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1.メリトクラシー

この学園では個々の生徒がもつエレメントの能力の価値に応じてAからEまでの評価が下されるランク制が用いられている。

競争心をあおることで、より学生が能力の向上に励むことをねらったシステムらしいが、自分だけでなく全生徒のランクが開示されるようになっているため、なかなか残酷なシステムである。

具体的にランクの高低が学生生活にどのような影響を及ぼすのかは不明だが、俺は現時点でもうその一端を感じ取っている。


休み時間の現在、Aランクの生徒の席のまわりには多くの生徒が集まり、みなが称賛の言葉を投げかけているのが耳に入る。彼の名前はシュネーだったかな。確かエレメントは雷のはず。発電や機械の操作など使い道は多くあり、昔から例外なく価値あるエレメントとされている。

しかしランクってシステムはどうも俺にとっては嫌なもんだ。彼だって俺と同じく陰のオーラをまとっていて、誰とも話しているのを見たことがないのに、俺と違って色んな人が寄ってきてコミュニティができてるんだからな…。

誰かが「アルスくんのエレメント凄いね!」なんてことを言ってくれる妄想をついこの前までしていたことを思い出して頭を抱えたくなる。すごいエレメントを持っていれば憧れや尊敬の対象になるってのも分かってはいるけど、それでもそんな現状を受け入れたくなかった。


どうにもやることがなく、暇つぶしがてら今朝配布された名簿を取り出し、クラス全員のエレメントと与えられたランクを確認してみる。見たところクラスメイトの持つエレメントの種類の比率は帝国全体のそれと変わらないらしく、炎、氷、風が多くそれら3つがクラス全体の8割程度を占めていた。彼らの多くはBからDランクで、同じ種類のエレメントであってもその能力の適合性などでランクが異なるようだ。

残りは雷、音、水…。やはり闇は俺一人のようだった。

それも当然だろうな。なんせ闇のエレメントの能力者は全国民の0.5%程度しかいない。

俺が生まれるよりもっと前の時代、闇のエレメント保有者はその無用性から、無条件で弾圧されていたなんて昔話も聞いたことがある。もちろん、その話を聞いたときはまさか俺がその闇のエレメントを持つことになるとは微塵も考えていなかったが。

覚醒するエレメントの種類には多少遺伝も関係するってのも聞いたことがあるけど、俺の家族や親戚に闇のエレメントを持つ人はいない。それもあってこの身に降りかかった予想外の悲劇のがっかりは大きい。

しかしそれ以上にもっと凹む事実は、クラスでEランクが俺だけってこと。この名簿に目を通す前に、他にもEランクの生徒がいないかどうか実はちょっとだけ期待していたがそんなちっぽけな希望は打ち砕かれた。ランクが全てではないとはいえ、唯一の最低ランクの生徒であることで周囲から見下されてもおかしくはない。


これから1年間、少なくともクラス替えまではただ一人のEランク生徒として、そして最低のエレメント、【闇】の所有者として過ごさないといけないなんて…気が重い。


どうにかしてこのエレメントを磨いて価値を上げることはできないのだろうか…。どうやったら劣等生のレッテルを貼られずに済むのか…。そんなことがぐるぐると頭の中を巡っている中、授業の開始を告げるチャイムが鳴った。

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