表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
装着戦士コネクト  作者: 最部郎
3/7

第3話 製造者現

 白く重厚な壁に覆われた廊下を1人の人物、ケイリス団の団長が歩く。

 その人物はアタッシュケースを持ち、特定の部屋へ向かっていた。


 目的の部屋の前に付き、足を止める。

 その部屋の扉は金庫の様に硬く閉ざされ、インターホンの様な装置が壁に設置されていた。

 団長はそのインターホンのスイッチを押す。


「あー、シユハ殿、今いるか?オノガだ。

 新装備について報告がある。」


 団長オノガがそう言うと硬く閉ざされた扉がゆっくり開く。

 オノガは室内へ入った。


「シユハ殿、お忙しい中での応対の許可、ありがたく思う。」

「あなた程ではないですよ。

 とりあえずお掛けになって。」


 室内は広く扉に入ってすぐの場所にソファーと机が設置され、奥には就寝用のベッドがある。

 周りはよく分からない機械が作業台の上に置かれていた。

 そんな部屋にいたシユハという人物は、後髪を結んだ白髪の長髪で赤黒い瞳のツリ目をしていた。

 黒い服をほぼ全身の肌が隠れるぐらいに着込み、声は幼い少女の様だがどこか暗い質感だ。

 今はソファーに座っているが身長は176cm程ある。


 オノガはシユハの対面になる位置のソファーに腰掛け、アタッシュケースを机に置く。


「新装備についてだが、未確認の怪物に一部破損されたとの事だ。

 しかしこれが無ければ事態は気に抜けられなかったとも聞いた。

 指定された人物が使わなかった事も伝えよう。」

「なるほど、分かりました。この装備は修理するとして、後日完成品を提供する。

 ではこの話は終わりで。」


 シユハはアタッシュケースの中身を確認して受け取ると、リモコンを持って扉を開ける。


「今の報告だけで分かるのですか?」

「えぇ、まあ...。

 とりあえず今回はこれで話は終わりで。」

「そうか、では失礼したな。」


 オノガは部屋から退出し、扉が閉まる。


「さて、次の仕事は…」


 そう呟きながら廊下を歩き始めた。



「ったく、“混沌ガス”か。

 しかもそれに耐性のある奴が戦闘素人だけかよ。」


 シユハは脚を組んでソファーに腰掛け、ある映像を視聴していた。

 新装備である機器にカメラと盗聴機をこっそりと着けており、そこに映った映像を見ていた。


「ま、既に案は決まってる。

 とりあえず予定よりも強度を上げればいいだろ。」


 シユハは映像を切り、作業台へ向かう。

 1つの設計図を持ち、作業を始めた。


(今後これを俺が使うとなると、むしろあいつが使うのは都合がいいかもな。

 明日、どんな奴か会ってみるか。)


 この日、その室内は作業音だけが鳴り響いた。




 時間は少し遡り、同じ施設ケイリス団本部の病棟。


「体に異常はありません。健康です。」

「そうでしたか。ありがとうございます。」


 一度、混沌ガスを浴びて気を失う状態に陥ったX班の団員達は、一応体に異常はないか医師に診察してもらっていた。

 結果は1人を除いて全員が異常のない健康体であった。

 キュエルのみ戦闘による疲労が残っていた。


 X班はキュエルがいる病室に集まっていた。


「皆、無事だったそうだな、よかった。

 ただ今日はもう休もう。あの組織を確認した以上、明日からは忙しくなるぞ。」

「よーし、休みか。

 キュエル、ありがとな。お前のお陰かは分からんが身体は健康で済んだよ。」

「これ差し入れな。しっかり休めよー。」

「うん、ありがとう、みんな。」


 X班はキュエルに既に切ってある果物を渡し、病室から退室していった。

 最後にセンジロウが病室から出る前にキュエルと話す。


「キュエル。」

「はい、何でしょうか。」

「救護班のお前を戦わせて悪かった。

 戦闘が嫌いな性格で辛かっただろう。

 どう謝ればいいか。」

「いえいえ、リーダーが謝る事はありませんよ。

 確かに僕は戦いが嫌いですが、それ以上に皆さんを失う方が嫌ですからね。

 こちらこそ相手に何もできなくてすみません。」

「そうか、だがさっきも言ったがお前の根性はよかった。

 明日は休んでもいいが、戻った時はまた救護班としてよろしく頼む。」

「はい!」


 センジロウは病室から退室する。

 その姿を見送り、差し入れの果物を食べる。

 リンゴの様な果物だ。


(それにしてもあの人、マサヨシさんは本当に僕達の敵なのかな?

 敵なら最初から動けなかったセンジロウさん達を狙うはず。それにあの威力の矢を即座に撃てて矢をすぐに回収できるなら、別に撤退しなくても返り討ちにできていたはず。

 撤退せざるを得ない事情を抱えていたのかな。)


 キュエルは考えながらも、ベッドに横になるとすぐに眠りに着いた。



 次の日の朝、キュエルを含めたX班の団員がケイリス団本部のグラウンドに集まっていた。


「おい、もう休息はいいのか?」

「はい!僕だけずっと休んでもいられませんからね。」


 集まったX班の前にケイリス団の司令官と1人の人物が現れる。


「司令官、この方は?」

「この者はシユハ。ケイリス団と契約して様々な武装やマシンを製作している科学者だ。

 今回は彼女からお前達に話があるから召集した。」


 司令官は下がりシユハが話す。


「はじめまして、俺はシユハだ。

 今回はこいつを提供するためにお前等を呼んだ。」


 シユハは右手に持っていたアタッシュケースを前方に出す。


「昨日渡した装備の完成品、その名も“コネクトシステム”!

