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第6話 だから必ず水瀬有紀を堕としなさい

 快斗君があの忌々しい女、水瀬有紀に勉強を教えるようになってから今日で3週間だ。この3週間は私にとって非常につらく苦しい期間であり、正直発狂してしまいそうだった。心の底から愛している快斗君が自分以外の女と仲良くしている事を知っていながら我慢しなければならず、さらに帰り道で彼の口から水瀬有紀の話題が出てきたりするのだ。

 そんなの苦しく無い訳が無い。だが忘れもしない中学3年生のあの日に味わった死にたくなるような絶望と比べれば格段にマシなため、こんな状況の中でも頑張って耐える事ができた。それに水瀬有紀の件で我慢を強いられるのも後少しの辛抱だ。ここ数日間昼休みに図書館で2人が勉強している様子をこっそりと遠くから監視させてもらったわけだが、前よりもかなり距離が近くなっていた。恐らく快斗君は水瀬有紀の事をかなり意識しているに違いない。


「アラン、あなたがこれから何をするべきかは勿論私が言わなくても分かるわよね?」


 放課後、空き教室にアランを呼び出した私はそう問いかけた。私の言葉を聞いてアランはなぜ自分が呼び出された理由を察したようで、苦虫を噛み潰したような表情で口を開く。


「……ああ、いつものように水瀬さんを俺に惚れさせて快斗から遠ざければ良いんだろ」


「その通りよ。どんな手段を使っても良いわ、だから必ず水瀬有紀を堕としなさい」


 そう不本意そうな表情で語るアランに対して私はかなり強い口調で命令した。自分の好きな人を他人に奪われるほどつらい事は無いと身をもって体験しているため、かつての私がそうだったように快斗君の精神に大きなダメージを与えられるはずだ。そして私はいつものように深い絶望に打ちひしがれた快斗君を精一杯癒し慰め励ます事で次第に私無しでは生きていけないようにしていく。


「……姉さん、本当にこんなやり方を続けてて良いのか? 快斗と付き合いたいならもっとマシなやり方だってあると思うんだけど」


「あなた何か勘違いしてるんじゃない? 快斗君の身も心も全部私だけの物にしようとしてるのよ、ただ単に付き合いたいとかっていう次元の話じゃないの」


 アランの言葉を聞いて激しい苛立を覚えた私は低い声でそう言い放った。快斗君とただ単に付き合いたいだけならこんな回りくどいやり方を取る必要は全く無い。私から快斗君に告白すれば恐らくほぼ確実にオッケーされるため簡単に付き合える。だが男というのは彼女や妻がいたとしてもいとも簡単に他の女に目移りしてしまう生き物なのだ。

 ただ単に付き合っただけでは到底安心できない。現に中学3年生のあの日、私の事を好きだったはずの快斗君は私では無い別の女から告白されて付き合ってしまった。そう、それまでずっと私の事を好きだったにも関わらずだ。よって身も心も全部私だけの物にして絶対他の女に目移りできないようにする必要がある。

 最初はとりあえず付き合ってから快斗君の身も心もゆっくりと私だけの物にしようとも考えていた。しかし私と付き合ってしまうと快斗君の心に余裕が生まれてしまうため、絶望の底に叩き落とす事が難しくなってしまう。

 私としては快斗君の精神がぼろぼろになるまで徹底的に追い詰め、それから救済するという流れに持っていきたいのだ。かつて虐められて精神的に参っていた私が快斗君から助けて貰ったあの時と同じように。

 私はわざわざそれを分かりやすくアランに説明してあげたわけだが、目の前に立つ愚弟は全く理解してくれなかった。それどころか姉さんは完全に狂ってるとまで言い出す始末だ。


「私が狂ってる? そんなのあなたに言われなくても自分で分かってるわ。私は快斗君が彼女を作った中学3年生のあの日に壊れちゃったんだから」


 私が真顔でそう話すとアレンは諦めたような表情になって教室から出て行った。はっきり言って私は自分がやろうとしている事が世間一般的な常識から考えて異常だという事を認識している。

 だが私はもう既に壊れてしまっているのだ。そして言うまでもなく私が壊れてしまったのは全部快斗君のせいである。だから例え誰に何を言われたとしてもこの計画を辞める気は一切無い。


「楽しみだな、快斗君が身も心も私だけの物になるの」


 計画を達成した先に訪れるであろう理想の未来を想像した私は恍惚の表情を浮かべながらそうつぶやいた。想像しただけで軽くイキそうになるくらいには快感だ。もしかしたら今私の下着の中は愛液でグチョグチョになっているかもしれない。


「……って、快斗君を待たせてるんだった。早く行かないと心配させちゃうよね」


 私は腰掛けていた机からゆっくりと立ち上がるといつも通り快斗君と一緒に帰るために待ち合わせをしている靴箱へと向かい始めた。

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