リセたちの講義
4月6日。イレーヌとリリスはリセたちの講義を受けた。場所はリセのマンションのリビング。リセたちは白のテニスウェアを身にまとっている。教官たちからはすっごくいい香りがした。2人はすでにリセたちの[見えそうで見えない下着]から目が離せない。教官たちはホワイトボードを使って講義を始めた。「私たちはあくまでも色仕掛けで魔法戦士を悩殺するのよ」リセは続けた。「対戦前から色仕掛けは始まってるわ」「でもリセ、私たちはあなたたちみたいにかなりの美人ではないわ。プロポーションにはちょっぴり自信あるけどね」「大丈夫よイレーヌ。あなたたちは気持ちが若いし、内面が純粋だからね。芳醇なオーラが充分すぎるほど発散されてるわ」「そ、そう?今まで1度も言われたことないわ」「意外なほど自分では気づけないわ。むしろイレーヌたちは香水を身にまとわない方がいいわね」「じゃあ私たちでも魔法戦士を悩殺できるかしら?」「もちろん実際に対戦してみないとわからないわ。でもあなたたちなら必ずできるはずよ」「ちょっぴり自信が湧いてきたわ」リセたちは内面の魅力から発散される芳醇なオーラほど魔法戦士を悩殺できるものはないという。科学的な裏付けはないが、ヒナドリ公国の魔王さまはマーキュリープロジェクトの真の狙いは香水を使わずに魔法戦士を悩殺することにあった。というのもヒナドリ公国は国家予算が潤沢にあるわけではない。ミルカが愛用する香水は異性同性を問わずに惹きつける。かなり高価なため、香水代だけでも実はかなりの年間コストが発生するのだ。「実はミルカが身にまとうミニスカートの丈も緻密な計算に裏打ちされてるの」「そんなの数値化できるものなの?」「数値化まではできないわ。でも思春期の女の子が欲情するミニスカートの丈は[下着が見えそうで見えない程度の長さ]に収れんされるものなのよ」「理屈はわかるわ。じゃあ私たちが実際に身にまとうミニスカートの丈はどうなの?」「いちがいには言えないわ。テニスウェアとチアガールのコスチュームはミニスカートの丈が必ずしも同じではないのよ」「そうだよね。その人に合った長さがあるはずよ」「そうねイレーヌ。だからこそ数値化はできないのよ」「あくまでも私たちとあなたたちではミニスカートの丈が同じではないはずよ」「その人の個性や好みや年齢や雰囲気や魅力。対戦日の天気にも左右されるわ」「確かにね。対戦日の天気にもよるわね」リセたちはミルカには正規のコスチュームがないという。「基本的にはチアガールとテニスウェアくらいね」「要はミニスカートタイプで魔法戦士を悩殺するのね?」「もちろんよ。レオタードタイプだと私たちはイチモツが目立つから色仕掛けには不向きなのよ」「できればチアガールとテニスウェア以外のオプションが欲しいわ」「そうね。でもなかなか新しいオプションが見つからないのが現状なの」「あとは私服くらいかしら?」「そうね。でもイレーヌ、私服はセンスがいるわよ」「でもハマれば早めに終戦が期待できるわよ?」「確かにね。色仕掛けがハマればハマるほどあっけなく終戦するわ」だからといってミルカが魔法戦士よりも圧倒的に強いわけではない。「確かに私たちの色仕掛けがハマればわずか数分で魔法戦士に勝つ日もあるわ。でも私たちとあの子たちの力の差はあまりないのよ」「ついついカン違いして次はボロ負けしちゃいそう」「実はカン違いして地獄モードにはまり込むミルカが意外なほど多いのが実情なの」「気をつけないとね」イレーヌたちは下着が湿り気を帯びているのを感じ、強い恥じらいを覚えた。ひ、ひと回りも歳下の女の子に欲情させられるなんて。でもマーキュリーは強い恥じらいを覚えるからこそマーキュリーなのだ。女性から羞恥と生気が失われれば全てが終わる。マーキュリープロジェクトはマーキュリーだけでなく魔法戦士からも羞恥と生気を奪わないことを大前提にしている。だからこそ尊い。敵からも愛され慕われる。マーキュリーはミルカとは違う魅力が求められた。マーキュリーは気持ちの若さと母性とのギャップが魅力。女としての格差で魔法戦士を圧倒するだけにとどまらず、ライバルというよりは近所の優しいお母さんと戦う気持ちにさせることで[より安心して負けられる]対戦相手に成長しなければならない。「イレーヌたちはミルカであってミルカじゃないわ」「従来のミルカのイメージとは違う存在にならないといけないのね?」「そうよ。マーキュリーは[完成された女性]じゃないわ」「私たちは魔法戦士に絶望感を与えちゃダメなのね?」「そうよ。もちろん女としての格差で魔法戦士を圧倒するのは極めて重要だけど。マーキュリーにはプラスアルファーがいるわ」「要は魔法戦士と一緒に成長していく感じ?」「そうね。むしろスコーンと抜けた感じがあるといいわね」「それなら大丈夫よ。私たちは天然だからね」