転移の間
(・・・さい・・・ ・・なさい・・・ おきなさい・・・)
昏い水の底から浮かび上がるようにゆっくりと意識が覚醒してくる・・・
周りを見渡すと何もない空間にあの美人なお姉さんが倒れていた。
胸のあたりが上下しているので死んでいるのではないようだ・・・
「ここは・・・」
(起きましたか、気分はどうでしょうか)
周りに話しかけて来ている者はいないのに、なぜか声だけが聞こえてきた。
その声は高いとも低いとも言えない心が落ち着くような声色で、こちらを心配するような気持ちが伺えた。
「・・・う~ん、 ・・・ここは?」
美人なお姉さんが先ほどの声で起きたようだ。
(お二人とも大丈夫そうですね)
またどこからか声が聞こえた。
「っ、はい。俺は体は特にケガもなく問題ないと思います」
キョロキョロ
「大丈夫です。・・・って私誰と話しているんだろ?あなたはだれですか?どこに居るんですか?私からは見えませんが、・・・もしかして幽霊!?」
(私はあなたたちの心に直接語り掛けています。私はあなた達とは別の世界の管理をしている者です。あなた達から見ると別の世界の神のような者です。あなたたちは私の精神世界に転移させております)
「精神世界!?ここは日本ではないのでしょうか?起きる前に猛スピードの車に轢かれそうだったけど、もしかして死んだのでしょうか?」
(いいえ、あなた達は死んではおりません。私の使役獣を身を挺してかばって頂けたので、良き魂を持つものの命が果てるのが惜しいと思い、この場所に転移させました)
転移って・・・、もしかしてファンタジーなあれかな?
あの動物が使役獣って言っていたけど、どこか別の世界から来ていたのかな?見た目も地球に居そうでいなさそうなちょっと変わった見た目(主にツノ)していたからな。
そういえばと周りを見回してみたが、あの動物はどこにも見当たらなかった。
「あの動物は大丈夫だったのでしょうか?」
「はっ、そうよね?さっきまで私が抱っこしていた白いモフモフちゃんはどこに行ったの?」
(使役獣は、今は別の場所にいます。後ほど会うと思いますので心配しないでいいですよ)
無事なら良かった、でもなんで転移させたんだろう。転移が出来るなら、車の当たらない程度の距離でも良かったのに。とりあえずなんでこんな別の世界まで転移させてみたのか聞いてみるか。
「あの~、すみません、なぜ転移でこんな別の世界まで移動させたのでしょうか?移動が出来るなら車の当たらない程度の距離の移動でも良かったのではないでしょうか。あと、もう安全でしたら元の場所まで戻していただけると助かるのですが」
(すみません、私の転移ではあなたの世界間での移動は出来ないのです。あなたの世界からこの精神世界への転移と、この精神世界から私の管理する世界への転移のみでしか出来ないのです。なのであなた達がこの世界から元の世界へは戻れないのです。すみません・・・)
「えっ、て事は俺たちは日本へは戻ることが出来ないのでしょうか?」
「!そうなの!?そうしたら私のトラック、道路におきっぱになっちゃうの?駐禁切られちゃうじゃない!あ~、また切符代払わないといけないの~?」
「いや、そもそももう戻れないから反則切符の支払いも出来ないよ・・・」
(なので、申し訳ありませんが、あなた達お二人は私の世界へと転移して頂かないといけなくなりました。我が使役獣を助けるために元の世界から決別させてしまった事を申し訳なく思いますし、別の世界への移住は大変かと思います。なので、私からはあなた達が問題なく暮らすことが出来るように力を授けたいと思います)
転移させたって、もしかして巷で流行っている異世界転移!?キターーーーーッ!!!!ついに俺も異世界デビューか!力を授けるって事は何かしらのスキルみたいなものを貰えるのかな?まてまて、移住先の世界の事も何も知らないではどうしようもない。行った先がもっと進んだ世界とかだと、スキルとかでは生きていけないかもしれないし、いろいろ聞いてみようかな。
「あの、俺がこれから行く先って、どのような世界なのでしょうか?危険などはないのでしょうか。また頂ける力とかって何か制限はあるのでしょうか。今のこの状態で移住しても問題はないのでしょうか?行ったとたんに死んでしまうような事は無いのでしょうか。」
(これから行く世界は、魔法が発達している世界になります。大気などは地球と同じですが、地球にはない魔法素、魔素と呼ばれるものがあります。魔素がある為、動物から魔物になった生物がおります。魔法が発達してしまった為、地球のように化学などが発展せず、あなた達が想像する中世ヨーロッパのような情勢です。言語などももちろん別の世界になりますのであなた達の言語とは別になりますので、それに関しては言語がわかる力を授けます。魔法に関しても基本的なところは使えるようなスキルを与えたいと思います。それ以外に、欲しいスキルがあれば遠慮なくおっしゃってください。出来る限りの事は致しますので、新しい世界を楽しめるように致しますので)
魔法が有って、魔物がいる世界。中世ヨーロッパかぁ。剣とかも必要なのかな?楽しめるように力を貰えるって事は何個でも良いのかな?
