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旧車物語  作者: 3気筒
14/71

第14章 優しい日常

遅れてしまい申し訳ないです汗

またこれから復活していくので宜しくお願いします。

今回は文字数少なめです汗

 旭がサンパチで出ていってしばらく。部屋の片付けももう終盤に入っていた。

 飲み散らかして床にこぼれた酒は良く拭き、匂いは消臭剤でごまかした。空き缶も捨てて、散らかした物も綺麗に整頓したので昨日の小宴会の前よりも綺麗になっていた。

「よし、こんな感じで大丈夫よね!」

 由美が額の汗を拭いながら部屋を見渡す。もう昨日の残骸は愚か、ホコリ1つ落ちていない床を見て大満足である。

「でも、昨日どれだけ飲んだの?すごい数の空き缶だけど・・・」

 先ほど風呂から帰ってきた圭太がゴミ袋の中を見て呆れる。中は空き缶が無数に投げ込まれていて、端には日本酒の瓶や鬼殺しの紙パックなんかも分別されて置かれている。

「昨日翔子ちゃん凄かったわよねぇ・・・」

「あっくんとけーちゃん撃沈させて・・・」

「参ったよ本当に・・・」

 3人は昨日のことを思い出しながら唸る。しかし当の本人は記憶が無いので皆を見ながら不思議そうにしている。

「しかし、旭さん。ガソリンとタバコ買いに行っただけなのに・・・遅いなぁ・・・」

 圭太が時計に目をやると、旭が出てから40分近く経っている。ガソリンスタンドもコンビニも街道にあるのだが、街道までバイクで2分もかからない距離である。



 ぴろり〜♪


 どこからかまぬけな電子音が鳴りだした。

「あ、わたしのケータイだ」

 どうやら美春のケータイらしい。パカッと開いてメールを確認する。

「あっくん遅れるってぇ」

「なんで?」

 由美が訪ねるとケータイの文面を見せてきた。

「『洋介のバカに見つかった。なかなか解放してもらえないから少し遅れる』・・・誰?」

「羽黒洋介君。通称はぐっち!!」

 美春がVサインしながら答える。

「え?羽黒さんですか・・・?」

「しーちゃん知ってるの?」

「はい、昨日部品を分けてもらった人です」

 翔子が言うと、美春は「そうか、はぐっちからもらったのかぁ」と納得した。

「はぐっちが相手じゃ、あっくんなかなか帰って来れないよ」

 美春が諦めたようにつぶやいた。

「どんな人なのよ・・・」

 美春が聞くと、少し考えた後笑いながら答えた。

「あっくんの悪友だね、うん。たまにケンカとかしてたりするんだけど、バイクの話とかいろんなことで話が合うから仲は良いんだよ」

 美春の説明に「なるほど〜・・・」と納得する圭太。

「じゃあ旭さんが帰ってこない間、私達はなにしてようかしら・・・」

「とりあえずお話しよう!そうしよう!」

 美春の妙なテンションでの意見に、皆不満もないので昨日グダグタに終わった座談会の続きをしながら待つコトにした。

「じゃあお題はなんにしよー?」

「そういえば、翔子ちゃん。結局昨日は無断外泊しちゃったみたいだけど大丈夫なの?」

 由美が心配そうに聞くと、困ったような顔をしながら翔子が頬を掻く。

「どうでしょうね・・・多分大丈夫だと思います」

「そういえば、サンゴちゃんはお母さんからもらったのよねぇ?」

 昨日、駐車場で聞いた話を思い出して由美がたずねると、翔子はうつむきながらも肯定した。

「じゃあ大丈夫よ!お母さんも昔バイクに乗っていたんなら、きっと理解してくれるわよ」

「・・・」

 由美の言葉に、翔子は黙ってしまう。

「どうかしたの?」

 圭太が心配して声をかけると、翔子はマジメな顔付になって皆を見た。

「実は、まだ皆さんに話してないことがあります」

「なに?」

「実は・・・」

 翔子は昨日軽トラで旭に話したコトを皆にも全て話した。最初は皆驚いていたが次第に話は翔子の義母と義兄の話になっていった。

「ろくでもない親ね!」

 今までおとなしく聞いていた由美が爆発した。あまりの怒りを圭太がなだめた。

「翔子ちゃん!もし親がなんか言ってたら、私も説得するからなにかあったら言ってね!!」

「は、はい・・・」

 心配そうな顔で由美が励ましていると、翔子は肩を叩かれた。見ると美春がいつものなんか間抜けた顔とは違う、マジメな顔をしていた。

「しーちゃん。今日は早く帰った方がいいかもしれないよ」

