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思い出しちゃダメ!? 溺愛してくる俺様王の事がどうしても思い出せません  作者: 紅花うさぎ


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53.甘い時 

 翌朝幸せいっぱい愛いっぱいで目覚めた私を待ち受けていたのは、ジョアンナによる地獄の質問責めだった。


「ねぇ、どうだったのよ?」


 どうだったって聞かれても……


「いいじゃない女同士なんだし。ねぇ、ビビアン?」


 ジョアンナに同意を求められたビビアンは苦笑している。


「だって嬉しいじゃない? あの陰気臭いチビが、婚約者を押し倒すほど大きくなったんだもの。感想くらい聞きたいわよ」


 押し倒すって……あーん、もうやだぁ。


 私とエイデンが仲良く朝を迎えたという情報は、なぜだか朝のうちに城中に知れ渡っていた。今度こそ本当のお祝いだと、料理長は豪華なケーキを運んで来た。


 そりゃ皆から祝福されるのは嬉しいわよ。でもできれば皆には知らないふりをしてほしかった。皆に全部知られていると思うと恥ずかしくて顔から火が出ちゃう。


「良かったかどうかだけでも教えてくれない?」


「秘密です」


 まったくもう、ジョアンナってばなんて質問をするのよ。良くないわけないじゃない!! 最高の夜だったわよ。だからって「良かったです」なんて、エイデン以外には絶対言うつもりなんてないけど。


「ケチねぇ。ちょっとくらい教えてくれてもいいのに」


 料理長から届けられた大きなケーキがジョアンナの口の中に消えていく。相変わらず見ているだけで満腹になりそうな食べっぷりだ。


「でも分かってるわ。物足りなかったとは言いにくいものね」


 ん? ジョアンナってば妙に納得したみたいな顔で頷いてるけど、もしかして私が「秘密」って言ったのは不満があったからだと思ってるの?


「だってエイデンって細すぎじゃない? あんな裸相手じゃ、欲情しろったって無理な話よ」


「そうですか? 引き締まっていて素敵だと思いますけど……」


 って言っても、エイデンの裸をじっくり見たわけじゃないもんなぁ……

 

 私にキスをしながら我慢できないという感じで服を脱ぎ捨てたエイデンの裸を、じっくり観察する余裕なんてなかったもんなぁ。もう心臓が口から出てきちゃうんじゃないかと思うほどドキドキしっぱなしだったから。


「あなたもまだまだお子ちゃまね」


 ふっと鼻で笑ったジョアンナがいきなり立ち上がる。


「いい男ってのはね、腹筋がこーんな風に割れてるものなのよ」


 手でお腹に線をひく仕草をするジョアンナの言葉に熱がこもる。


「やっぱり男は腹筋よ。脂肪なんてもっての他だけど、筋肉がただ大きいだけでもダメだわ。腹筋が綺麗に左右対象に割れてなきゃ、最高の男とは言えないわ」


「そ、そういうものですか?」


 ジョアンナの唾が散るほどの熱弁に、若干ひいてしまう。


「……最高の男ですか。何だか楽しそうな話ですね」


 声の方に顔を向けると、レオナルドが笑いながら部屋に入ってくる所だった。


「あら、あんたも来たの? せっかく女同士で楽しくやってたのに……」

 

「こちらに美味しいケーキがあると聞いたので」


 助かった……

 正直ジョアンナの筋肉談義にはついていけそうもなかったのよ。


「レイナ、昨夜は熱い夜だったみたいですね」


 大きく切り分けられたケーキに目を輝かせながらレオナルドが言った。


「熱い夜って……」


 レオナルドもその話なの? これじゃ全然助けにならないじゃない。


「エイデンの腹筋は魅力的だったんですか?」


 へっ? レオナルドまで、まさかの腹筋話?

 レオナルドの訪れによって変わると思っていた話題は再び元に戻されてしまった。


「レイナにはまだシックスパックの良さが分からないみたいよ」


 ジョアンナが本日五切れ目のケーキにフォークをさしながら髪をかきあげた。


「この世の女性全てがジョアンナのような腹筋フェチってわけじゃないですからね」


 いつの間に平らげたのか? 空になったお皿をビビアンに下げさせたレオナルドがお代わりを求めた。


「うるさいわね。足首フェチは黙ってなさい」


「足首フェチ?」

 

 ってレオナルドが? 