 使い方は試作同様に腰に機器本体を当ててベルトを展開させ固定し右側にカードを差すだけ。こいつはただのスーツと鎧ではなく装着するだけで身体能力と魔力を急上昇させる効果がある。更に今回はバランス・スピード・パワー・マジックの4種類の装甲を製作したからそれらを使い分ける事で如何なる状況も戦況にも対応できるようになったと言っても過言ではない。この機器は次元袋の材料となる次元鉱石を素材にする事で強化スーツと各種鎧と帯を収納している。鎧の装着速度は一瞬だし何なら呼吸補助機能に身体強化機能等があるから鎧を装着している方が快適に過ごせる程動きやすいぜ。」


 シユハは新装備、“コネクトシステム”について自慢気に語る。

 だが息継ぎをあまりせずに喋っているため、この場にいる誰も全てを聞き取れなかった。


「えと、つまり昨日の試作品よりも出来る事が増えたって事ですか。」

「...まあそういう事だ。

 装着者はケイリス団でもトップの実力を持つX班リーダーのセンジロウ、にして欲しかったが...」


 一瞬、シユハが嫌そうな表情をする。


「X班の救護係キュエル、お前が使え。」

「え...。」


 キュエルはアタッシュケースこと“コネクトシステム”を無理やり渡される。


「お前に使わすのは不本意だが、仕方のない事だ。」

「ちょっと待ってください!

 キュエルは戦闘員ではありません。それに彼は戦闘が苦手なんです。無理して戦わせるのは…」


 センジロウがキュエルに戦わせる事に反対する。


「これから先戦う相手は、“ローエンジェル”とかいう集まりになるだろう。そいつらとやり合うには奴等が発する“混沌ガス”ってのを対策できなければならない。

 対策できる道具を製作するつもりではあるが、情報が少な過ぎて現時点では製作不可だ。

 だから今、奴等とまともに戦える人が戦わなければならない。それは理解してるだろう?」

「もうその事を知っているのですか。」

「...あぁ、団長から聞いた。

 まあ確証はないがガスから離れれば戦闘に参加できると予測してる。

 ケイリス団の団員全員に提供している武器が銃として使えるはずだ。昨日お前等が使ってたから分かっているだろうけどな。」

「援護射撃でキュエルのサポートをしろという事か。」

「司令官の言う通り、この武器を作ったのは貴方だったのか。」

「ん、何で私達が昨日これを使ったのを知っているの?」


 団員達が腰に装備した可変式武器“サングリップ”を気にする。

 この武器は肉抜きされた長方形型の装着だが、持ち手の外側から伸びている棒を90度動かす事で、光線銃か警棒として扱える武器なのだ。

 昨日はハガネ洞窟に入った時とマサヨシを追い掛ける時に使用している。


「...んー、出撃したら大体の団員は使うだろ。

 日の光をよく当てておけよー、じゃあ俺からの話は終わり!」

「団長から聞いたにしても事情を知りすぎでは…」

「さーて、次は何を作ろうかなーっ、じゃ!」


 シユハは自分の部屋がある棟へ、逃げる様に去って行った。


「...、シユハからは以上だ。

 各自解散しいつでも出撃できるよう準備せよ。」


 司令官は一瞬困った表情をしたが、すぐに切り替えてその場は解散となった。


 キュエルはアタッシュケースを両手で強く握る。


(僕が、僕だけがマサヨシさんと、“ローエンジェル”と戦える力を持っている。もし仲間や誰かが“混沌ガス”で苦しんでも、この“コネクトシステム”を使えば昨日みたいに救えるかもしれない。)

「おーい。」

(戦わずに互いに害の無い様に済むのが一番だけど、もし戦う事になったら僕は、戦う覚悟を決められるのだろうか。)

「おーい、キュエル。」

(マサヨシさんの話なら“ローエンジェル”の団体は何人かいるはず。何回も戦う事になるのかな...。)

「俺の声、聞こえているか?」

「あっ、すみませんリーダー、何でしょうか!」


 思い詰めていたために、センジロウの呼び掛けにすぐに気付けなかった事を申し訳なく思う。


「お前が戦闘を嫌っているのは重々承知してるつもりだ。だが、今あの謎の者と戦えるのはキュエルだけかもしれない。

 他はこれまで通り無理して戦わなくてもいい。もしまたあのマサヨシの様な者が現れたら、その時は前線を頼む。なるべく手厚くサポートはしよう。」

「ありがとうございます。頑張ります!」


 キュエルはセンジロウの言葉で多少のプレッシャーは和らいだ。


 それから1時間後、


『ストロー都内五番街にて不審者情報。

 X班は現場に急行せよ!

 繰り返す。』


 サイレン音と共にX班の出撃命令が下される。

ご覧頂きありがとうございました。

分かりやすい文章を書ける方が羨ましい…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