う~ん、何がいいかなぁ?魔法を使ってみたいし、生き残る為には体力UPとかも欲しいしな。時代も変わるから食事も合うかわからないし・・・
欲しいスキルを考えていると、横で美人なお姉さんがいろいろと聞いていた。
「ちょっと質問なんですが、もらえるスキルで、元の世界に戻る事が出来る力なんかを貰う事は出来ないのかしら?」
(申し訳ありません、転移のスキルはお渡しできるのですが、それはあくまでも同じ世界での転移のみとなりますので、異界への転移は出来ないのです)
「そっかぁ~、残念ですけどしょうがないですわね。ちなみに私たちをこの精神世界?へ転移しなかった場合って、どうなっていたのかしら?ケガくらいで済んだのでしたら無理に転移しなくても良かったんじゃないかな~なんて思うんだけど・・・」
(あなた達を転移しなかった場合ですが・・・転移しなかった場合、ブレーキを掛けないまま走ってきた車にそのまま轢かれ、あなた達二人と使役獣ともに即死しておりました。近い未来の予知でそのような結果と決まっておりましたのでこちらの判断で転移させて頂きました。地球での死亡=輪廻の輪へ戻る事になりますので記憶もすべて消されて別の体に生まれ変わることになっておりました)
「そ、そうだっだのね・・・じゃあ今回こっちに送ってもらえなければ人生終わっていたのね。そう考えるとこのまま新しい世界で生活できるって、結構ラッキーなのね。じゃあ残りの人生は楽しまなくちゃね!」
美人なお姉さんは結構さっぱりした性格のようだ。俺ももう戻れないのなら気持ちを切り替えて先にに向うようにしよう。
次の生活に必要そうな貰えるスキルを考えるとするか・・・
今までと変わらない生活が出来るとうれしいな、俺はトラック運転手で家にはあまり居れなかったのでよくネットで物を買って宅配BOXに入れてもらっていた。なので、出来ればネットで物が買えるようなスキルが良いな。他にも買ったものを持って歩くのが大変だから置いておく場所があるといいな。
「あの~、すみません、もらえるスキルで、地球で売っているような商品を取り寄せできるスキルってありますか?あと、定住しないと荷物が増えちゃいそうなので何か持ち運びが出来る物があるとうれしいんですけど。危険な場所に行くって思いますので、何か身を守る力とかも欲しいですね。」
(物を取り寄せるには何かしらの対価が必要なので、対価交換のスキルを授けましょう。これはこれから行く世界には無いスキルですので、気を付けて使ってくださいね。また持ち運びが出来るスキルでしたらアイテムボックスが良いですね。別の世界へ行きますので、お二人には身を守る事が出来る力も授けます)
「ありがとうございます。これなら今までと同じようにできます。」
「私のほうは、物でも魔法でもなんでも作れるような力が欲しいわ。作ったものを持ち運びできるアイテムボックス?も欲しいわね。あとは作ったものなんかに力を与える事が出来るとかあると助かるわ~。」
物を作るスキルか、そういうのもあると良いな。
(それでしたら、なんでも作れるかはわかりませんが、創造魔法なら、ある程度の物も作れるし、魔法の生成も可能です。こちらも次の世界には無いスキルになりますので十分注意してくださいね。あとは付与魔法、アイテムボックスを授けます。他に何か必要な物はないでしょうか)
他に必要な物か、俺のほうは対価が必要となっているけど、どんな物が対価になるかわからないな。あとは行った先で使えるお金や、何日か持つ程度の水と食料、あとは魔物とかと遭っても問題ない程度の武器防具かな?
行った先の地図とかも欲しいな。
「できれば、転移した先で使えるお金や数日分で構いませんので水や食料が欲しいです。後は魔物に遭っても戦えるくらいの武器と防具が欲しいですね。俺の対価交換の力って、何を対価にすればいいでしょうか。できれば対価になるような物も少し欲しいですね。あとは転移したとこがどこなのかわかるような地図とかも欲しいですね、そうでないと転移の後にどこに向えばいいかわからないのも怖いんで・・・」
「私のもらう創造魔法って、対価は必要ないのかしら?何かしら対価が必要なら最初に使える分くらいの何かが欲しいわぁ」
(わかりました。向こうの通貨と水、食料などをアイテムボックスにいれておきます。対価交換のスキルは各世界で流通しているお金や物を基準に考えそれぞれをポイントに変換して交換する力になります。なので最初は通貨を使用するのが良いでしょう。地図に関しては地理認識のスキルを授けます。これで自分のいる場所が頭の中にわかるようになります。創造魔法に関しては必要なのは魔力になりますので、あなたの魔力数値を高く致します。他に気になることはないでしょうか)
これで転移しても問題なさそうだな。転移した先がどんなところかわからないけど、あまり変な所だと怖いな。転移先もあまり危なくないところにしてもらいたいね。
「転移される場所って、どんな感じなんですかね?森とか草原とか、魔物がたくさんいる場所とかじゃあないですよね?着いてすぐに自分の力がわからないまま戦闘とかってないですよね?」
(転移先は町にほど近い人の居ない所へ転移してもらう予定です。あまり近くには強い魔物が居ない所には致しますが、弱い魔物などは居るかもしれませんので、戦闘の練習も兼ねてみてください)
「それなら良かった。では後は大丈夫そうですので、色々とありがとうございました。第2の人生と思って頑張って生きてみようと思います。」
(それではこれから転移させてもらいますので、楽しんでみてくださいね。そうそう、魔物の体内にある魔石や、皮などに価値があるものもありますのでそれを町で換金することで生活が出来ると思います。それとは別にダンジョンなどもあり、宝箱やドロップアイテムなどもありますので色々と試してみてください。では頑張ってください)
そうして俺たちのは転移されていった・・・