表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧車物語  作者: 3気筒
13/71

第13章 復活!CB350Four!!

少し内容を改定しました汗

 外でサンゴーフォアが復活する少し前、その時。

「うぅ・・・」

 翔子が目を覚ました。辺りには誰も居らず、周りを見回すも頭はボーッとしていて身体が働かない。

「ここは・・・旭さんの家で・・・昨日は・・・」

 昨日のコトを思い出そうとするが、翔子は酒を飲んだということすら記憶に無い。覚えているのはその前の記憶のみで、しかも乾杯したあたりまでしか思い出せないでいた。

(私、寝ちゃったんだ・・・あれ?)

 ようやく起き上がってコタツ机の上を見ると、そこにはカラになって転がっている缶ビールやチューハイ、日本酒などが散乱していた。翔子はなぜこんな物が転がっているかを少し考えるコトにした。

「・・・ダメ、思い出せない」

 美春同様、酒を飲むと記憶を無くすらしい。酒を飲んだコトは愚か、酔っ払って酷い状態だったコトや旭と圭太を潰したコトやらその他もろもろ、全く思い出せない。

 そんな感じでボーッしていると、外から音が聞こえてきた。

 

 カシャン!

 カシャン!

 カシャン!

 カシャン!・・・・・・バラバラバラバラ!

 

「この音・・・」

 ハッとなって耳を澄ます。音が高いが、間違いない。自分の愛車、CB350Fourの『音』だ。

「も、もう治って・・・!?」

 急いで立ち上がり、外に駆け出そうとするが、長いコト寝ていたので立ちくらみをして、頭からコケた。痛むおでこをさすりながら立ち上がると、高かったアイドリングが下がり、いつもの音になった。

「は、早く・・・早く・・・!」

 玄関で靴を履こうとするが、苦戦した。最後は踵を踏み潰して外に出た。

「あっ・・・」

 そこには、太陽の眩しい輝きで周りが白くぼやけた中で、エンジンが掛かって完調のCB350Fourと、その周りに3人の人影があった。

「あ、おはよう翔子ちゃん!!」

 視界が慣れるのにコンマ3秒も掛からなかったが、それでも自分の中では1時間くらいにも思えた真っ白だった背景が元に戻ってくると、そこには手を振っている由美の姿を確認出来た。横には圭太と旭も立っていた。

