攻撃ヘリの廃止は時代の流れで納得できるとして、救難救助機はV-280かCV-22のどちらかを選択するのでは?
2022年12月9日。
その発表はTwitterトレンドに乗り、ミリタリー趣味の者を筆頭にネット上でその話題は駆け巡った事だろう。
そう、自衛隊における「攻撃ヘリ」及び「救難機」廃止の発表である。
さて、実は本発表の前にとある場所にて相応に関連する話題を3か月前に触れていた人物がいる。
配信中の筆者である。
実は攻撃ヘリに対する疑念というのは、ここ最近急激に深まりつつあり……今年に入ってから盛んな議論がなされていたのだ。
特にアメリカにおいて「不要なのではないか。兵器としての立場を失ったのではないか」――というような研究報告がなされたのが今年の夏頃であった。
その関連情報のニュースを把握していた筆者は配信中に「攻撃ヘリは各国にて今後廃止されるかもしれない」という話をしたのだが……
先進国でも最も早い段階でその宣言をしたのが日本であったというのはやや予想外であり、若干驚きを隠せない部分もあったものの……
「なぜだ!」――などと困惑するような事はなかった。
むしろ筆者は周囲と「どう考えてもコストに見合わない」と話していた立場であったため、攻撃ヘリに関しては間違いなく消える運命にあるだろうと思っていたりする。
しかし一方で強烈な違和感を感じたのは救難機である。
最初に述べておこう。
筆者の予想ではU-125の廃止は明らかにV-22のさらなる増備か、あるいはこの程UH-60の後継機として正式採用されたばかりの"V-280"を救難救助機として運用したい政府あるいは自衛隊の意向が多分に絡んでいると予想している。
本日の発表でV-22ことオスプレイあるいはV-280の話がでなかったのは、世間では極めて評判が悪いオスプレイや、それに類似する機体の話題などしようものなら反対運動が巻き起こってさらに支持率が下がることを懸念したからだろう?
まず、V-22ことオスプレイの救難及び救助機としての能力は十分にあるということを述べておきたい。
ヘリコプターと航空機のいいとこ取りを目指したV-22は、その最大の長所としてヘリコプターの倍以上の航続距離でありながら平均的な輸送ヘリの2倍以上に達する最高速度及びサイズに対する積載量を長所としており、迅速に要救助者を発見するにあたっては従来のUH-60Jなどの救助ヘリよりも確実に高性能である事は言うまでもない。
そして既に今年の3月に木更津にて防災訓練で使用されたように、V-22は元々ホイスト降下による救助作業が可能で、今後は局地的大規模災害においての救助機としての運用も検討され始めている。
なぜここまで我が国がV-22を気に入っているかといえば航続距離に他ならない。
自衛隊に納入されているV-22は正しくはMV-22であり、その航続距離は約4000kmもある。
当然飛行可能時間も長く、片道で良いのであれば北海道から沖縄まで飛行可能。
さらに空中給油能力を備えており空中給油も行えばさらにその航続距離は伸びる。
この状態で巡航速度は500km/h近くにまで達し、従来のヘリコプターが200km/h少々であるところMV-22はヘリコプターのその速度によって2分の1の時間で現場まで急行できるというのだから、離島防衛が重要であり、かつ離島に要救助者が発生しやすい日本国防衛においてはこれ以上無いほど魅力があるのだろう。
ではもう1つ筆者が名称を出したV-280はというと、V-22の小型機版であり、機体規模でいえば一回り以上小型化されている。
しかしながら性能だけでいえば巡航速度ではV-22を上回るとされ、最大速度においてもV-22を上回る。
最大の特長はV-22のノウハウを活用して最大限コストに配慮した構造とされており、より簡略化がなされた機体であること。
例えばV-22ではエンジンそのものが回転してプロペラの角度が変わっていくのだが、V-280ではこの機構においては複数の可変ベベルギアを用いてプロペラと一部の構造体だけが稼働して角度を変更するようになっている。
こうすることによりターボシャフトエンジンの噴流の位置は変わらないままとできるため、プロペラの角度を変更した際のジェット気流の変化による挙動の不安定化はほぼ無くなり、V-22と比較して大幅に操作性が改善されると共に翼の構造がより簡略化されることで軽量化が可能となった。
一応言うとエンジン周囲のパーツ点数はV-22より増えているが、他の部分においては例えば海軍向けとして導入された収納スペース確保のための翼の回転機構などが排除されており、内部機構の簡略化においては相当な領域にまで至っているとされる。
