第四話 冒険へ
アトミア国王のニコラスから話を聞いてから2日間が過ぎ、現在カイリは行商人の荷馬車に乗せてもらっていた。
ガタガタとやられながら草原の景色を見ていると程なくして馬車は停まり、
「これから少し先へ進むと魔物が出るからワシら商人はこれ以上進めん。 近くに村があるから何かあれば出さねてくるといい」と言い、荷馬車に積んであるリンゴを1つくれた。
「いえいえ、助かりました。 ありがとうございます」
と礼を言い馬車から降りる。
暫く歩いていると草むらから人型の何かが出てきた。
「……子供?」
確かに形と大きさは人の子供だが全身が黒い。
腕が異様に長く引きずって歩いていて、顔は眼球が1つだけ、頭には動物の頭蓋骨に赤い線が書かれているものを被っている。
そいつがこちらに気付くと、腹だと思っていた部分が横に裂け、大きな口を開いて「ケケ……ケケケケ!」と不気味に声を上げこちらに向かってきた。
「っ……!こいつが魔物ってやつか……!」
魔物――
かつて神々と悪魔が戦争をしていた頃に、魔神が作り出した兵。
地上に住む生き物を餌とし、その膨大過ぎる数に神々は苦戦を強いられた。
ここ数十年で一気に魔物の数が増し、今は冒険者や賞金稼ぎによって討伐はされているがそれでも上昇傾向にある。
アトミアから旅立つ前、魔物の存在についてはカイリもある程度知っていたが、兵に色々教えてもらっていた。
魔物には階級があり、上階級になるにつれ討伐が難しくなってくるという。
・下等下級
・下等中級
・下等上級
・中等下級
・中等中級
・中等上級
・上等下級
・上等中級
・上等上級
と分けられており、この魔物を纏めている悪魔達を72柱と呼んでいる。
「ケケケケケ!!」
長い腕に握られている骨を加工したナイフを振り回しながら襲いかかる!
カイリはそれを躱すが、長い腕と小さな体のせいで間合いが詰められない。
夜隴を鞘から抜き腕を切り落とそうとするが、やはり手応えがあまり感じられなかった。
「くそっ!研いでもダメか……!」
振り上げられた腕がカイリ目掛けて振り下ろされたその瞬間、その腕が飛んだ。
魔物はそのまま空振りし、飛んできた腕が目の前に落ちた。
「――ギ、ギャァァアァ!!」
魔物には痛覚があるのか、その場でのたうち回る。
「……あれ?切れた……」
魔物がフゥーッフゥーッと荒く息をして落ちてる骨のナイフを手にとり再度襲ってくる!
カイリは前方に飛び込み魔物の顔面を水平に切り抜いた!
魔物とすれ違い、魔物が振り向くとその顔の上半分がずれ落ちた。
カイリはここで気付く。
この剣夜隴は切れ味が良過ぎるのだと。
だから切った時の感触が殆ど無いのだと。
「それにしても切られた本人すら気付かないのか……流石曰く付きだな……」
夜隴を納刀して魔物に目をやると体がグズグズに崩れ、やがて灰となり消えた。
その場所には動物の頭蓋骨と何かが落ちており、拾ってみるとそれは黒紫色に光る小さい石だった。
それをサイドバッグにしまい込み、改めて東へ進む。
それからまた暫く歩いていると切り立った岩壁に当たった。
回り道をしようにも左右どちらも結構な距離がある。
どうしようかと考えていると、洞窟がある事に気付く。
「ここを抜けられれば大分近道だな」
カイリはそう呟き、洞窟の中へ入っていった。
洞窟の中は意外と明るかった。
ここの洞窟の鉱石は自ら発光しており、足元まで照らされていたおかげでつまずく事なく歩けている。
転がっている鉱石を手に取り近くで見てみると、鉱石というよりはガラスに近い見た目だった。
観察し終わり、その鉱石を床に落とすとギィンという高音が響き、思わず耳を塞ぐ。
「凄い高音だな……もうちょっと気を付けて進もう……」
そのまま道なりに真っ直ぐ進んでいると奥から女性の悲鳴が聞こえた。
何事かと思い急いで向かうと広場に出た。
そこに居たのは男女4人と魔物。
男の1人は倒れ、明らかに重傷だ。
その隣で女がしゃがみ込んで男を抱えている。
もう1人の男は魔物と至近距離で交戦しており、もう1人の女は弓矢で男の援護をしている。
「……なんだ……こいつは」
カイリが見たものは先程戦った魔物とは大きさが違う。
今目の前にいる魔物は優に3mは超えている。
上半身は異常に筋肉が盛り上がっており、黒い肌に赤い線が引いてある。
眼球は小さな魔物同様1つだけだが、やはり頭蓋骨の兜を被っていた。
「お願いっ!助けて!!」
男を抱えた女がカイリに向かって叫ぶ。
カイリもこのまま4人を見殺しには出来ないと思った為、戦っている男に加勢する。
「あんた、誰かは知らねぇが助かる!俺はこのままじゃ持ちそうにねぇ!」
「わかった!君は一旦下がって体勢を立て直すんだ!」
そう言うとカイリは男の前に立ち夜隴を構えた。
魔物は片手に持っている大型動物の背骨らしきものを加工して作った武器を振り上げ、そのままカイリに向かって振り下ろす!