「私達も手伝ったのよ!?絶好調よ!!」

「やったのはほとんど旭さんだけどね」

 由美と圭太の2人が言う。目の前には完調のCB350Fourがアイドリングしている。

「コックの加工以外は案外ラクだったぜ。キャブレターはほぼポン付けだ」

 旭がアクセルを入れると、セッティングされた400用キャブレターでキャパが上がったおかげか、吹け上がりは格段に良くなった、と思う。

「どう?サンゴちゃん、復活よ!!・・・って!?」

 由美が翔子に言い掛けて、途中で止めてしまった。なぜなら・・・

「ひっぐ・・・うぅ・・・」

 思い切り泣いていたからだ。

「な、泣かないでよぉ!!治ったんだから!!」

 由美が慌てて言うと、翔子は首を横に振って否定した。どうやら、嬉し泣きのようだ。

「す、すみません・・・ひぐっ・・・うれしくてぇ・・・えぐっ・・・ありがとうございます・・・」

 由美に抱きついて、翔子はわんわん泣いた。

「もー、そんな泣かないで?これくらい大丈夫よ、友達でしょ?」

 頭を撫でながら由美が続けた。

「それにもし次、私のゼファーちゃんとか他のみんなのバイクが壊れちゃったら、その時は手伝ってね?」

「ぐすっ・・・もちろんです・・・!・・・ふぇえええ!!」

「も〜泣かないでよ〜!!」

 よしよし、と翔子の頭を撫で続ける由美を見て、取り残された男2人も、一件落着とばかりに2人を見守っていた。

「ふぅ・・・まぁこれで大丈夫だろ」

 最後の最後に確認を終えた旭がポケットからショートピースを取り出す。

「あり・・・?ライターは〜、と・・・」

 旭がライターを探していると、圭太が旭の目の前にライターを差し出した。

「落ちてましたよ?お疲れ様です」

 圭太が言って、火を点ける。

「おぉ、悪ぃなぁ」

 火を付けてもらい一服いれる。肺までため込んだ紫煙を吐き出す。

「しっかし、一度イジると中身も開けてぇな。車体も」

 そういいながらアイドリング音を聞く。やはり完調とは言っても、年式相応のガタは来ている。エンジン腰下からはクランク音が出ているし、クラッチもすり減っている。フロントフォークは柔らかすぎるし、スポークホイールには錆も出ていて、メッキフロントフェンダーにも錆でメッキが浮いている。パッと音を聞いたり見ているだけでこれだ。詳しく見ればもっと改善点が出てくるだろう。しかし、この時代のバイクはもうほとんどの純正部品が廃盤になっている。年間販売台数が約1万台弱しか売れていなかった、いわゆる不人気車種だったサンゴーフォアは尚更部品が無い。

「まぁ、部品出てきたらコツコツやるかぁ・・・ヨンフォアの部品も流用して」

 旭が先のコトを考える。仲間のバイクを一度治しただけで終わらさず、見れるところまでは最後まで面倒を見るのが彼の良い所である。

「でも、旭さんって本当になんでも出来るんですね」

 圭太が感心して言う。

「ばぁーか、これしか出来ないんだよ。オレはバカだかんよ?単車とかしか治せないんだよ。大学とか行ってるヤツの方が、世間の役にイヤって程たてるぜ?単車は世間一般人からしたら嫌われモンだかんな」

「そんなこと無いですよ。バイク治したりするコトが出来るって、十分世間に役立てます。それに、世間なんか関係無いですよ」

 圭太が自信満々に言う。

「サンキューな」

 旭は少しうれしそうな顔をしてそっぽを向いた。

「みんな〜!お風呂出たよ〜!!」

 丁度、美春が風呂から出たらしい。頭に乗せたタオルで隠れているショートカットの髪はまだ少し濡れている。

「朝風呂っていいねぇ・・・!」

 爺臭い(婆臭い?)ことを言いながら美春が皆の前に立ち止まる。

「ゆーちゃん、お風呂入ってきなよ!後が突っかかってるよぉ。次はしーちゃんとけーちゃんなんだからぁ」

 美春に言われて、由美は泣き止んだ翔子から離れて、「じゃあ、少し入ってくるわね!」と言って去っていった。

「とりあえず、後でサンゴーフォアのガソリン買いに行かなきゃなぁ。昨日ほとんど相模湖に置いてきちまったからな」

「す、すみません・・・」

 翔子が謝るが、旭は気にせずに「部屋に戻るか」と言うと、皆で部屋に戻った。

 

 

 

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 部屋に戻った圭太、旭、美春、そして翔子の4人は一様に言葉を無くした。辺りには昨夜の残骸が生々しく散乱していて、部屋中酒臭い。

 旭はこめかみに血管を浮かせながら、昨日の原因である美春と翔子に向き直った。

「あ、あっくん、怖〜い・・・」

「・・・?」

 記憶は無いが、朝から説教された美春と、記憶の無い翔子の反応と、散らかった部屋を見て、旭の怒りがまた爆発した。

「2人とも!!そこに正座しろ!!」

「「は・・・はいぃ!!!!」」

 かくして、また説教が始まった。横で、圭太がまたため息をついた。

 

 

「ただいまぁ〜!!・・・って、あれ?」

 30分後、由美が風呂から出てきた。髪の毛をタオルでゴシゴシ拭きながら部屋に入ると、旭がガミガミ怒ってて、美春と翔子が正座して下を向いて反省していた。

「・・・どーしたの?」

「部屋に戻ってきたらこの有様だから、旭さんがまた怒ってて・・・」

「見ればわかるわよ・・・美春ちゃん、2回目じゃない・・・」

 由美が呆れながら言う。

「ハイハイ、旭さん!もう許してあげましょうよ?」

 由美が説得すると、旭は最初と同じく、結構簡単に許した。

「じゃあ、みんな風呂入ったら片付けるぞ」

 旭が言うと、美春と翔子は物凄い早さで首を縦にコクコク振った。

「じゃあ次はしーちゃんお風呂ね!」

「あの・・・さっきから気になってたんですけど、そのしーちゃんって・・・?」

「よっし!!また説明するよ!由美ちゃんだからゆーちゃんでぇ・・・」

「いいから、早く行ってきなさい・・・想像通りだから」

 美春の説明に、由美が首を突っ込んだ。翔子は、とりあえず美春にすみませんと頭を下げてから風呂場に向かった。

 

 

 

「ふぅ・・・」

 湯船に浸かりながら、翔子は一息ついた。昨日から今日まで、いろんなコトがあっていろんな人に出会えた。こんなに充実して楽しい日々など今まであっただろうか?そんなコトを考えながら湯船に浸かる。

(みんな優しい人達だなぁ〜・・・私もがんばらなきゃ!)