それでいながら本機は長距離飛行にあたって必要となる燃料タンクスペースの確保等に成功しており、その航続距離はV-22とほぼ同等。
飛行可能時間も殆ど変わらない。
また本機はベル社だけでなくF-35の開発の主体者でありF-16等の製造メーカーであるロッキード・マーティンが大々的に関与し、V-22とは比較にならない程の信頼性を獲得するに至っている。(F-35のVTOL技術が応用され大幅にヘリモードの安定性及び運動性が向上しているとされる)
おしむらくはV-22に存在した後部ハッチがオミットされたことであるが、他方でホイスト降下装置は装備しており側面から乗降することで救難救助の能力は確保されている。
本機はアメリカではUH-60の後継機という形で3日前に正式採用されることが発表されたばかりだが、すでに様々な地域で実地試験が行われ、噂程度でしかないか"実戦での試験も行われた"とされる。
今のところ総じてV-22より総合評価が高く、運用コスト、導入コストの双方が低減され、それでいてかつ収容人数や積載力こそ低下したもののV-22と同等の飛行能力を持つとされる最新鋭ティルトローター機である。
正直言って12月6日の段階ですでに鋭いミリタリーオタクの中では「自衛隊が採用するのも時間の問題ではないか?」という話は論じられていた。
予算拡充に伴う新兵器の策定がなされる中、V-22をいたく気に入る自衛隊の興味を引かないわけがない性能であるからだ。
ただしそうなってくると疑念が生じないわけではない。
ある程度ミリタリーに詳しい者ならこう思う事だろう。
「ならなぜ今回U-60Jの廃止の発表は無かったのか」――と。
ここには3.11の実情が大きく絡んでいる。
平成に起きた大規模震災の中でも阪神大震災をも超える被害であった東日本大震災。
この時、UH-60Jが目覚ましい活躍をした事をまだ覚えている者はどれほどいるだろうか。
周囲が津波にのまれ、何とか施設は倒壊を免れたものの周囲は瓦礫に覆われた過酷な環境下の病院……あるいは学校。
このような被災地において自衛隊の練度の高いパイロットは通常ではものおじしてしまうような非常に狭い屋上に着陸を成功させ、短時間のうちに即座に移動しなければならない患者の輸送を行って多くの国民の命を紡いだ。
その練度の高さには世界も驚嘆し、自衛隊のヘリパイロットは世界でもトップレベルの練度を得ていると述べられる程である。
それこそ本来は着陸できないような艦上にすら燃料補給のために緊急着陸した事例すらあったが、それすらも可能だったわけだ。
問題はここからだ。
V-22の機体サイズだと、ローターやエンジン……そして特徴的なH型尾翼の問題でこの手の施設の屋上に着陸することは物理的に不可能なのである。
また小型化したV-280においては高翼配置ではあるもの主翼が干渉してしまい、着陸時に接触することは間違いないことから同じく物理的に着陸はほぼ不可能。
それどころか最近よく見る高台の道の駅に設けられた緊急用ヘリポートですら、その多くがV-22やV-280の離着陸なんて考慮した状態とはなっていない。
滋賀にある"奥永源寺渓流の里"や山梨の"道の駅こすげ"のように、CH-47すら着陸可能としているような場所ならまだしも、これらは山奥という関係上、必要に駆られて将来性も鑑みて広めに整備したに過ぎず……
多くの道の駅はヘリポートはあってもUH-1が辛うじて着陸できるかどうかであり、自衛隊の技量をもってすればより大型のUH-60でも着陸できるかどうかといった程度。
したがって緊急時に簡易基地として機能する場所もそう多くなければ、まず要救助者が集まるであろう施設においても運用が困難なV-22やV-280のためにUH-60を排除するというのは、東日本大震災級の大震災が来た時に大問題となりうるので出来なかったのであろうと推測される。
とはいえ、毎回長距離を移動してきて作業に従事するわけにはいかないため、国交省との連携によって今後はV-22すらも着陸可能なヘリポートを整備した道の駅を「防災道の駅」という形で整備していくというような話が持ち上がっており、すでにそれは実行にも移されていたりはするのだが。
さらに言えば今後は各地の病院においても大型機すら着陸可能なヘリポートは順次整備されていく予定である。
しかしこれは限定的な施設の話であり、学校や民間施設まで及ぶ話ではないのだ。
つまり、環境構築の途上にあったわけであるし、仮に環境構築が終わっても救助機としての運用についてはやや限定的であるということだ。
特に津波を想定した場合、V-22では一般的なホイスト降下による救助は十分に可能だが、せっかくの後部ハッチと最大24名を収容できる後部区画はその性能をどこまで発揮するかは未知数。(そもそも24名を収容すると垂直離陸が出来ないとされ、多くて10名だとされる)
