1,魔改造
14歳の誕生日、暴走ダンプにはねられたわたしは乙女ゲーのヒロインをやらせてもらえることになりました。
【パルテミア王国物語 ~白き乙女と黒の天秤~】
略して【シロクロ】
孤児だったヒロインが光の聖女となり、学園で出会った攻略対象者と浄化の旅に出る。
そんな恋と冒険の物語。
『ありきたりなネタ、ツマンネ』
『システムがクソ、金返せ』
『スチルが酷すぎて草』
某ゲームサイトの評価はカスだったけど、一番ハマったゲームだった。
『王道上等、お前の人生がツマンネ』
『理解できない方がクソ、ゲーム代は授業料だと思え』
『ディスる暇があるなら働けニートWW』
スルーできなくて書き込んじゃったけどわたしは悪くないよね、絶対。
そんな大好きな世界に行けるなんて本当にうれしい。
夢じゃありませんように。
∮
「イッヤッフウゥゥゥウゥ!!【シロクロ】とかマジマジマジィィイィ?!しかもヒロインってご褒美じゃないスか、ありがとうございます、ありがとうございます!最高かよ!ウエエエェイィ!!」
「よ、喜んでいただけて何よりです」
豪華な神殿で狂ったように舞うわたしに、神さまが若干引いていた。でも気にしない。
「【シロクロ】本当に大好きなんです!プレイし過ぎて親指のつめの間から血が出ちゃって、タオルまいてやっちゃうくらい面白いゲームなんです!あ、あとキャラソンCD全種ほしくて、死んだじいちゃんの肩を1回100円で何千回もたたいて、じいちゃんが「もうやめてっ」って「堪忍してっ」って」
「ちょっと落ち着きましょうか」
神さまが出してくれたジュースでクールダウンした。ジュースうめえ。
ああでもわたし、本当にヒロインになっちゃうんだ。
ダンプのおじさん、はねてくれてありがとう。恨んだり呪ったりしないよ、むしろ感謝。
お父さん、お母さん、ばあちゃん、お兄ちゃん、いとこの奈央ちゃん、シバちゃん(ペットの柴犬)
私は【シロクロ】の世界で、絶対に幸せになります、応援してね。
は!大事なこと思い出した!
「チートもらえるんですよね?ほら、異世界特典のアレ」
「え?ああ、ありますよ。貴女の願いを一つだけ叶えましょう」
やったぁあ!長年の夢がかなう!
気前のいい神さまに、わたしは元気良く答えた。
「おっぱいください!」
「…………は?」
「巨乳ヒロインになりたいんです!ちっぱいはやなんです!Fカップでマシュマロみたいにふわっふわで、きれいな桜色ボッチの一生たれない美乳をください!」
「…ちょっと、そこに座りなさい」
その後、小一時間くらい説教された何故だ。
けど絶対に願い事を変えなかったわたしえらい。
「本当にいいんですね?後悔しませんね?」
「しません、わたしの意志は石より固いんです」
神さまは無言でキラキラする光を手から出した。
「ありがとうございました!がんばって逆ハーします!」
「いえいえ、むしろ他の事を頑張って下さい」
神さま、ホントいい人。よし、あっちで新しい宗教作ろう、そんで神さま祀るんだ。名前は【シロクロ教】にしよう。
少しずつ体が透明になり、同時に神さまの姿も霞んでいく。
「ああ、そうだ」
やさしい声が頭に響く。
「もう1人、そちらの世界に渡りましたから。出会ったら仲良くしてあげて下さいね」
「え」
急に目の前がまぶしくなり、世界が明るく輝いた。
気がつくとわたしはFカップを揺らしながら、王国の門の前にいた。
『ゲームをはじめますか?』
▼はい
いいえ