第5話 害獣駆除
「報告は以上です。」
「そうか。」
任務を終えたX班は暴れていた男を連行し、ケイリス団本部に撤退していた。現在はリーダーのセンジロウがケイリス団団長のオノガに報告していた。
「ストロー都市五番街は復興作業をするとして、その者は?」
「今は身柄を拘束し、詳しい情報を聞き出しています。現在は大人しくして問答にも答えています。」
「うむ、分かった。今日はその者に部屋を1室と食事を与えておこう。空き部屋のA-1だ。尋問の内容はまた報告してくれ。」
「了解しました。では失礼します。」
センジロウは団長室から退出し、尋問室へ向かう。尋問室前にはキュエルを除くX班のメンバーが待っていた。
「問答は終わったのか?」
「はい。今は部屋でキュエルと待機中です。」
「そうか。あの者には部屋を与えるよう団長に言われたから案内しよう。」
ハリネズミの獣人である男はそのまま部屋に案内されていった。事が落ち着いてX班のメンバーが会議室に集まる。
「それで、あの者からは何を聞き出せた?」
「はい、まずあの男性の名前はハリネ ニドル。ストロー都市五番街の工場で働いていた一般人だそうです。
彼は元々ネガティブな思想をしていて精神面が不安定でしたが、ある日黒い服に緑の髪と翼が生えた龍の獣人女性に黒いガスを浴びされ、苦しみのあまり気絶。そして目を覚ますとあの姿に変身できるようになったとの事です。そして力を与えられてから暴れたい感情が溜まり今回の事件を起こした、との事です。」
「黒いガス、は“混沌ガス”のことか。あれを浴びて時間が経つと“ローエンジェル”となって凶暴性が増すという訳か。」
「昨日のマサヨシという奴は“混沌ガス”で苦しまなかったキュエルを仲間にしたそうにしていたな。」
「奴等の目的は仲間を増やし、革命と呼べる何かを起こす事ね。そしてガスに苦しまない者が理想的と。」
しばらく周りは沈黙する。
「とにかく、彼等の行動は不可解な事が多い。何が目的でも被害が出ている以上見逃す事はできない。“ローエンジェル”を止める、それがしばらく我々のする事になるだろう。」
センジロウが今後の方針を決める。
そして話し合いを終えて解散する直前、会議室の扉が開く。
「話は終わったか。私はG班のリーダー、カルマ エイジだ。
司令官の指示により明日の昼前、我々G班とX班が合同で活動する事になった。内容は岩石の森にて害獣の駆除だ。
知らせは以上だ、何か意見はあるか?」
「あまりにも突然ではないだろうか?」
「司令官から指示を聞いてすぐに知らせたからな。丁度X班のお前達も揃っているから今話すべきだと判断したわけだ。
では明日、頼むぞ。」
エイジは部屋から退室していった。
「…という訳で明日はG班と合同で任務へ向かう事になる。準備をするように、解散!」
センジロウはその場を解散させた。
そして次の日…
約束の時間にG班とX班のメンバーが集まっていた。G班リーダーのエイジが今回の任務内容を確認する。
「今回行う任務は害獣、アクジキイノシシの駆除だ。本来ならば我々だけで対処する事なのだが、奴等は最近噂の黒いガスを帯びているとの報告だった。
そこで司令官と話し、そういうモノを対処しているというX班と合同で任務をする事になった。
今回はよろしく頼む。」
「こちらこそ宜しく頼みます。」
G班リーダーのエイジとX班リーダーのセンジロウは握手する。
2つの班はトラックに乗り込み、現場の岩石の森へ向かった。
岩石の森は岩がまるで森のように高く立っている岩場である。足場は凹凸が激しく、大量の高い岩で視界も悪い。
だが、その現場は見晴らしの良い殺風景であった。
「ここってこんなに見晴らしがよかったか?」
「これが、アクジキイノシシの群れが通った跡だ。奴等は岩だろうと何でも喰らう。おまけに俊敏で追い掛けるのも困難だ。
普段は山に生息しているが、何故か山から降りてこのように荒らして周っている。」
「その山から降りた要因が“混沌ガス”の影響という事か。」
「その可能性も考えられる。理由はどうあれ奴等を我々だけで駆除するのは困難な状況でな。」
「確かに放っておけば更なる被害を生み出すか。」
G班とX班のメンバーは辺りを警戒しながら探索していると、無数の音が聞こえてくる。
「ついに来たか、アクジキイノシシが!」
地平線の奥をよく見ると土煙を上げて4足の猪の群がこちらに向かってきている。その数はおよそ50頭。そしてその全ての個体が黒いガスを放っている。
「本来はあんなに群れる生態ではないんだがな。」
「ここは、僕が前線に出ます!装着!」
キュエルが前に立ちコネクトシステムを使って鎧を装着し“オールコネクト”となる。
アクジキイノシシ50頭とG班とX班の混合チームの戦いが始まる。
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