後部ハッチが元からないV-280においては、より活動に制限がかかりうるのは言うまでもない。
よってUH-60Jを削減するかどうかについては検討の余地ありという事でU-60Jの話は持ち上がっていないわけである。
その代わりの犠牲になったのがU-125というわけだ。
恐らく政府や防衛庁の考えとしては「迅速に向かって救難機として周囲を捜索」するよりも、そのまま救助作業も同時に行えるのが理想なのだろうと思われる。
結局、熊本地震などでの教訓として「U-125が現場に向かってもUH-60Jの速度が足かせとなった」――なんて話があるように、自身の1/4の速度しか出ないUH-60Jより先行する利点というのがどこまであるか疑念が生じたわけである。
今更冷静に考えてみれば既定路線だったと言わざるを得ない。
MV-22が導入された際、将来的にはU-125が装備しているものと同等の赤外線暗視装置搭載型であるCV-22の導入も検討するという話が出ていた。
このCV-22は特殊作戦仕様であり米軍が沖縄を中心に配備しているV-22だが、最大の特徴として赤外線暗視カメラを前方下部に装備している点が挙げられる。
自衛隊のMV-22は暗視ゴーグルによる夜間飛行は可能だが、夜間飛行時において地上の救助者を捜索するための暗視装置は搭載していない。
本来この役目はU-125が担う立場であったから十分という話もあったためである。
しかしMV-22の運用を開始して考え方が変わってきたのだろう。
CV-22を増備して夜間の救難救助すら可能とする、あるいはデータリンクを活用してMV-22との連携で救助を行う……そういう事をやろうと考えていたのではないだろうか。
もしくはCV-22と共通装備を装備可能であるV-280を別途導入するかである。
すでに公開されているが、V-280は最大限装備の共通化を図ることでもってコスト低減を狙っている。
ゆえに各種装備においてはCV-22と共通化されており、共用可能なのだ。
それこそCV-22とV-280双方を導入するという方法もあるが、そのような利点はなく、今後の運用コスト等を鑑みてもより運用しやすいV-280の方が救難機としてはより向いているどころか米国では救難機としてV-280を主体的に運用することが既に決まっていることから、筆者はCV-22ではなくV-280の導入に踏み切るのではないかと考えている。
そうなると重複した能力を持つ航空機を併行して保有する理由も見いだせないわけだから、U-125の廃止が発表されたわけである。
特にCV-22を検討しているのならばMV-22より高価となるのでその動きは強まる事だろう。
表向きには「救助ヘリでもビーコン等があれば救難に迎える」とあるが、ここには説明されていない裏があると言いたいわけだ。
そもそも、万が一救難ビーコンが使えなかった場合を考えたら高性能な暗視装置を備えた機体は必要不可欠。
夜間に発生した熊本地震ではU-60Jに先行してU-125が飛び立ったように、夜間の被災状況を確認するにあたっては相応の専用装備が必要となる。
UH-60J自体にも相応の装備はなされているが、索敵範囲においてはU-125に劣るとされる。
そのU-125と同等の装備を装備可能とされるCV-22あるいはV-280を導入したいからこそ、U-125の廃止に踏み切ったのであろう。
他方で米国がUH-60を段階的に廃止していく中でUH-60を今後も引き続き運用するという意向を示した背景には、日本独特の地理的な問題が関係していたためであるというのが私の意見である。
そして繰り返しになるが、V-22はその存在を嫌う者が多く、いかに信頼性を大幅に引き上げたとはいえ見た目はV-22とそっくりはV-280ですら反対運動が起きかねない。
ゆえに本日の発表ではU-125を廃止した後にどうするかの具体例については明言されなかったものと思われる。
さて、では次に攻撃ヘリについて改めて語ろうと思う。
これに関してはもう夕方のニュースでも少し触れられていたが、ドローンの信頼性が十分に証明され、かつそのドローンの性能が極めて高く、有人攻撃ヘリの必要性が見いだせなくなったためとしか言いようがない。
まず議論を行っている主体者たるアメリカには攻撃ヘリが複数種が存在するが、代表的なものはやはりAH-64ことアパッチシリーズであり、2022年現在、自衛隊が保有するAH-64Dのアパッチ・ロングボウの後継機であるAH-64Eアパッチ・ガーディアンという機種が2010年代より採用され導入されている。
