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思い出しちゃダメ!? 溺愛してくる俺様王の事がどうしても思い出せません  作者: 紅花うさぎ


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【エイデン視点】本編49

 ハックシューン


 盛大なくしゃみにカイルが心配そうな顔をする。


「寒いようでしたら、何か羽織るものでもお持ちしますか?」


 そう尋ねるカイルに大丈夫だと返事をした。


「誰かが俺の悪口でも言ってるんだろ」


 どうせ叔母のジョアンナがいつものごとく騒いでいるに違いない。


「温かいお茶をご用意します」

 

 カイルは笑いながら部屋を出て行った。


 無意識にはぁっと大きなため息をついてしまう。今頃レイナは祖父の部屋にいるだろう。一緒にいるのはレオナルドとジョアンナだ。レイナに余計な事を吹き込んでなければいいが。


 戻って来たカイルが手早くお茶の用意をしている。

 その慣れた手つきをぼんやりと眺めながら、

「なぁ、完璧なプロポーズってどうすればいいんだ?」っと尋ねた。

 

 ガチャっと食器の音を立て、カイルがこちらを向いた。


「完璧なプロポーズですか?」


「あれだろ? 女ってのはそういうのに拘るもんなんだろ?」


「まぁ、そういう方もいらっしゃるのは確かですが……」


 カイルの注いだ紅茶から湯気が立ち上る。


「まだその段階なんですか?」

 呆れたと言わんばかりの顔をしてカイルが首を振った。


「このままでは結婚式の日にちが、いつまでたっても決まりませんよ」


「それは分かってるんだが……」


「本当に分かってますか? だいたい二人きりで遠出までして、一体何されてたんです?」


 何してたのかと言われても……

 一応それなりに頑張って、レイナとの距離は縮まったはずだ。湖も花畑もレイナは喜んでいた。


「まぁ、お帰りになった時のお二人の様子からして、またケンカでもなさったのかと思ってはいたんですが……」


「ケンカはしてないぞ」

 

 ケンカはしていない。ただ……


「レイナがアダムの話ばかりするからムカついただけだ」


「それは……」


 カイルの言葉は、ドンドンという扉を叩く音にかき消された。


「もう少し優しく叩けないのかよ!!」


 この叔母はドアをノックする音すら賑やかだ。


 ジョアンナは俺の文句なんか気にすることもなく窓際のソファーにどさりと体を沈めた。


「なぁに。一人でお茶飲んでるなら、あなたも茶会に参加すればよかったのに」


 楽しかったわよと明るい表情でジョアンナが言った。


「それで? 何しに来たんだ?」


「相変わらず愛想のない子ね」

 つまらないわと言いながらジョアンナが髪をかきあげる。


 つまらなくて結構。だからなんだと言うのだ。


 俺の不愉快な様子も気にせず、ジョアンナは一人で話を続けている。


「私さぁ、しばらくこっちにいることにしたから。よろしくね」


「しばらくとは、どのくらいでしょうか?」


 カイルが口をはさんだ。


「せっかくだから、エイデン達の結婚式までって思ったんだけど、結婚式の日にちは決まってないんだって?」


 なんで? とジョアンナが聞いてくるのが、正直うっとうしい。


「陛下がレイナ様にきちんとプロポーズしてから、結婚の儀の日にちを決めたいとおっしゃられているからです」


「おい、カイル!!」

 いらない事を言うなと言っても、もう遅い。


「ぷっ」

 ジョアンナが吹き出した。


「あんた……プロポーズすらできないの? ホントにヘタレね……」


 声をあげておかしそうに笑うジョアンナに軽く殺意がわいた。


「うるせぇな」

 こっちにだって色々あるんだ。


「あー、おかしい」

 まだ笑いながら、ジョアンナは目頭をおさえた。

「あんたがそんな調子じゃ、結婚式はまだまだ先かしらね」


 腹たちまぎれに、バンっと机をたたいた。


「用がないんなら、さっさと出て行けよ」


「あら。本当のことなのに何怒ってるのよ。悔しかったらプロポーズくらいしてみせなさいよ」


 ジョアンナが立ち上がりドアに手をかけた。


「まぁ、ヘタレには一生無理かしらね」


 そう言い残し部屋から出て行ったジョアンナの笑い声が廊下から響いてくる。


「くそっ」


 拳で机をたたいた拍子に、カップがガチャガチャと音をたてた。


「カイル、俺はやるぞ」


 カップからこぼれた紅茶を拭きながらカイルがこちらを向く。


「何をですか?」


「決まってるだろ。プロポーズだよ、プロポーズ」


 もう二度とジョアンナにヘタレなんて言わせてたまるもんか。


「今年中に完璧なプロポーズをしてやろうじゃないか」


 みてろよ。俺が本気になってできないことなどあるはずがない。


「どうなることやら……」


 意気揚々と完璧なプロポーズを目論む俺の後ろで、カイルは小さくため息をついた。

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