4.トライアル
今日も快晴。前と変わらず、広々とした空から穏やかな風が教室に流れ込んでいる。そんな中、俺はエレメント覚醒の儀の2日後に行われたとある授業のことを振り返っていた。
ーー「今日の授業では、君たちの発現したエレメントを実際に少し扱ってもらう。なに、テストプレイのようなものだと思ってくれて構わない。覚醒直後に使いこなすのは難しい。だができるだけ感覚をつかんでおくように。」
俺たち1年B組30人全員は屋外の陸上競技場に集められた。しっかし朝一からやるなんて聞いてなかったぞ。あくびをこらえながら教師の話に耳を傾ける。
「3人一組のグループに分かれてもらい、グループ内で活動してもらう。なんせ初めてエレメントを自発的に扱うわけだ。発現したエレメントを制御しきれないなんて事態も起こりうる。グループ分けしたのには、そうならないように監視しあうという意義がある。ではグループを発表する。まず1班はーー」
そうして俺と同じグループになった二人が、クライン、そしてシュネーだ。
クラインの性格は俺やシュネーとは正反対。社交的で男女から共に人気のある太陽のような存在の女子だ。そして確かCランク生徒。発現したエレメントは…なんだっけか。クラスにあまり関心を持っていないせいか全員のエレメントは把握できていない。まあいいか、後で分かることだし。
「シュネーくん、アルスくん、今日はよろしくね!」
「よろしく…」
俺はこれまで接したことのないほどの明るいオーラに気圧されながら返事する。
シュネーもどこか落ち着かないといった雰囲気で会釈している。
挨拶の後しばらくの沈黙が流れたが、その空気を切り裂くように活動開始のアナウンスが告げられ、俺たちはそれぞれのエレメントを発現することとなった。
「まずはシュネーから試してみてはどうだ?Aランクのエレメントとやらを実際に見て参考にしたい。」
「いまいち理屈が分からんが、まあ良いだろう。やってみる。」
事前に教わったインストラクション通りに目を閉じ、前に伸ばした手に全神経を集中させているシュネー。その姿を前に俺は固唾を飲んでその様子を見守っていた。10秒ほどが経過しただろうか、突然目の前の空気が歪むような感覚がしたあと、シュネーの姿が眩い光に包まれた。いや錯覚か?そんなことを確かめる間もなく、その刹那、俺たちの頭上を閃光が走り、地面が揺れるような轟音が周囲を飲み込んだ。
「これが、俺のエレメントか…!我ながらなんて強大な力だ…」
「ちょっと…これ大丈夫なの!? このままじゃ私たち危険なんじゃないの!?」
「いや、おそらく制御できる。抑えこんでみるさ…!」
シュネーの宣言通り、数秒後にはまるで何もなかったかのような、いつもの暖かな空気が戻っていた。
一瞬だけしか目にしなかっのに、先ほどの光景が頭に残り、彼の能力がいかに強力かを思い知った。
「これがAランクのエレメント…」
圧倒された俺は独り言をつぶやきながら、シュネーの背中を眺めていた。
「シュネーくん今のすごかったね…!じゃあ次はアルスくんの番だよ!」
「お、おう。自信ないけどやってみる」
クラインの声にハッとなり、俺はすぐさま自分の番が来たことを認識した。
Eランクがなんだ、さっきのシュネー程ではないにしても、もしかしたら俺もあたりを覆いつくすような強大な闇を生み出せるかもしれない。やってやるぞ、出でよ俺のエレメント…!
目を閉じ全神経を右手に集中させ、体から湧き上がるエネルギーを一点に集めるよう精神を研ぎ澄ます。
きたきたきたぞ…湧き上がるエネルギーが溜まっていって右手の先が熱くなっていく…
「来い!エレメント!」
その直後、目を開けて飛び込んできた景色に俺は間抜けな声が出そうになった。
ーー俺の右手に現れた闇のエレメントは、小指ほどの小さな暗がりに過ぎなかったからだ。
設定が固まりきっていない中、見切り発車で書き始めたせいで完全に展開が詰まりました…
練習用の試作ということでこれにて完結(打ち切り)です。見てくださった方(実在するか分からないが)には本当に時間の無駄になってしまい申し訳ない…!次回はもっと土台固めてから挑戦したい!