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親こ  作者: 凜
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遺書




背景、あかね様





貴方に手紙を書くのはいつぶりでしょうか。


お身体の具合は如何ですか。


つい先日、私は20歳になりました。


今さらだとは思いますがあなたの知らない私の胸の内を話してみようと思います。


貴方と最後に会ったときは私が貴方の元から離れようとするときでしたね。


その時の私の腕をつかんだ貴方の手は酷く冷たいものでした。


そして、貴方の顔は苦しみに歪み涙が流れていました。


そういえばあの時もそうでした。


貴方は自殺未遂をしようとしたとき遺書の真似事をしようとしたときに私の部屋きて


私に優しく触れた時の話です。


貴方の手は酷く冷たい手をしていました。寝たふりをしていたので顔は見えませんでしたがなんとなく予想はできました。きっと苦しみに顔を歪めていた事でしょう。それでも知らないふりをしていました。


そして次の日の朝見たのは倒れたあなたと机の上に乗った遺書もどきとたくさんの睡眠薬でした。


私は正直「またか」と思ってしまいました。


最初の時はもちろん焦りと恐怖がありましたが、お医者様の話ではもっと飲まないと睡眠薬だけでは


死ねないと教えて頂いていたので流石に三回目にもなれば呆れて何も言えませんでした。


救急車には私ではなく彼氏さんが同行していったので一人家に残された私は学校に風邪だと言って


休みました。


その後何枚か重なった遺書もどきをみました。当然私にもあるものだと思い自分のを探しました。


一枚目は彼氏さん宛てで、二枚目は貴方が嫌いだと言っていた祖父と祖母宛で、三枚目が貴方の妹宛でした。私に宛てた遺書もどきは一つもありませんでした。


この時から私は貴方に愛されていないのだと思うようになりました。


そんな思いを抱えながらも私は貴方の元で耐えました。


そして、嘘を覚えました。


何をするにも嘘ばかりついていました。貴方は気づきませんでしたね。


貴方にばれた嘘は一度だけ大きい嘘をついた時です。


テストの点が悪いと追い出されると言われていたのでテストの点を変えました。


けれど、三者面談の時ばれてしまい先生の前でぶたれましたね。


確かに嘘をついた私が悪かったのは事実ですが、どうして私がそんな嘘をついたか考えはしなかったですか。そして、貴方が言った通りに私は出ていきました。貴方の大嫌いな祖父と祖母がいる家に来ました。


貴方のいう通りにしただけなのに貴方は私が貴方を捨てたのだと罵りましたね。


今でも貴方のその時の電話越しに聞こえた声が頭を離れません。


もうその時には私は最初から愛されてなどいなかったのだと確信しました。


それでも私は貴方を母だと思っていました。


今度こそ貴方から愛がもらえるのではないかと期待していたのだとおもいます。


けれど、私が大人になっても変わらず私を攻め立てる貴方を見て私はもう無理なんだと実感しました。


そして最後にもう一つ貴方が知らない事があります。


私は貴方から離れてから勉強も出来るようになり、怯えて生活する事も無くなりました。


ただ、どうやって自然体で人に接すればいいのか分からなくなっていました。


貴方に愛されようと怒られないようにと繕って生きてきたからです。


こっちに来てから繕う相手は違いましたがいい子になりました。そして、沢山の友達が出来ました。


けれど、段々周りの子と比べたりするようになり変な疎外感や喪失感、嫌悪感に襲われるようになりました。人の事を悪く言って自分を良く見せる人、男の人と遊んで自分が優れているかのように見せる人、自分よりも汚く卑しい人間はたくさんいたのに私が一番汚く卑しく思えて、いつの間にか学校に行くことも少なくなって、友達からのメッセージも無視するようになりました。そしたらたくさんいたと思っていた友達はいなくなっていました。でも、私は今までにない安堵感を覚えました。


きっと自分でも知らないうちに嘘をつくことに罪悪感を抱いていたんだと思います。


そして、皆に関わっていた私は本当の私ではないからです。


本当の私は昔の幼いままで、泣き虫で、一人が嫌いで、甘えん坊で、自分が大好きで、お姫様のような人間に焦がれているのです。


でも今の私は強くて、優しくて、男勝りで、大人で、一人が大好きな芯のしっかりとした人間です。


いい子に思われたくて、必要とされたくて、愛されたかったんです。けれど、それが今私の首を絞めています。本当の私として話をすると「貴方らしくないよ」と言われてしまうのです。


自業自得だとは思いますが悲しくて、苦しくて仕方ないのです。ですから私はこの世界とさよならしようと思います。


そして、どうしてこんな手紙を書いたのかと言いますと、これが最後だからです。


もう、貴方とは他人にも、知り合いにも、もちろん親子にも戻れないからです。


お互いに居ない存在として生きていきましょう。


私は親のいないことして消えていきます。


ですから貴方も最初から子供のいない女として生きてください。


そして、もう周りに迷惑を掛けないでください。


死にたいといっても私は止められません。


貴方が出来るのはまっとうに生きて家族に今までしてきたことを償う事です。


貴方は病気じゃないのですから。


精神病だと思い込んでいるだけです。


これは知ったかぶりではありません。私が実際に体験してみてきた真実です。


きっと貴方は誰よりも寂しがりやで、生きたいはずです。


私は貴方を愛していましたよ。これまでたくさんの人に否定されてきた私だけが知っている真実です。


最後に貴方がよく祖母に言っていた言葉を返します。



































「どうして私を生んだの?」





                                   貴方の娘だった凜より


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