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Eternity エタニティ ー永遠の魔法ー  作者: 本堂本子
一章 エーデルクライン公爵家
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5 外道の養女

爆炎に包まれた、エーデルクライン家本邸。

私は、その中庭でへたり込んでいた。

「…………私は……………なんてことをっ!」

目の前には、業火に包まれた大屋敷がある。

私は、ハデスへの怒りから、感情のままに古代魔法を使ってしまった。

中にいた、使用人たちも、屋敷がこの有様では助からないだろう。

私は、人を殺めてしまったのだ。

この、手で。

里のみんなが受け継いできた大切な魔法、古代魔法で。


『ラヴィ、魔法はね、使い方次第なんだ。魔法使いによって、魔法は、攻撃にも防御にもなる。だから、使い方を間違えないようにしなさい』


思い出すのは、ケメトの言葉。

でも、私は魔法の使い方を間違ってしまった。

私は、大切な家族であり魔法の師であるケメトを裏切ってしまったのだ。

ごめんなさい、ごめんなさい…………

謝っても許されない私の罪。


「____やく!早く!消化用の水を持ってきなさい!」

「怪我人はいないか!」


座り込むしかなかった私は、周りが騒がしくなったことに気づき、顔をゆるりと上げる。

虚な目に映ったのは、半壊した邸宅の中庭に集まった、多くの使用人や、兵士たち。

その全員がほぼ無傷であった。

中には、爆炎の渦中であった、部屋付近で仕事をしていた者もいただろうに、怪我ひとつない。

「なんで…………なんで、みんな無事なの?」

「それは、ここがエーデルクライン家だからだ」

私の問いに答えたのは、先ほどまで殺意にも近い怒りを向けていた相手。

フラフラと立ち上がりながらも、私は目の前の相手を信じられない、という目で見つめた。

その男が手をすっと上げると私は即座に数十人の兵士に取り囲まれる。


「どう、して……死んでいないの?」


ガクン、と足から力が抜ける。

爆裂殺技(マラ・ラヴィアータ)で、全ての魔力を使って、魔力切れを起こしたのだ。

怒りに燃えていた心が冷め、唖然と目の前の相手を見上げる。


目の前の相手_____ハデスは、ひらひらと手を振り笑った。

私を嘲笑うかのような笑みだった。

しかし、顔は笑っているのに、目は笑っていない。

ハデスの目は、どこまでも冷徹で、ただただ恐ろしかった。

ハデスは、私のもとまでやってきて、私と視線を合わせるかのようにかがみ込み、口を開く。


「エーデルクライン家は魔法名家で有名な家だ。グランツベルグに、エーデルクライン以上に魔法で守りを固めた邸宅はないし、何重にも、守護魔法が重ねがけされている。今回は、その膨大な魔力量に守護魔法が破られ、邸宅が半壊してしまったが、その爆裂殺技(マラ・ラヴィアータ)とやらも、突発的で、穴だらけの、魔力量に頼りきりな魔法だ。エーデルクラインの最高技術で作った守りの魔道具を持っていた、私や使用人どもには痛くも痒くもない攻撃なんだよ」


私は悟った。

これは、完全に私の負けだ。

こいつは、私があの発言を聞いて激昂することを、あらかた予想していたんだろう。

私はただ、彼の手のひらの上で踊らされていたのだ。

彼の、操り人形のように。

そして、私は彼の予想通り激昂して、魔法を発動して、負けた。

発動した爆裂殺技(マラ・ラヴィアータ)は、この膨大な魔力に頼りきりになってしまったお粗末な魔法。

ケメトにも言われたことだ。

魔法は、丁寧に、精密に。

初歩の初歩であるそのことを忘れ、怒りのままに爆発を起こした私は、負けた。

この、男に。

兵士が剣を持ち、私に突きつける。

それをハデスが手をあげ、止めた。


「お前、名前はなんて言う?」


近づいてきたハデスは、私を見下ろしながらそう言った。

茫然自失となった私は、抵抗する気力もなく、反抗することなく、自分の名前を言う。

「ラヴィ、リスタ……」

「ラヴィリスタか」

突然、ハデスは私の手をひき、無理やり立ち上がらせる。


「その魔力量、魔女の里の知識、そして古代の遺産を唯一受け継ぐお前を誰かに渡すのは、あまりにも惜しい」


ハデスは、そこで一旦言葉を切ると、赤い瞳を細めて、唇を歪める。


「お前、俺の養女になれ。そして、今日からお前は、グランツベルグの兵器だ。グランツベルグのために生き、グランツベルグのために死ね」


ハデスの言葉を頭で反芻する。

意味を理解するまでには、時間がかかった。

私がハデス(コイツ)の養女?

私が、兵器?

そんなの死んでも嫌だ。

グランツベルグなんかに縛られたくないし、私は、自由に生きたい。

それに何より、魔女の里(うち)に帰りたい。

ただ、帰りたいのだ。

どこよりも安心して暮らせる愛する故郷へ。


だけど、魔力が切れて、ただの十一歳の少女になった私に、逃げるすべはない。


絶望。


その言葉でしか言い表せられないような状況だ。


私は、目の前が真っ暗になるのを感じた。


ラヴィリスタの爆裂殺技[マラ・ラヴィアータ]、パスタの、アラヴィアータみたいになってしまいました笑。

ちなみに、マラ・ラヴィアータは、ラヴィの世界の古代語にあたる発音です。これから多分出てきます♪


気に入ってくださった方、ポイントやブックマークにしてくださると大変嬉しいです。

是非よろしくお願い致します。

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