カイリは夜隴で受け止めるが思った以上に重い攻撃だった。
腕が痺れ一瞬動きが止まってしまう。
すると魔物はその隙を見逃さないかの様にカイリを蹴り上げた!
「――ぐぅっ」
身体は浮き上がり、そのまま吹っ飛ばされる!
「――ゴホッゴホッ……ぃってぇ……!どんだけ馬鹿力なんだ……」
魔物は休ませまいと追撃する為向かってきた!
夜隴は蹴られた時に離してしまい、遠くに刺さっている。
一瞬で考えろ――何か――
はっとある事に気付き、体の近くにある鉱石を手に取る。
魔物がカイリ目掛けて再度攻撃を繰り出してくる!
カイリは寸での所で躱し、魔物の後ろに回り込む!
そして持ってる鉱石を魔物の兜目掛けてぶん投げた!
ガギィィィン!!と爆音が鳴り響き魔物は「ガァァアア!!」と悲鳴を上げた。
「よし!魔物に音は有効だ!」
すかさずカイリは夜隴の元まで駆け寄る。
髪の毛を抜き、落ちている鉱石を拾う。
自身の口から出ている血を糊にして鉱石と髪の毛をくっつけた。
「なんだ今の音!?あんた大丈夫か!?」
回復薬で体勢を立て直した男がカイリに声を掛ける。
「大丈夫!!もう一度鳴らすから耳を塞いでくれ!!」そうカイリが言うと正気を取り戻した魔物が再度カイリに向かってくる!
チャンスは一度――
魔物が武器をカイリに向けて振り下ろす!
それを夜隴で受け流し、鉱石を再度兜目掛けて投げる!
そして兜に当たる瞬間、
「解除!!」
の掛け声と同時に鉱石が兜に当たる!
地が振動するほどの爆音が鳴り響き、魔物は「ギャァァアァ!!」と悲鳴を上げ膝をついた。
「そこだぁあ!!」
カイリは渾身の力で夜隴を魔物の首目掛けて振り抜く!
数秒後魔物の悲鳴が止み、ゴトンと首が地面に落ちた。
「……やったのか……?」
「うん……そうみたい。」
前線で戦っていた男と援護していた女がカイリに駆け寄る。
「おいあんた!すげぇな!」
「ありがとう!お陰で助かったわ!」
男と女がカイリに礼を言い、回復薬を渡してきた。
「ううん。大丈夫。回復薬は持ってるからあっちの人に使って」とカイリは言い、サイドバッグから回復薬を取り出し、一気に飲み干す。
「……不味い」
今思い返してみるとカイリは1度も回復薬を飲んだ事が無かった。
小屋で生活してた時に、梨と間違って食べてしまった生のアトミア芋の味がする。
「そ、そうか……ありがとう」
男は礼を言うと倒れている男の元に駆け寄り、回復薬を飲ませた。
するとみるみるうちに顔色が良くなり、スースーと息を立てて眠った。
「正直、皆もう回復薬が残っていなかったんだ。助かる……」
「あの……本当にありがとうございました。私はミーシャ・カインと申します。 今眠っている彼がライナ・カイン。私の兄です。 そして彼がリーダーのタージ・フェルマン。 弓の彼女がカリナ・ヒーストです」
「そんな。 僕もどっちにしろここを通らなければならなかったのですが、絶対1人では無理でした。 こちらこそありがとうございました。 名前はカイルス・アフラドミリアと言います。」
お互いの自己紹介が終わると、リーダーのタージがカイリに疑問を投げかける。
「そう言えばどうしてここへ1人で来たんだ? ここは中等中級の魔物がいるから生半可な腕の冒険者なら一瞬で殺される様な所だぞ」
「東にある神殿へ向かっていたのですが岩壁に当たりまして……近道だと思いここに入ったんです。」
とカイリが答えると3人が驚いた表情をして、
「嘘だろ……ここはこの辺の冒険者なら誰でも知っている事だぞ? まさかとは思うが、冒険者じゃないのか?」
「はい……ただの旅人です」
3人はさらに驚き、「冒険者じゃないのにあの強さ……一体何者……?」とカリナが呟く。
「と、とにかく!ここに長居は危険だ。 とっととここから出よう」
そうタージは促し、眠っているライナを担ぎ、一行とカイリは洞窟の出口に向かうのであった。
プロフィール紹介⑤
名前:タージ・フェルマン
性別:男
年齢:23歳
見た目:
・がっしりとした体型で短髪
・赤い鎧を身み纏っている
・常に前線に立っているからか顔に小傷跡が数ヶ所ある
魔法:硬化 制限回数系
・身に纏っている鎧のみ、硬化できる
・鍛錬する事で硬度を調節でき、最高硬度はダイヤモンドに匹敵する
・持続時間は硬度によって変わるが、大体1分程度