「え?なんでよ美春ちゃん?」

 由美がたずねると、圭太も後ろでうなずいている。

「確かに、美春さんが言うとおりだよ由美。多分このあとツーリングなんか行ったら多分翔子ちゃん、多分ものすごく怒られると思うよ」

「う・・・」

「とりあえずしーちゃんのバイクが壊れちゃったから、治してたら遅れたってことにすれば多分大丈夫よ」

 美春がマジメに考えながら言う。美春がマジメな時は凄く珍しいので由美も「むぐぐ・・・」と言ってしぶしぶ納得した。

「じゃあせめて翔子ちゃんを送っていきましょうよ!それなら大丈夫でしょ!?」

 由美の提案に、皆も賛成した。

「皆さん・・・本当に迷惑ばかりかけてしまってすみません・・・!」

 翔子が半泣きで皆に向かっていると、美春が頭を撫でた。

「よく泣くねぇ・・・私の胸の中で泣いてもいいよ?」

「え・・・いや、それは大丈夫でふがっ!!」

 断ろうとしたが、美春の方が早かった。両腕で翔子の頭をぎゅっと胸に抱き締める。

「〜っ!!」

「遠慮しなくていいよぉ〜?」

 なんかめちゃくちゃ押しつけられて、苦しいからてじたばた暴れている翔子を美春はわざとなのか天然なのか相変わらずわからないがさらに力を入れて押しつけている。

 そんな2人を見ながら、由美と圭太は今日これからのことを話していた。

「じゃあ、今日は旭さんが帰ってきたら翔子ちゃんを送っていきましょ?」

「そうだね、そうしよう。ところでさ」

「うん?」

「アレ、なんとかしなくていいの?」

 圭太が指差す先は、相変わらず抱き締めている美春と、先ほどまで暴れていたが今では腕もだらんと伸び切って動かなくなった瀕死の翔子がいた。

「み、美春ちゃん!翔子ちゃんが危ない!!」

「あ、本当だ・・・」

 言われて翔子を解放した美春が翔子を見ると、翔子はヨダレを垂らしながら気絶していた。後に翔子はこの時のことを「お母さんが川の向こうから来るなって叫んでた」と語ったが、今はまだ夢の中である。





 死にそうになっている翔子を皆が必死になって起こそうとしている丁度その時、旭はまだガソリンスタンドにいた。が・・・

「ンだこの野郎?」

「あぁ?テメーこそたわけてんじゃねーぞコラァ?」

 あたりは一触即発の雰囲気で、旭と洋介が睨み合っている。

「オレのサンパチちゃんのどこがダサいってぇ?テメぇ」

「何度でも言ってやんよ?イマドキ鬼ハンなんて、現役のガキくれぇしか付けねぇってんだよ?」

「じゃあテメーのヨンフォアなんだよ?マー坊ハンだぁ?コスプレかよコノヤロウ?」

「うるせーナ!ヨンフォアはこのスタイルがイチバンなんだよダボが!」

「あ?なに?そのゲロみてぇなクッセェ音出すマフラーとコスプレが?だからオメェのヨンフォアは鉄クズにしか見えねンだよ」

「あ!?テメーのサンパチぁ下痢便の音だべ!?キタネェから寄ンな!!」

 先ほどからずっとこんな感じで店の前でケンカしている。互いにの顔がぶつかる寸前まで近付けてガンをくれながら互いに言い合っているため、店員も怖くて近付けないのである。



 ガァァァァァア!!プシャー!!!!



「「アァっ!?」」

 目の前の街道をブローオフバルブ音を響かせながら、1台のスポーツカーが走り抜けていった。

「んだぁ、あのいかにも走り屋みてぇなクルマはよ?」

 旭がクルマにしっかりガン飛ばしながらぼやくと、仕事柄クルマにも詳しい洋介が説明を入れた。

「ありゃ、日産のシルビアだべ?たしかイチゴーとか言うヤツ」

 エアロパーツなどで分かりにくいが、車種はS15シルビアであることは間違いない。

「ダセェよな。どーせ四つ輪乗るんならジャパンとかヨンメリがイチバンだろーがよ」

「あぁ、ナナイチマークⅡとかソアラとかもな」

 旭の言葉に洋介が同意すると

「お、なんだよ。テメー話わかんじゃねーか。ナナイチとかならやっば竹槍にデッパでよ」

「ジャパンとかヨンメリならシャコタンバーフェン、ホイールはマークⅠ〜Ⅲだろ?」

「そーそー!洋介、テメーなかなかやるな!!」

「おうよ!こーやって見てると、お前の単車もシブイよなぁ」

「おー、オメェのフォアもなかなか・・・」

 なんやかんやでさっきと全く違う話で盛り上がっている。先程まで互いの愛車をバカにしあっていたのに今ではそんなコトは忘れて互いに誉めあっている。ようするにコイツらバカだ。