 ジョアンナに怒鳴られ肩をすくめたレオナルドは、微笑んでいるだけで否定はしなかった。

 

 足首フェチかぁ……

 まぁそういうのもあるのか。


「レイナの足首はとても綺麗で魅力的ですよ」


「そ、それはどうも……」


 って、私ってどんな足首してたっけ? 何だか急に足首が気になってきた。魅力的って言われるのは嬉しいけど……私の足首って普通だよね。そもそもあまり人の足首に注目したことなんてないから違いが分からない。


 さすがに満足したのか、ケーキではなく紅茶のおかわりをしたジョアンナが突然「レイナは?」っと私に問いかけた。

 

「腹筋に興味がないなら、レイナは一体男のどこに魅力を感じるの?」


「いい質問ですね。私も聞きたいです」


 どこがいい質問よ。私の性癖になんて、興味もってくれなくてもいいのに。でも興味津々で身を乗り出しているこの二人から逃げられそうもない。


 うーん……私はどこに魅力を感じてるのか……


「目……ですかね」


「目!?」


 二人が同時に聞き返した。


「はい。ちょっとつり目気味でぐわっとした目が、笑うとクシャッてなるのがキュンとしちゃいます」


「……それって、こんな目のこと?」

 ジョアンナがレオナルドを指差した。


 うーん……たしかにレオナルドの涼しげな切れ長の目も素敵だけど……


「私的にはエイデンの目の方が好みです」


「そう……ってどこが違うのよ?」


「エイデンの方がぐわっ感が強いんです。レオナルド様の目は涼やかで知的ですね」


「ぜんっぜん、分からない!!」


 レオナルドの顔を穴があくほど見つめていたジョアンナが力いっぱい言った。


「後でエイデンと鏡の前で見比べなくてはいけませんね」


「でも、なかなかいいわ!!」


 ジョアンナが満足そうに笑った。


「レイナもなかなかマニアックみたいね。私そういうの大好きよ」


 これって喜ぶところなのかな? 

 横を見るとレオナルドもうんうんと頷いている。


「レイナも私達の仲間ですね」


 やっぱり嬉しくないかも……


 そう思いながら、再びケーキを食べ始めた甘党二人を苦笑いしながら見つめていた。






      ☆      ☆      ☆






「俺は今日からここで寝るから」


「えっ? それってあの、一緒のベッドでってこと?」


 当たり前だろと言ったエイデンは先にベッドに入ってしまった。


「お前も早く来いよ」


 そう言ってベッドの空いた部分をポンポンと叩くエイデンをドキドキしながら見つめた。


 来いよって言われても、どんな風に行けって言うのよ。


「どうした? 来ないのか?」


 ベッドの空いている部分にちょこんと座った私に優しく微笑むエイデンが眩しくて、なんだかまともに見ることができない。


 エイデンが私の髪の毛に優しく触れた。

 うわぁ、ダメだ。心臓が痛い!!


「エ、エイデン。ここで一緒に寝るのは無理じゃない? ベッドは一人用で小さいし……」


「小さくてもひっついて寝たら落ちる心配はないだろ」


 いやいや、エイデンと密着してたら眠れないからね。


 困ってしまった私を見て、エイデンがすっと立ち上がって寝室のドアに手をかけた。


 あれ? 怒っちゃったかしら?


 何も言わず寝室を出たエイデンの様子を伺っていると、ドアの隙間からビビアンの驚いた声が聞こえた。


「えっ? 今からですか?」

 

「ああ。カイルに言ってすぐに用意させろ」


 戸惑うビビアンと何かを命じるエイデンに不安を覚え、寝室のドアから二人に声をかけた。


「二人とも、どうかしたの?」


「何でもない。すぐ済むから待ってろ」


「でも何でもないって顔には見えないんだけど……」


 ひどく困ったような顔をしていたビビアンが言いにくそうに口を開いた。


「エイデン様がベッドを運ぶようおっしゃいまして……」


「ベッド?」


 こんな時間に何でベッドなんて運ぶ必要があるの?


「お前がベッドが小さいから一緒に寝るのは無理だと言ったからだろう? ベッドを大きくすれば俺と寝れない理由はないな?」


 えっと……ダメだ。私の負けだわ。これじゃもう一緒に寝るしかないみたいね。


「むくれんなよ」


 ベッドに入ったエイデンが私の頰を優しくつねった。


「だって……」


「仕方ないだろ。お前と離れたくないんだから……」

 

 もうエイデンってば。そんな風に言われたら、嬉しくて胸がいっぱいになっちゃうじゃない。


「私も……エイデンと離れたくないわ」


 こんなに密着してるのは心臓に悪いけど、一緒にいられるのは素直に嬉しい。


「離れたくないなら、春にサンドピークである大国会議にもついて来るか?」


「行く。行きたい。行っていいの?」


「ふっ。何でそんなに必死なんだよ」


 あ……私この顔大好き。

 普段の眼力からは想像できないほど可愛らしい、くしゃっと皺のよった笑顔に胸がキュンとしてしまう。


「何見惚れてんだ?」

 エイデンが私を引き寄せ、ちゅっと首筋にキスをした。


「あぁっ」

 甘い痺れが体をめぐる。


「いい声だな。もっと聞かせろよ」


 エイデンがふっと柔らかい笑みをこぼす。エイデンの大きな手が私の頭を支え、ゆっくりとベッドの上に体を倒される。


「エイデン、ちょっと待って」 

「待てない」


 エイデンが優しく私の頭を撫でた。


 やっぱりだめだ〜。このままじゃ絶対私の心臓もたないよ。


 多くの緊張と少しの期待でガチガチになりながら、瞳を閉じてエイデンのキスを待った。

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