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勇者はすべてを論破する -Argus Argues Against All-  作者: 福本サーモン
第1章 旅立ちの理由

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22/50

◆勇者の手記#001

 王命を受け、王都ルヴァリアを出立してから早3日が経った。以下に、現時点の行程と、個人的備忘を兼ねた記録を残す。



【現在までの行程】


・慈泉月下旬、中央教会にて神託を告げられる。

・誓環月初旬、教会より正式な認定。

・同月12日、国王に謁見し「魔王の動向の調査と交渉方法の模索」の命を賜る。その後、酒場にてグレオ、エリス、ミーアの3名を同行者として勧誘。

・同月13日、王都ルヴァリアを出立。第一目的地は西方の都市ティルヴァラン。ラグスノール、エルミナを経由し、情報収集に努める方針。

・同日、第二区間にてウルフ型魔物による商隊襲撃に遭遇。

 →戦闘・救助・修理支援。商人側の申し出により護衛継続。

・14日、コルニス村へ立ち寄り。畑荒らしと負傷事件に対処。

 →当初、リーフボアによる被害と推定。実際はサラマンダーの縄張り・餌場に干渉したことによる連鎖的襲撃と判明。村との関係調整を含め、複数の判断課題を経験。



【所感】


 戦闘時のパーティの連携については、報告書にも記載した通り概ね良好である。

 グレオの突破力は相変わらず頼れる。指示には忠実で、直感の鋭さも優秀。たまに勢いが先行するが、その都度軌道修正すれば十分に戦力として安定している。

 エリスの魔法技術は高水準。多属性に対応できる点はやはり貴重だ。短絡的な行動が多いのは相変わらずだが……それを見て苛立つのは、きっと自分が彼女に似た部分を抱えていたからだろう。反省と成長の気配もある。見守るべきだ。

 ミーアは緊張には弱いが、治癒魔法の精度は確か。「神子」であることを名乗る気配はないが……それは自分も同じか。肩書きと中身の乖離は、いつまでも胸に引っかかっている。


 ともあれ、それぞれがそれぞれの形で力になっている。今は、それで十分だ。



【メモ】


☑︎コルニス村復興計画立案

☑︎物資の補充

◻︎商隊護衛任務の完遂

◻︎ラグスノールにて、魔物被害の調査を実施


◻︎エリスの魔法適正範囲の詳細確認(炎:上級?、氷土風:中級以上、水雷聖闇:未確認)

◻︎教会とミーアの繋がりの把握(神子としての扱い、⬛︎⬛︎の可能性、特殊能力等)

◻︎グレオと飲みに行く


◻︎魔物生態学の文献確認



【結びに】


 旅を始めてから数日が経ったが、未だに、この肩書きが自分に相応しいとは思えない。

「勇者」とは、剣を振るい、魔を斬り、民を守る英雄であるべきだ――それが世俗における通念だ。だが私は、その理想には程遠い。


 それでも、この数日間で、確かに言葉が届いた瞬間があった。剣ではなく、魔法でもなく――論理と対話が、状況を変え、人の心を動かした。


 ならば私は、私のやり方でこの役割を引き受ける。

 剣ではなく、言葉を武器に。

 正しさと理屈を携えて、道を切り拓く。


 こんな不出来な男を選ぶとは、神の気まぐれか、それとも導きか。


 縋るつもりはない。だが、もし見ているのなら――


輝暦218年 誓環月 16日

ラグスノールへ向かう馬車内にて


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― 新着の感想 ―
先が改稿中とのことで、ひとまず第一章の終わりまでグイッと読み進め…手記にある不穏な"■■"や上位存在へ対するモノローグに色んな空想が止まらずワクワクしてます! そもそも神託とは?なぜ彼が選ばれたのか?…
名は体を表すと言う通り、まさにアルガスの名に恥じない反論っぷりで世界の常識をド正論で覆していく主人公。いわば…"スカッとモノの論破系"? 「生意気な若造め!」と批判されるばかりかと思いきや、共感派の人…
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