 先程とは全く違う、楽しげに話し合う2人を遠目に見ながらガソリンスタンドの店員は「早く帰れよ・・・」と思いながら立ち尽くしていた。




 場所は戻って旭の家。皆の必死の呼び掛けによってなんとか蘇生した翔子が泣きながら由美に抱きついていた。

「死ぬかと思ったです・・・」

「ほら、もう泣かないで?」

「しーちゃん!泣くなら私の胸で・・・」

「今度やったら確実に死んじゃいますって・・・」

 圭太が美春にツッコミを入れて、翔子も泣き止んだ。それにしてもよく泣くヤツだ。

「じゃあ、そろそろあっくんに連絡してみるよ。さすがにもうすぐ1時間くらい経つし・・・」

 美春が携帯で旭に電話を掛けようとしたその時、外からエンジン音が聞こえてきた。

「やっと旭さん帰ってきたわ!」

 由美が待ちくたびれたように言う。甲高いトリプルの音に混じってもう1台、「ガロォン!ガロォン!」というエンジン音が聞こえた。

「あ、はぐっちも来たみたい」

 美春がうれしそうに笑う。外で2台が少し吹かした後エンジン音が消え、やがて部屋に旭と洋介が入ってきた。

「わりぃ、遅れたわ」

「美春ちゃん久しぶりー!」

 入るなり謝る旭と、入るなり美春に元気良く挨拶する洋介。

「はぐっち久しぶり!」

 美春もわーっと手を上げて挨拶する。

「で?翔子ちゃんは知ってるけど、あと2人は?」

 洋介が由美と圭太を見て旭に問う。圭太が立ち上がって自己紹介しようとしたとき、旭が「あぁ」と言って続ける。

「三笠由美ちゃんと中山圭太だ。最近知り合ったんだ」

「はじめまして!三笠由美です」

「な、中山圭太です」

 2人はとりあえず洋介に挨拶した。洋介は「おぉ、お前らが」といいながら握手を求める。

「話は聞いてるよ。由美ちゃんがFX仕様のゼファーで圭太がモノホンFXだろ?」

「ものほん?」

「本物のことだよ」

 圭太に笑いながら言う。洋介は細い目を柔らかく曲げて自己紹介をした。

「オレは羽黒洋介。国道沿いにある羽黒モータースの跡取り息子にして旭とは中坊ン時からの付き合い。単車はヨンフォアだ」

「あ、あのぉ・・・」

「どうしたの?」

 翔子が後ろから洋介に近づくと、右手を差し出した。

「き、昨日はありがとうございました。おかげで私のサンゴーフォアも治ったです。本当に、ありがとうございました・・・!」

 翔子が頭を下げると、伸ばされた手を洋介が握り返す。小さな手を、洋介の大きくゴツゴツした手がやさしく包んだ。

「気にしなくていい。同じフォア同士、困ったらお互いに協力していこう」

 洋介はそういうと、そのまま翔子を玄関の外に連れていこうとする。

「どうしても見せたくってさぁ、昨日頑張って組んだオレのヨンフォア!」

「はい!」

 洋介と翔子は玄関から外に出ていった。

「なんかいい人ですね」

 圭太が旭と話していると、横で由美がなにか悔しそうにしている。

「翔子ちゃん・・・とうとう私の下から去っていってしまうのね・・・」

「まぁ、気持ちはなんとなくわかるけど、翔子ちゃんがひとつ成長したってことだし、喜ぼうよ!」

「そ、そうよね!圭太もたまには良いこと言うじゃない!」

 由美は外から聞こえる2人の会話を聞いて明るく振る舞った。が、こんな時。旭が沈黙を破った。

「つーかよ・・・?アイツらそんな関係になんの早くね?」




 ・・・・・




「「「「コラァ!!!!!!!」」」」」

「うわ!」

 外で愛車の話をしようとしていた洋介は、4人の叫びに驚いて飛び上がる。

「翔子ちゃんを離しなさい!」

「しーちゃん!カムバック!!」

「さすがに早すぎます!!」

「てめえ洋介!コノヤロウ!!」

「なに誤解してんだおめーら!!」

「あぅあぅ・・・」

 しばらく6人は外で揉めていたが、騒ぎは1時間後。近隣住民の苦情を聞き付けたアパート『雪風荘』2代目管理人が怒鳴りにくるまで収まらなかったという。

登場人物紹介



羽黒洋介

職業 自動車整備工場(実家)

誕生日 3月24日(現18歳)

髪型 短髪(黒)

身長 167㎝

愛車 CB400FOUR改

家族構成 父・母

好きなもの CB400FOUR・単車談議・メガネレンチ・ラーメン

嫌いなもの CB400FOUR(現行)・CB-1・ウダウダ言う奴・自分の細い目

旭の悪友。旭とは中学のころからの付き合いであり地元では知らない者はいない。実家が自動車整備工場だったので中学卒業後は迷わず工場に。おかげでバイク・自動車に関する知識を得る。旭のGT380のパーツが回ってくるのも彼の工場の秘密ルートのおかげである。最近、同じCB乗りである翔子にちょっと気がある。

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