このアパッチガーディアンについてはさらなる後継機について論じられており、実はV-280が採用された裏においてシコルスキー及びボーイング社が提言して開発を行っていたライバル機たるSB-1には、派生型として攻撃ヘリ型が検討されていて、シコルスキー・ボーイング連合側は双方を同時採用することで極めて高い費用対効果を得られると主張していた。
だが米国は単機の導入ではV-22と一部構成部品を共用化しているために費用対効果に勝るとされるV-280の採用を踏み切ったわけだ。
これもう攻撃ヘリに見切りをつけ、そうであれば費用対効果が大きく劣るSB-1にNOを突きつけたとしか思えない。
なにしろ同時期に発表を行うとされていたアパッチ・ガーディアンの後継機開発に関して完全に沈黙しているのだ。
まずアパッチ・ガーディアンについてだが、本機体は実は攻撃ヘリとして主体的に活動するというよりかはドローンと連携して戦闘を行うドローン母機とも言うべき仕様となっており、ガンダムで例えるとνガンダムだったりする。
それも主体的に攻撃を行うのはファンネルことドローン側であり、機体自体の攻撃機会は極めて少ないとされる。
この時点で「それは攻撃ヘリの意味があるのか?」と言いたくなるのだが、アパッチ・ガーディアンが採用された2010年代においては、まだドローンの信頼性は完全に確保されていたとは言えなかった。
状況が変わりはじめたのは2020年。
決して列強国と言えるかどうか怪しい、それでいて侮れない某国が開発したドローンがとある紛争にて活躍し……
そして今年、再び実戦投入の機会を得たドローンはさらなる活躍をするどころか、敵国の電波妨害をものともしない大活躍をしはじめる。
それこそゲームチェンジャーとも言えるほどに。
その最大の理由は高空に存在する電子戦用の航空機や地上の大規模通信施設、そして宇宙にある衛星からの衛星通信を駆使した戦術データリンクシステムにあった。
電波妨害を行えばドローンを抑え込める。
従来までの各国の認識はこのようなものであった。
しかしそのドローンは高度6000mという、電波妨害が届きにくい高空より6000m下にいる"人間"をロックオンし、極めて命中率の高い精密誘導弾による攻撃を行うことが出来たのである。
高精度なセンサーによって人間を人間として捉えて攻撃を行う映像はインターネット上に年齢制限をかけられつつもアップロードされ……
そしてその性能の一部が情報公開されると、途端に始まったのは「アパッチ・ガーディアン」とはなんだったのかという議論であった。
1機2億円。
攻撃1発数百万円。
そのような安価で運用が可能な状態でありながら、最大速度は200km/h程度ではあるものの高い運動性によって周囲を旋回し、ホバリングに近いような状態で上空に戦闘待機することが出来、そして27時間という長時間もの間飛行継続可能。
万が一電波妨害を受けた場合は少しずつ上昇して電波妨害を受けない場所へと自動で移動するか、あるいは衛星通信を試みて戦闘継続が可能。
目標をロックオンしたら後は人間が攻撃命令を出すか、あらかじめ所定の自軍が展開しない地域であれば自動で攻撃を試みるだけ。
まるでターミネーターの世界にいるかのような最新鋭無人兵器は……誘導弾によって敵の攻撃ヘリすら撃墜してしまったのである。
いかにドローン母機として優秀と言われるアパッチ・ガーディアンといえども、ドローンを駆使して攻撃できる範囲は最大で100kmであり、実際はそれより短いものとされる。
ということは、それが分かっていればドローンの展開によって奇襲をかけることは可能。
アパッチ・ガーディアンよりもより上空にいる某国のドローンはステルス性もある程度確保しており、小型であることも相まって発見は困難。
アパッチ・ガーディアンには劣るものの、某国の戦闘ヘリはこのドローンにすら落とされる事となったのだ。
ゆえにアメリカ人も気づいたのだろう。
1機80億円以上もする新型攻撃ヘリはたった10年という短い期間で陳腐化してしまったどころか、攻撃ヘリ自体どうなのかということに。
そして自衛隊はアパッチ・ロングボウのサポートが2025年に切れ、アパッチについても今後サポートはすべて打ち切られるとの事から……攻撃ヘリを捨てたというのが真相ではないだろうか。
ヘリコプターというのは、その利便性から今後も完全に消滅することは無いと思われる。
しかし、時代は移り変わり、ティルトローターや無人機が活躍しはじめてきている現状、運用を行うべき航空機について選択を迫られているというわけだ。
最後になるが、アメリカ軍については現在様々な新兵器の開発及び導入が進んでいるものの、ここについて一部のミリタリーに詳しい本国の者達が「失敗作となりうる極めて怪しい新兵器と極めて優秀な新兵器が混在し、二極化している」と述べている事について触れておきたい。
