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思い出しちゃダメ!? 溺愛してくる俺様王の事がどうしても思い出せません  作者: 紅花うさぎ


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6.お茶会の代役

「お待たせして申し訳ありませんでした」


 その男が私の前に座るとお茶が運ばれてきた。ということは、この人がエリザベスの代役ということだろうか?


 はぁ……

 誰だか分からないけど、ものすごく綺麗な人……


 光に当たって輝く金色のストレートヘアを後ろで簡単に束ねているその男性は、服装もシャツにズボンと簡素なのに、なぜか気品を感じるところがあった。


「お茶のお代わりはいかがですか?」

 

 男性が目を細めてにっこりと笑いかけるので、つい私も微笑み返してしまう。なんだか妙に場が和んでるけれど……


「あの……あなたは一体……?」

 何者なのだろう?


「ご挨拶がまだでしたね」

 男性はカップを置き、私の方を向いた。


「エリザベスの兄、ウィリアム アーガイットです。はじめまして」


 エリザベスのお兄さん!!


 あの可愛いエリザベスの兄なら、これだけ美形なのも納得だわ。


「妹が迷惑をおかけして申し訳ありません」

 再びカップを手に取りながらウィリアムは頭を下げた。


「体調がすぐれないんですもの。仕方ないですわ」


「その事ですが……おそらくエリザベスは仮病だと思います」


「仮病ですか!?」


 お茶会に誘ったのはエリザベスなのよ。仮病を使うってどういうこと? 私とお茶を飲みたくないなら、始めから声なんてかけなきゃいいのに。


 私の戸惑いを察したウィリアムがにっこりと笑った。


「おそらくですが、妹は私にあなたを誘惑させたかったのでしょう」


「えっ、誘惑!?」

 驚いて思わず持っていたカップを落としそうになった。


「はい。エリザベスは陛下をお慕いしているのですが、全く相手にされていません。ですからあなたが私を好きになれば自分にもチャンスがあると思ったのでしょう」


 ウィリアムはおかしそうに笑っているけど、私は全く笑えない。


「じゃあウィリアム様は私を誘惑しに来たんですか?」


「……だとしたら、どうしますか?」


 ウィリアムが少し体を乗りだすようにして私を見つめてくる。青く透き通った瞳は綺麗で吸い込まれてしまいそうだ。


 私の負けだわ。

 ウィリアムの瞳に見つめられることに耐えられず、目をそらしてテーブルに視線を落とした。


「困るので誘惑しないでください」


 もちろん誘惑という言葉の意味は知っている。でも実際に誘惑なんてされたことないんだもん。どんな事されるのかなんて分からない。見つめられるだけでも変な汗かいちゃったから、もう勘弁してほしい。


「あはは……」

 ウィリアムが声を出して笑った。


「大丈夫ですよ。誘惑するつもりなんて初めからありませんよ」

 

「じゃあなぜエリザベス様の代わりに来られたんですか?」


「それは……あなたに会いたかったからです」

 

 それってどういう意味……?

 優しい瞳で見つめられてドキッとする。なんかもう私、すでに誘惑されてるんじゃないの?


「エイデン陛下と私は幼い頃からの知り合いなんです。ですから陛下のお気に入りだというあなたに会ってみたかったんですよ」


 あー、なるほど。そういう意味ね。


「エイデンとはよく一緒に遊んでいたんですか?」


「いや、陛下は……」


 何かを言いかけたウィリアムが、はっとしたような顔をして言葉をとめた。だがそれも一瞬で、すぐに元の穏やかな表情に戻った。


「エリザベスは昔から陛下に夢中でしたから。こんな無茶な事をして本当に困った妹です」


 何か聞いてはいけないことだったのかしら?

 ウィリアムは私の質問には答えることなく、エリザベスやウィリアムの小さい頃の話を続けている。

 

 エイデンの小さい頃かぁ……

 考えてみたら、私は小さい頃どころか今のエイデンのことだってほとんど知らないのよね。


 ツクン……

 なぜだか胸が少し痛んだ。


「さて、私はそろそろ工房に戻らないといけませんので」


 カップに残った紅茶を飲み干し、ウィリアムは立ち上がった。


「工房ですか?」


 工房で何をしているのだろう? ウィリアムのような、見るからにお坊ちゃまが工房に出入りするのは珍しい。


「私はガラス細工の職人をしているんですよ」

  

「職人なんて、よく大臣が許してくれましたね?」


 ウィリアムは少し困った顔をして、もう一度椅子に腰掛けた。


「父から許されてはいないんですよ。私が勝手にやっているだけです」


 息子であるウィリアムが政に全く興味を示さず、大臣職を継ぐ気がないこともあって、大臣はエリザベスを王妃にしたがっているらしい。


「反対されても職人になるなんてすごいです。ガラス細工が好きなんですね」


「それはもちろん」

 力強く返事をしたウィリアムは自信に満ちていた。


「よかったら、工房を見に来ますか?」


 嬉しい。工房なんて初めてよ。


「是非行きたいです」

 私の返事にウィリアムは嬉しそうに笑った。


 



