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第4話 私がこんなふうになったのは全部快斗君のせいなんだからね

「ごめん、お待たせ。もしかして待ってた?」


「大丈夫、私も友達と話してたからちょうど今来たところ」


「そっか、それなら良かったよ」


 靴箱に到着した俺が先に来ていたであろうエレンに待たせてしまった事を謝罪をすると、彼女は綺麗な笑顔で微笑みながらそう答えてくれた。そして上履きから靴に履き替えた俺達はいつものように並んで帰り始める。


「そう言えば今日はいつもより遅かったみたいだけど、教室で何かあったの?」


「ああ、突然俺に勉強を教えて欲しいって言ってきたクラスメイトがいてさ」


 エレンから理由を聞かれた俺は特に隠す理由も無かったため普通に答えた。するとエレンは興味が湧いたのか質問を投げかけてくる。


「そうなんだ。ちなみに教えて欲しいって言ってきたのはどこの誰なの?」


「エレンが知ってるかどうかは分からないけど、水瀬さんっていう女子だよ」


「……ああ、あのギャルっぽい子か。勉強なんか全然し無さそうなイメージがあったからちょっと意外だな」


 エレンは一瞬だけ無表情になって黙り込んだ後、すぐにいつもの調子に戻って話し始めた。てっきり俺は水瀬さんの事をエレンは知らないと思っていたが、話を聞く感じだと知っているようだ。エレンは交友関係が広いのでひょっとすると何かしらで接点があるのかもしれない。


「俺も正直かなり意外だったんだけど結構困ってるみたいだから教えてあげる事にしたんだよ」


「学年一位の快斗君が教えるなら成績は伸びそうだね。まあ、本人にやる気があればの話だけど」


「相当切羽詰まってる感じだったし、絶対頑張るとは思うけどな」


 そんな事を2人で話しながら帰り道をゆっくりと進む俺達だったが、だんだん隣を歩くエレンに違和感を感じ始める。ぱっと見はいつものエレンとなんら変わりないはずなのだが、さっきから上手く言葉に言い表せない何かを俺は感じているのだ。この違和感の正体は一体なんなのだろうか。


「ねえ、快斗君。急に黙り込んでどうしたの?」


「……あっ、ごめん。ちょっと考え事をしててさ」


 エレンに話しかけられて我に返った俺は慌てて謝罪をした。いつの間にか自分だけの世界に入っていたらしい。相変わらず違和感を感じたままの俺だったが、考えても分からなかったため気にしない事にした。それからしばらく適当に雑談をしながら歩いているうちにエレンの家の前に到着したため、いつも通りそこで別れる。そして俺は水瀬さんに今後どんなふうに勉強を教えようか頭の中であれこれ色々とシミュレーションをしながら家に向かって歩き出す。


「水瀬さんにどうやって勉強を教えようかな……そもそも今のレベルが分からないし、とりあえず簡単なテストでも作って実力を確かめてみようか」


 水瀬さんの勉強を教える方法はこれからしっかりと考える必要がありそうだ。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「……私いつも通りに振る舞えてたかな?」


 快斗君と別れて一旦家の中に入った私は、そう口にしながら疲労に耐えられなくなって玄関の床に座り込んだ。 怒りを押し殺していつも通りの自分を演じるという行為は、思っていた以上にしんどかった。もしかしたら何かしらの違和感を快斗君は感じていたかもしれないが、私の怒りにまでは気づいていないはずだ。


「……ついこの間邪魔な女をアランに排除させたばかりだっていうのに、こんなに早く次が現れるなんて正直思ってなかったな」


 私の怒りの原因は言うまでもなく水瀬有紀とかいう快斗君のクラスメイトの女が関係している。私以外の女が快斗君と親しくしているだけでも非常に許し難い事だというのに、あろう事か2人きりで勉強をするというのだ。嫉妬で気が狂いそうな私は本音を言えば事前に阻止したいわけだが、快斗君を私だけの物にする計画のためにも今は我慢をしなければならない。

 快斗君があの女の事を気になり始めたタイミングを見計らって、アランに堕とさせる予定だ。心の底から大嫌いなアランだったがとにかく女からはモテるため、こういう時にだけは非常に役に立つ弟だ。弱みを握って従わせているためアランは私に決して逆らえない。

 アランを使って人間不審になる一歩手前まで快斗君を精神的に追い詰め続け、その一方で私だけが快斗君の味方である事をひたすらアピールし続ける。それによって快斗君は世界で唯一私の事だけを信じるようになってくれるはずだ。

 快斗君にはちょっとだけつらい思いをしてもらう事にはなるが、それは致し方ない。これも私と快斗君が結ばれる理想の未来のためには必要不可欠な事なのだから。いわゆる必要な犠牲という奴だ。


「私がこんなふうになったのは全部快斗君のせいなんだからね。絶対責任取ってもらうんだから」


 私は日課である尾行の準備をしながらそんな事をつぶやいた。

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