 なにを頑張るのかはわからないが、心の中で何かを誓った。

(でも、義理母さんとか義理兄さん・・・昨日帰らなかったから・・・怒られるかなぁ・・・)

 再婚した父の新しい妻と、連れ子の兄のコトを考えて、一気に暗い表情になる。昨日は楽しかった。今日はどうなるか・・・

(せめてお父さんがいてくれれば・・・)

 父がいれば、義理母も義理兄も露骨に嫌がらせはしてこない。多分、放っておかれるだろう。その方がかえって気が楽だ。

(でも、バイクが治ったんだし、嫌なコトばかり考えてもしょうがないよね・・・!)

 そう思って、翔子は湯船から立ち上がり、風呂場を後にした。

 

 

 

 

「あ、しーちゃん。お帰り〜」

 風呂場から部屋に帰ると、みんなが部屋の掃除をしていた。空き缶を袋に入れていた美春が翔子を見て、ニコニコしながら言った。

「お風呂ありがとうございました」

「お礼はあっくんに言わなきゃだよ〜?」

「そ、そうですね・・・あ、旭さん・・・ありがとうございました」

「あ?別にいいよ。じゃあ圭太入ってこいよ」

「ありがとうございます。それじゃあ行ってきます」

 圭太がバスタオルと歯ブラシを持って、部屋から出ていった。

「よぉ、翔子ちゃん。後でガソリン買ってくるケド、サンゴーフォアのタンク容量っていくつだっけか?」

「えと・・・すみません、わからないです・・・」

 旭が聞くが、翔子もわからないらしく、首を横に振ると、旭は、「まぁいいか」と言って翔子に向き直る。

「じゃあ、1000円分でちょい買ってくるわ」

「じ、じゃあ私も行きます!!」

「いいよ、タバコ買ったり寄り道してくから時間かかるし」

「そうですか・・・じ、じゃあガソリン代渡しときますね!」

「おう、じゃあちょいと行ってくるわ」

 翔子からガス代を貰って、小さなガソリン携行缶を麻袋に入れて旭が玄関に向かう。みんなもそれに付いていく。

「じゃあちょいと行くわ。部屋の片付けちゃんとやれよ?」

 旭は何故か見送りにきた美春、由美、翔子に念を押す。3人は首を縦に振り頷いた。

 カバーを外すと、鬼ハン、カチ上げウィンカー、ゼス管3本ショットガンチャンバーを装備した真っ赤なGT380が姿を現した。

「旭さんって、GT380に乗ってたんですね・・・!カッコいい!!」

「あぁ、美春もサンパチだぜ?」

「由美さんから、旭さん達が2ストに乗っているって言うのは聞いていましたが・・・お2人共GT380だったなんて・・・」

 翔子が、あの高尾の麓で圭太や由美のバイクを見ていた時の、あの惚けた感じの表情で言う。隅から隅までビカビカのサンパチは、持ち主の愛情が溢れていると言った感じだ。

「ま、後で単車談義でもしようや。じゃあとりあえず行ってくるから」

 カフェヘルを被り、キャッツアイサングラスを掛け、真っ赤なスイングトップを羽織った、まさに昭和の不良的スタイルで旭が鬼ハンのサンパチに跨がる姿は物凄く様になっている。

 キーを捻り、コックをONにしてチョークを目一杯引いてキックをすると、一発でエンジンが掛かった。とりあえず数回吹かした。

 

『カーン!カーン!!バリバリバリバリ・・・・・・!!!』

 

「すごい・・・カミナリみたいな音・・・」

 2スト特有の甲高いエンジン音にショットガンチャンバーから吐き出される白煙と爆音を吐き出すGT380を見つめなが翔子が呟く。

「由美ちゃんのゼファーといい、旭さんのサンパチといい、私のサンゴーフォアに比べちゃうと霞んじゃいますね・・・」

 翔子はどうやら自分の愛車であるCB350Fourと由美達のバイクと比べてレベルが低いと思っているらしい。確かに、エンジン腰下までフルオーバーホールされたGT380と、ヘッドすら一度も開けていないと思われるでCB350Fourは確かに違いは大きい。タダでさえノーマル38馬力のGT380と34馬力のCB350Four。旭のGT380は改造もしているからもっとパワーも出ているだろう。

