やきついた姿
その後、結局僕は夕方まで居た。
お腹が満たされ、懐かしい公園の雰囲気や暖かさに僕はいつの間にか寝ていたようだった。目をこすり、テーブルの向かい側に視線をやると、そこにはまだ少女の姿があった。内心驚いた。赤く灼ける夕空。公園の時計によると18時になろうとしていた。…寝すぎたな。
「すぅ…」
子どもたちは帰って再び静かな公園となっていた中、聞こえてきた息の音。少女も眠っていた。公園で寝るとは無防備なものだ。寝ている少女は幼さに拍車がかかっていて、思わずほっこりしてしまった。そんな邪念をすぐに振り払う。このまま置いておくにもいかず、少女を少し揺らし、声をかける。
「そろそろ帰ったほうがいいんじゃない?」
すると、すっと顔を上げ、空を見るなり唖然としていた。寝ていて忘れていたがこの少女は待ち人をしていた。それなのに寝ていて、こんな時間となった。それは、まあ途方に暮れるだろう。
「結局、友達から連絡は来なかったの?」
「…充電が切れてしまって、…。」
小さく、そして弱々しく、少女はそう言った。僕は、今度も、そっかと言ってテーブルの上のゴミをレジ袋に入れ、ゴミ箱へと立ち上がった。少女もウォークマンをかばんに片付け、んっーと伸びをした。
「起こしていただき、ありがとうございました」
「まあ、僕も寝てたから、…。明日、友達と会えるの?」
「同じクラスなので、…多分会えると思います」
「そっか」
少女も僕も身支度が済んだ。少女は僕とは反対の方向のようで、公園を出てすぐに別れた。僕は角を曲がる前に一瞬だけ少女の方を向いた。赤く照らされた着飾った少女は着飾られた少女になっていた。
翌日、いつものように教室の隅で何となく単語帳を眺めていた。
脳裏に映るのは昨日の少女の可憐さと帰り際の後ろ姿だった。
「友達とはちゃんと話せているのかな…」
そんな他人の心配ごとをするだけで時間は過ぎていった。
相変わらず中身のない平日を終え、また日曜日がやってきた。「相変わらずな平日」が去って「相変わらずな休日」がやってきた。相変わらず、何をするわけでもないのにいつもどおり起き、先週家に帰る前に買った新しい漫画をだらだらと読む。
読み終わる頃には太陽が高く上り、お腹も空いてきた。僕は先週の行動をなぞるかのように、一旦リビングに行き、一人で話しているテレビと憔悴した父を見て、そそくさコンビニに行った。
今日も今日とて、快晴。注がれる日光にじんわりと暑さを感じ、そろそろ衣替えかな、なんて思いをめぐらし、コンビニでチョコチップメロンパンとカフェオレを買った。
ここまで来ると、やはり公園に足が向いた。何も考えずに子供を眺めていることに少しばかりの安らぎを感じた先週を思い出しつつも、単純に家にそのまま帰るのが嫌だった。
角を曲がり、見えてくる公園。手前と奥に2つ、入り口のようなゲートがあるが、手前のゲートを通って右奥に、古くなった屋根とテーブル、ベンチがある。公園を囲うように植木がされているのでまだ見えないが。
ざっざっとサンダルのかかとを地面にあてながらゲートを通る。意識をしていたわけではない。ただ、任せるままに右を見た。
ベンチに腰掛けていた少女と目が合った。
少しずつ長くなっているような気がするのは気の所為です。
小説、難しい…。