カルラたちの講義
4月7日。由香とほのかはアラワシ公国でカルラたちの講義を受けた。場所はカルラのマンション。2人は教官たちが流暢な日本語を話すので安心した。カルラたちはリビングでホワイトボードを使って講義を始める前に軽く自己紹介した。「私たちはアラワシ公国の予備役のミルカよ。マーキュリープロジェクトを完遂するためにヒナドリ公国に赴任したの」「マーキュリープロジェクトはどんな趣旨なの?」「従来のミルカとは違う女性像がマーキュリーには求められるわね」「ミルカは女としての格差で私たちを圧倒するイメージしかないわ」「もちろんそれが大前提だけどね。ミルカは色仕掛けと性的な訓練。特に前戯に重きが置かれるわ」「色仕掛けは対戦中に始まるの?」「対戦前から始まってるわね」「ま、マジ?」「対戦場所は風の通り道でしょ?だからミルカは風の使い方にも精通してるわ」カルラたちは白のテニスウェアを身にまとっている。教官たちは扇風機をミニスカートに当ててみた。ユラユラ揺れるミニスカートから目が離せない。しかもカルラたちからはすっごくいい香りがした。由香たちはゴクリと生つばを飲み込んだ。「ミルカって序盤からどんどん仕掛けてくるの?」「もちろんよ由香。風の拭き具合ではどんどんエスカレートしていくわよ」「な、なんかもう勝てる気しないんだけど」「しかもマーキュリーは香水を使わないのよね」「よかったあ。私たちを惹きつける香水なんていくら何でも反則よ」「でもね由香、マーキュリーの内面の魅力から発散される芳醇なオーラはかなり効くわよ」「ど、どれくらい?」「わからないわ。私たちってマーキュリーと実際に対戦する機会がないからね」「もしかしてカルラたちが身にまとう香水よりも強力?」「かもしれないわね」「もう負ける気しかしないわ」「確かにミルカの色仕掛けはどんどん進化してるわ。だけどね由香、ミルカにだって弱点はあるのよ」「弱点?」「ミルカは色仕掛けと前戯に重きを置くからね」「そうか。前戯をかわすことは不可能じゃないわ」「ミルカは色仕掛けと性的な訓練がワンセットになってるわ」「要はオーソドックスなのね」「そうね。奇策や奇襲に走らないから対策はできるはずよ」「でもカルラ、色仕掛けに対策はできるかしら?」「難しいわね。かつてはミルカの[オヘソを見る]手があったけど。今ではオヘソを見せるミルカはいないわ」「じゃあやっぱり私たちが圧倒的に不利じゃないの」「でもね由香、逆に魔法戦士が色仕掛けする手があるわ」「でもねカルラ、私たちは空中戦から始まるからね。序盤からの色仕掛けは限りなく不可能に近いわ」「だから地上戦から始める必要があるわ」「だとすれば戦い方をゼロベースで見直さないといけないわね」「そうね。マーキュリーはミルカに近いけど。ミルカともまた違うのよ」「具体的にはどう違うの?」「マーキュリーは内面の魅力と母性のギャップが魅力なのよ」「じゃあ見た目よりも幼い感じ?」「でしょうね」「むしろ私たちの方が母性本能をくすぐられる感じ?」「かもしれないわね」「簡単じゃないよね」「女としての格差で圧倒するのがミルカだけどね。マーキュリーは妙齢の女性だからそれだけじゃないわ」「じゃあ私たちのお母さんみたいな人じゃないよね」「そうね。実際に対戦しないからわからないけど。ただ[完成された女性像]にはしないって聞いてるわよ」「そ、そうなんだ」「あくまでも魔法戦士に絶望感を抱かせない女性像がマーキュリーには求められるの」「何だか具体的なイメージが湧かないわ」由香たちは下着が湿り気を帯びているのを感じた。や、やっぱりミルカの魅力には抗えないわ。「マーキュリープロジェクトはマーキュリーと魔法戦士の健全な関係を築くのが目的よ」「いまいちミルカとの違いが不明瞭ね」「魔王さまはマーキュリーを若返らせるのが真の狙いみたいね」「私たちは隠し味なのね」「魔王さまはあなたたちの羞恥や生気を奪わないことを明言してくれているわ。もちろんマーキュリーの羞恥と生気もね」「私たちが利用されてる感がしっかりある割にはちっとも悪い気がしないわね」「魔王さまは由香たちを自国の文化としてしっかり取り入れるつもりなのよ」「私たちがワンサイドに負けまくる仕組みじゃないよね」「大丈夫よ由香。異世界はリアルと違うわ」由香たちは胸を撫でおろした。実際に対戦してみないとわからないが、ヒナドリ公国の魔王さまは私たちをマーキュリーのかませ犬にする気はないようだ。むしろ私たちを積極的に活用しながらマーキュリーを成長させようという親心が垣間見えて微笑ましい。「異世界は今の日本やリアルとは全然違うのよ。[誰かが必ずバカを見る仕組み]を馬鹿の一つ覚えみたいに作りまくれば私たちは誰からも相手にされないわ」「それじゃあ今の日本と全く同じになっちゃうよね」「私たちはそこまで超絶無能じゃないわ」