「な〜に言ってんだよ?サンゴーフォアは名車だぜ?霞むワケねーべよ?」

 旭が言うと、翔子も「ほ、本当ですか・・・!?」と聞き返す。後から出た後継機種CB400FOUR、通称『ヨンフォア』の影に隠れて目立たない存在のCB350Fourを名車と言ってくれたことが嬉しかったらしい。

 そんな翔子を、旭がサンパチからサンゴーフォアを見ながら言う。

「おうよ、ヨンフォアより車重で10キロ以上軽くて、パワーは3馬力しか違わない。燃費もヨンフォアよりいいし、スタイルもいい。普通に走る分には全く苦労しねー、サイコーだぜ?」

「あ、あ、ありがとうございます・・・!!」

「そうよ翔子ちゃん!サンゴちゃんが霞んでるなら圭太のFXなんか見えないから!」

「おい」

 ツッコみを入れた圭太を華麗にスルーして由美が翔子の肩を叩く。

「やっぱり・・・私はサンゴーフォアが好きです・・・!」

「あ〜ぁ、つまんないの〜」

「まぁまぁ、美春ちゃん。みんな同じじゃつまんないわよ」

 後半2人、なにか変なコトを言っているが気にしないでほしい。

「じゃあちょっと出るから、しっかり片付けろよ?」

そう言うと旭はクラッチを握りギアを1速に入れて走って行った。

「じゃあ旭さんの遺言どうり、片付けるとしますか!」

「ゆーちゃん、あっくん死んでないから!」

「あははは!!」

由美と美春の変な漫才を横目に、翔子は自分の愛車を見つめる。

(さっきちょっと由美ちゃん達のバイクをいいなぁ、って思っちゃったけど私にはやっぱりこの子しかいないよ、お母さん・・・)

このバイクを残してくれた母親に感謝して、翔子は皆と部屋に戻って行った。やはり自分はこのシングルカム4気筒の古いバイクを好きであると再認識した。

バイク紹介&自慢広場!



作者「このコーナーでは、登場人物に自分の愛車をを紹介してもらいます!お久しぶりの5人目は只今本編真っ最中!!小動物系の衣笠翔子ちゃんです!」

翔子「・・・?」

作者「あのぉ・・・もしも~し?」

翔子「どこ・・・ですか?」

作者「なんというタイムラグだ・・・ここはかいつまんで言えば夢の中ですよ。あ、ちなみに私はこの夢の中の素敵な住民です」

翔子「え・・・?そうなんですか・・・?」

作者「はいな」

翔子「あの・・・」

作者「なんですか?」

翔子「私はここで何をすれば・・・、いいんでしょうか?」

作者「この空間では、自分の愛車について語ってくださいな」

翔子「私の、CB350Fourを・・・ですか?」

作者「そうです」

翔子「わ、わかりました・・・!き、緊張しますけど・・・がんばりますっ!!!」

 HONDA CB350Four 翔子仕様

スペック

エンジン 本体ノーマル 

吸排気系 キャブレター(旧CB400FOUR用)

足回り  ノーマル

外装  ノーマルハンドル、左ミラー無、純正シート 

カラー 赤(純正オリジナルライン)


翔子「い、いじょうです・・・!!」

作者「なるほど・・・ヨンフォア用のキャブレターは旭の友達、洋介に譲ってもらったヤツだね。今後の改造の予定は?」

翔子「そ、そうですね・・・・・・とりあえずは・・・キレイにしてあげたいです・・・!」

作者「なるほど、レストアね。じゃあこれから大変だね、部品無いよ~?」

翔子「が、がんばります・・・!!」

作者「じゃあ、最後にお気に入りの部分は?」

翔子「えっと・・・全部です・・・!」

作者「では、今回はどうもありがとうございました!」

翔子「あ・・・はいです・・・」


がばっ←起きた

翔子「ぅ・・・ここは、確か・・・」




というわけで、13話でした汗

これからもがんばって書いていくので、宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