子はスパゲッティをフォークで巻きながら「そうですね」と前置きする。

「最初は怖かったんですけど、落ち着いて走ってたらだんだん楽しくなってました。まぁ、ちょっと皆さんに置いていかれそうにもなりましたが」

 翔子が言うと、排気量こそ違うがベースは同じエンジンに乗る洋介が間に入ってきた。

「ついていけなそうな時に、頑張ってアクセル開けすぎないように注意な?」

「なんでですか?」

 翔子が聞くと、少しうれしそうに顔を赤くして説明する。

「みんなそうなんだけど、俺たちのバイクは古いからオイルクーラーが無ぇんだ。急にアクセルのON、OFFしたり長時間全開にするとエンジンがついていけなくなって最終的にブローするからさ」

 洋介の説明を聞いて、旭、美春以外の3人はなるほどと感心した。さすがに車屋さん。

「やっぱり気を付けなきゃね」

 由美は先ほどの高速道路での自分を思い返す。急にアクセルを開けて全開にしたりギヤを上げ低回転に落としたりまた上げたりとを繰り返した。

「次から気を付けなきゃ」

 1人何か反省したらしい。「じゃあ、私食べ終わったから先にバイク見てるねぇ♪」

 美春が食器を下げて席を立った。

「じゃあ、1時まで自由行動にするから1時にはバイクんところな」

 旭の言葉を合図に、皆一様に自由時間になった。

「圭太!翔子ちゃん!いっしょに見て回りましょう!?」

 由美が圭太と翔子を捕まえた。

「なんだかいいよなぁ、こーゆーのもよぉ」

 洋介が旭に話し掛ける。

「昔は鬼とか悪魔とか足が臭いとか言われていたお前が、あんな普通な子らとつるむなんざ思ってもみなかったぜ」

 洋介は旭を中学時代から知っているので最初は驚いていたらしい。

「んな昔の話忘れたわい。ついでに足は昔っから今まで、いたって清潔だ」

「ケンカすりゃリーゼントひとつ崩さずに先輩ともタイマン張ってたモンが、今じゃあいつらのアニキみてぇだかんな、はっはっは!!」

 腹を抱えて笑う洋介を、旭は無視した。

「美春ちゃんに会ってから変わったよな?ケンカもなんも止めて更生してよ?」

「アイツにゃマジで感謝してんよ」

 旭は駐車場で自分のサンパチの前でしゃがんでいる美春を見る。

「そんなお前も、妹はまだまだ認められねーんか?」

 洋介が口にした瞬間、旭がサングラス越しに睨み付ける。

「るせーぞ?何が言いてぇ?」

 しかし、そんな旭に一歩も引かず洋介は対峙する。

「ま、わからねーでもねーけどよ」

 そう言うと、2人は黙ってしまった。



 時間が過ぎるのは早い。もう1時になってしまった。

「おう、みんな集まってんか?」

 旭が確認を取ると、皆揃っていた。

「んじゃあそろそろ出発すんけど、ゆっくりついて来ぉよな」

 そういうと、旭はサンパチに火を入れようと跨がった。すると




 ギョワァアン!ギョワァアン!!


 入り口から、3台のバイクが入ってきた。

「何!?凄い音!」

 由美達が驚いていると、その3台がこちらに向かって走ってきた。

「あ・・・!」

 突然、圭太がなにか思い出したかのように叫ぶ。

「もしかして・・・」

「どうしたの圭太?」

「圭太さん?」

 由美と翔子が圭太に話し掛けるが、圭太が答える前に3台はすぐ脇に停まった。旭と美春のサンパチと同等か、それ以上の白煙を撒き散らしてエンジンを切る。

「ありゃあ、400マッハじゃねーか?」

 旭が見ていると、ライダーが3人降りてこちらに向かってきた。先頭の1人がカフェヘルを脱いだ。

「女がマッハだぁ・・・?マジかよ?」

 洋介も驚きを隠せない。

「・・・真子さんだ」

「え!?圭太知ってるの!?」

 圭太の発言に、由美は驚きを隠せない。圭太が真子と呼んだ人は、長髪のロングヘアー、革の上下のライダースジャケットはスタイルの良さをうかがわせる。顔だちも抜群だ。

「・・・?圭太君・・・!?」

 向こうも気付いたらしい。ものすごく驚いている。が、次の瞬間・・・。

「え・・・?」

「あ・・・!?」

 真子が圭太に抱きついていた。


 空気が、凍り付いた。

 


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