「わ〜、可愛い動物達」

「本当に可愛いですね」


 私が工房に来るのを快く思っていなかったビビアンも、可愛いらしいガラスの動物を前にして顔が緩んでいる。


「これって、ウィリアム様が作ったんですか?」


「残念ながら、まだそんなに細かいのは作れないんですよ」


「そう簡単に作られたら、困ってしまうよ」


 ウィリアムの師匠だという初老の男性は悔しそうな表情を浮かべるウィリアムを見て笑っている。


「お嬢さんも、やってみるかい?」


 もちろん。吹き竿を受け取りいざ溶解炉の前へ。やる気はあったのに、溶解炉の前に立つと熱と緊張で体が硬くなってしまった。


「大丈夫だよ」


 ウィリアムの手助けを受け、溶けたガラスに息を吹き込み形を整えていく。だいぶ歪んでしまったけれど、一応グラスができあがった。


「初めてにしては上出来だねぇ」


 師匠が目を細めて褒めてくれるのがとっても嬉しい。緊張で肩がゴリゴリだけど、妙な満足感があった。


「すっごく楽しかったです。ウィリアム様が夢中になるわけですね」


「それは良かった。作りたくなったらいつでもおいで」


 そう言ってくれるなら、お言葉に甘えて何か作らせてもらおうかな。


 あっ、そうだ、いい事を思いついた!! エイデンの誕生日プレゼントを作らせてもらっちゃおう。


 ちょっと厚かましいかなっとは思ったけれど、せっかくのチャンスなのでお願いしてみることにした。


「それはいい。是非作ってあげなさい」


 師匠は私のお願いを快く受け入れてくれ、後日改めてグラスを作りに来ることになった。


 とは言え、私は自由に外出できる身ではない。プレゼントできるレベルの物が出来上がるかどうかも分からないのでエイデンには内緒にして、とりあえずカイルに許可をとる。


「仕方ありませんね」


 カイルは私が工房へ行くことに対してはあまりいい反応ではなかったけれど、エイデンへのプレゼントのためならばと渋々納得したようだ。


「工房へ行かれるのでしたら、その分妃修行をスピードアップしますからね」


 正直なところ、今だって結構詰め込んでるからきついんだけど……でもまぁ文句言わずにやりますか。


 っと再びやる気を出したその日の夜……


「エリザベスとのお茶会はどうだったんだ?」

 一緒に夕食をとっている席でエイデンに尋ねられた。


 近頃は生誕祭の準備で忙しいらしく、エイデンの顔を見たのは久しぶりだ。忙しい合間にこうやって私と食事をしているのは、私がエリザベスに呼ばれたのが心配だったからかもしれない。


「エリザベスは大臣の娘で、まぁ色々あるが……作法などはレイナの参考になっただろう」


 そう言えばお茶会のマナーを実践するつもりで出かけて行ったんだったっけ? 予想外の事ばかりですっかり忘れちゃっていた。


「エリザベス様は体調が悪くって……代わりにウィリアム様が相手をしてくれたの」


 何気なく放った私の言葉でその場の雰囲気が一変した。


「ウィリアム?」


「えぇ、エリザベス様のお兄さんの……」


 エイデンとは幼い頃からの知り合いだと言ってたけど……


「エリザベスがいなくて、代わりにウィリアムと二人きりだったということか?」


「ビビアンもいたわよ」 


 エイデンが不機嫌な様子でビビアンを見ると、ビビアンは申し訳なさそうに下を向いた。


「エイデン、何か怒ってる?」

「別に……」


 嘘!! めちゃくちゃイライラしてるじゃない。


「もしかして、ウィリアム様と仲が悪かった?」

「いや……」


 エイデンは不機嫌顔のまま黙って食事を続けている。いきなりエイデンが怒り始めた理由が分からないので、私も黙ったまま食事をした。


 無言のまま食事を終えた私達に、カイルが食後のお茶を運んでくる。


「陛下、レイナ様はダンスがだいぶ上手になられましたよ。ご覧になられませんか?」


 えっ? 普通このタイミングでそんな話する。

 こんな重苦しい雰囲気の中でダンスって……


「そうだな……」

 エイデンは立ち上がって、私の横に立った。


「せっかくだし一緒に踊るか?」

 そう言って差し出された手に戸惑ってしまう。


「……エイデンが相手をしてくれるってこと?」


「せっかくだ。練習の成果をしっかり見てやろう」

 そう言ってエイデンはニヤリと笑った。

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