まず、アメリカ軍において極めて優秀とされる兵器群については、概ねある傾向を示している。
それは2つからなる。
1つとはコスト低減を目的に開発されている事。
もう1つは実戦投入試験すら辞さず、積極的に各国に配布して試験に供しているという事である。
例えば新たなコンバットブーツ1つとっても驚くべき事に同盟国でもなんでもない国の兵士に向けて供与していたりするのだ。
そこで素直な評価を受けて改良を続けると言ったような事をやっているのである。
新たなコンバットブーツの最大の特徴はソールが柔らかくなり、足への負担が大幅に軽減されつつも、従来と同じく刃物などを通さないと言う、ケブラー(あるいは新鋭のアラミド繊維または超高分子量ポリエチレン繊維)を使用したソールが使用されているとの事だが、これは従来の鉄板のブーツが装備がより重くなる傾向の歩兵に不評で、健康問題にすら発展していたからである。
その試験をわざわざ他国にすら供与して行って、幅広くデータ収集していたわけだ。
他にも防刃コンバットグローブなども試験されているが、これらは新鋭のボディーアーマーであるMSVと共に使用される予定であり、先行採用されたMSVですら各国に提供されPMCなどが試験に協力していた。
他にもフルフェイス型の新型ヘルメットなども試験が行われているが、これらはアメリカ軍だけが試験しているわけではないのだ。
実際に採用された一連の装備は極めて評判が良く、その一部は僭越ながら自身の小説にすら採用させてもらっている。(形は変わっているが)
攻撃兵器1つとってもハイマース等はコスト低減のために開発されたものであり、元々アメリカ軍はハンヴィーに地対地ミサイルなどを搭載できないかとあれこれやっていたりしたが、ハイマースはそういった一連の開発ノウハウも駆使して誕生し、ご存知の通り戦況をも変える勢いで戦闘地帯に投入して活躍するのはご覧の通りである。
他方、開発に時間をかけつつも明らかに首をかしげたくなる新兵器の提言がなされているのもまた事実。
その一例がB-21である。
先日その外観が公開されたB-21だが……早くもネット上などではその機体価格から「高い」、「採用する意味がない」、「計画が中止された無人機のX-47よ無用の長物」――とまで一部で叫ばれたりしている。
まず価格だが、日本円にして800億円以上。
F-35換算で10機~11機分ほどといわれる。
これでいて運用コストはB-2より下がっているといわれるが、それでも大幅に引き下げられていないという。
このためネット上などでも「ノースロップは素直にプライドを捨てて某国と手を組んでX-47のやり直しをすべき」――というような主張が見られるが、なぜこのような主張がなされるかというと某国の新型ステルスドローンがX-47で果たせなかった艦載機としての能力を十分に持つとされるからに他ならない。
実は今年5月、既に従来のTB2は強襲揚陸艦からの離着陸試験を行い、成功を収めている。
以降も引き続き試験が行われているとされるが、すでに十分な離着陸に対する信頼性を獲得されているとすら言われている。
新型のステルス型においても本機のノウハウをそのまま用いて無人による離着陸が可能なようになっているとされ、そもそも某国は強襲揚陸艦について無人機専用の無人機母艦とする予定であり、より少ない人員で最大の効果を得られるような戦力を整えつつある。
4回中1回かしか着陸できず、結局まともに着陸できないことが事実として判明して開発中止になったとも言われるX-47とは雲泥な差であるが、こうも差が生じるのはどう考えても発想において足りない何かがあるのだろう。
そのようなものを見出さないまま、1機あたり800億……しかも製造費がどんどんのし上がって結局B-2の2分の1程度にしかならないのではないかと言われる有人ステルス爆撃機を導入する意味は果たしてあるのだろうか。
他にもトップアタック等のドローン対策が十分かどうか不明でありながら、明らかに1車輌あたりの価格がとんでもないことになりそうなM1A2エイブラムスの後継機候補として発表されたエイブラムスX等、どう見ても地に足を付けて開発していないような兵器が確認できるのである。
この二極化がどうして生じているかはわからない。
だが言える事は1つ。
戦争は算数であり経済だ。
より低い価格でより高い価格のものを容易に倒せるならば、経済力で劣っていても勝てるかもしれない。
そういう世界である。
いかに自国の経済的負担を最小限としながら、最大限の効果を戦場で得るのか。
この最も普遍的かつ大事な思想を日本も見失ってはいけない。
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